相次ぐデータセンター事業の売却 ― AT&T、計31の自社センター売却へ

施設は継続して利用するようだが

通信大手のAT&Tは、データセンター31施設をBrookfield Infrastructure Partners(以下、Brookfield)に売却する計画を発表しました。Brookfieldは世界中にインフラ資産を持つデータセンター事業者です。11億ドルに及ぶ今回の売却取引で、Brookfieldはアメリカ国内のデータセンター18施設と世界中にあるデータセンター13施設を引き継ぎ、新たに完全子会社を設立して、これら施設を運営します。AT&Tは、売却後も、これら施設を使用してサービスを提供します。

債務削減

Brookfieldは、公共施設や交通、エネルギー、通信、そして持続可能資源を所有し、管理・運営しています。それには、電力送信システム、貨物列車、ガスパイプライン、携帯電話基地局、農業運営インフラなども含まれています。

その親会社であるBrookfield Asset Managementのビジネスは、不動産、再生エネルギー、未公開株式、もちろんインフラ資産からなり、その事業規模は2,850億ドルにもなります。

もし今回の売却取引が承認されれば(6~8か月以内には承認される見込み)、T・コーフィールド氏がBrookfieldのデータセンター事業本部のCEOに就任する予定です。コーフィールド氏は、現在、IaaSに特化したITコンサル会社、アンタラグループのCEOです。

両社は、共同販売契約のもと、AT&Tのサービスを販売していきますが、これには、クラウド向けAT&T NetBondやAT&T FlexWareSM、AT&Tの クラウド とデータセンター向けコンサルティングサービスが含まれています。

AT&Tは債権回収に11億ドルをあてる方針です。ここで言う債務には、DirecTVとTime Warnerの買収に伴う1,800億ドルの赤字が含まれています。MoffettNathanson調査会社のC・モフレット氏は、この負債額を「恐ろしい」としか言いようがない、とコメントしています。

「これだけの規模の負債額は前代未聞です。AT&Tが急成長中の企業であれば、眉を少しひそめる程度で済んだかも知れませんが、むしろ停滞傾向です ― 利益と収益は縮小しています。そのような状況であるにも関わらず、なぜ、マーケットがあまり心配していないのか、私には分かりません」

巨大通信企業による売り渡し

2月から噂されていた今回の売却は、いくつかの通信事業者の足跡を辿ることになります。この数十年、どんどん強力になってきたコロケーションやクラウドサービス事業者と競争しようとしてきましたが、AT&Tは、これ以上利益を生むことのないデータセンターを売却し、得た資金を新しいメディア事業に投資することにしました。

2016年にはVerizonがEquinixにデータセンターを36億ドルで売却しOath社を設立しました。Oathは、他の子会社と最近のYahooやAOLの買収を統合して、新しいメディア部門を形成しようとしています。

CenturyLinkもすぐにこの流れに乗りました。同社はデータセンター57施設を、のちのCyxteraに23億ドルで売却しました。

2015年には早くも、米国アーカンソー州の通信事業者WindstreamはTierPointに、総面積17,000平方メートルに及ぶ14施設を含むデータセンター部門をを5億7,500万ドルで売却しました。

実は、AT&Tがデータセンターを売却しようとしたのは今回が初めてのことではありません。2015年にも、Citiグループの助けを借りて売却を考えましたが、その時は結局、IBMにホスティング事業を売却することで決着しました。

AT&Tのインフラへの信頼度は徐々に下がっていきました。2016年には、AWSと複数年に及ぶ「戦略的提携」を結んだことを発表しました。ハイスピードでVPNが確保されたNetBond(のちにGoogleをはじめ、他の事業者も追従)を介して、AWSにビジネス顧客を結び付ける狙いでした。このアプリケーションはIBMクラウド上で実行するとしていました。

– Data Center Dynamics
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