GAPはいかにデジタル世代向けのサービスを構築したか

デジタルテクノロジーの影響で、従来の産業形態が変化している中、小売業ほど変化のスピードが速い産業はありません。数十年の間、同市場を支配してきたグローバルブランドは、オンラインショッピングの利便性とスピード感という脅威にさらされています。
参照:小売業の変革 – データが及ぼす影響

デジタル世代向けのサービスを整えるため、小売業者は自社のシステム運用基盤を クラウド サービスへと切り替える際に、AWS、Google、Microsoftといったクラウドマーケットリーダーのいずれかからリソースを購入することで、構築などに必要な業務をアウトソーシングできる大きな魅力があります。

50年近くに渡り、アメリカのファッション業界で活躍しているGapは、そういった一般的な取り組みとは異なる方法を選択しました。 OpenStack やCloud Foundryといった人気の高い オープンソース のツールと、社内の人が持つ専門知識を駆使しながら、独自のインフラストラクチャを自ら構築したのです。その結果、今日、GAPのクラウドプラットフォームは、消費者に対して、世界でも有数の小売サービスを提供しています。

Gap社のSME(特定分野エキスパート)でクラウド・ドメイン・アーキテクトを担当するElijah Elliott氏は、バンクーバーで開催されたOpenStack Summitにおいて、
「Gapのクラウドサービスは、様々なサービスを統合したものです。我々は独自のインフラ基盤も持っていますし、外部のデータセンターも利用していますし、アメリカの本社内にも自社データセンターがあります。私は、これらの拠点を統合してクラウドへと移行しました。
OpenStackが、Gapが利用している唯一のサービスというわけではありません。組織全体では、Microsoft Azureなど外部のクラウドプロバイダーのサービスも組み合わせて使用しており、Rackspace社との提携関係も継続しています。」と語りました。

しかし、新しいアプリケーションは、「ほぼすべて」がOpenStack上で動作するようになっているとElliott氏は言います。オープンソースプロジェクトは2010年に開始しましたが、Gapは初期段階にあたる2013年にはOpenStackを使用し始めていました。
Gapのシステムはモノリシックなプラットフォームではなく、オープンコミュニティによって開発された40以上のモジュールシステムで構成されており、例えば、「計算のためのNova」「ネットワーキングのためのニュートロン」「ストレージのためのSwift」のように詳細に定義された役割をそれぞれの機能が果たしています。
簡単に言えば、OpenStackは全ての利用者に対して、クラウドを構築するために必要な部品を提供してくれます。

簡単に構築

– Kakidai

Elliott氏によると、Gapは数時間ではなく、数分単位で新しい仮想マシンを動作できる環境を必要としていました。この要求を追求していく中で、インフラストラクチャチームは、オープンソースソフトウェアを試すこととなりました。
「仮想環境を立ち上げて、新しいコードを書いて、テストし、、、- そんな取り組み、聞いたことがないでしょうとまで言うわけではないが、間違いなくGapの取り組みは、大きな違いを生み出しました」取り組みの結果、Gapは、オープンソースプラットフォームを使ってマイクロサービスに基づいたクラウドを構築し、開発者は、(ネットショッピングや在庫管理など)近代的なアプリケーションをすぐに開発することが出来ました。

 

同時期にGapは、CI / CD(継続的統合/継続的配信)の運営を目指すオープンソースのクラウドアプリケーションプラットフォームであるCloud Foundryを活用した事業も開始しました。Cloud Foundryは、エンジニアリングやデプロイ、ソフトウェアのライフサイクル管理などに活用されるだけでなく、人気商品などの顧客ニーズを分析した価格最適化へと利用されており、1時間毎に、数千もの価格調整が行われています。
「今後も、コンテナ技術を利用しながらCloud Foundryをより活用していこうと思います」とElliott氏は述べました。

プライベートクラウドを構築する過程は非常にタフなもので、Gapのエンジニアは、外部のクラウドサービスからの要求にも応えられる信頼性を確保する必要がありました。彼らは高可用性を担保し、Gapの大セールス「Black Friday」や「Thanksgiving weekend」といった高負荷環境の中で、結果をテストしました。

自社ですべてを構築するDIYアプローチは、手頃な価格での構築や、全てを自分たちの手の届く範囲で管理できる体制を可能にしてくれましたが、「人」や「スキル」へ惜しみなく投資する必要がありました。しかしこの投資によって、私たちは十分な恩恵を受けているようです。Gapでは、小売店の売上高が2017年度に1.2%減少した一方で、オンライン販売は18.8%の売上増を達成しました。電子商取引は現在、同社の総収入のほぼ20%を占めています。

– Data Center Dynamic
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