データセンターの立地選定 -人種問題に悩まされるAmazon-

歴史的な背景が

大手クラウドサービスプロバイダーのAmazonは、北ヴァージニア州で新しいデータセンター建築を計画していますが、建設には23万ボルトもの電力供給を可能とする巨大な電線やタワーが必要であるだけでなく、この計画は多くの人々から反対を受け続けています。
ワシントンポストのレポートによると、今回の計画が反対にあう背景の一つには、歴史的な理由があるようです。北ヴァージニアの一部には、かつてアフリカから連行され解放された黒人奴隷が、私有財産の保有を(1866年に)許可されてから購入し、そしてその子孫が長年住んでいる土地があります。現在、電力供給のための電力線を建設するDominon Varginia Power社(以下、Dominon)は、まさにその一部である北ヴァージニア州Prince William County地区のCarver Road地域に電力線を通過させる計画を提出しており、これが問題となっているようです。

権力の問題?

先月末、アメリカ国家公社委員会はDominonに対し、データセンターへの電力線建設の土地収用許可を与えました。これによりDominonは、政府からのお墨付きを受け、公共目的として個人がもつ私有財産(土地)を収用し、電力線を建設することが可能となります。(建物は、Amazonの子会社VADataによって建築されます。)

電力線の建設場所についてDominionは当初、貨物鉄道線沿いか、高速道路66号沿いの地上または地下と地上を合わせた建設計画を立てていましたが、「地上での建設は、多くの一般世帯へ影響を及ぼし、地下での建設は167万ドルものコストが必要となる」と言った理由から、高速道路沿いでの建設計画は国家公社委員会によって却下しました。

そのため、委員会とDominionは、55万ドルで建設が可能な線路沿いでの計画を模索してきましたが、近隣Somerset Crossin地区の住民はこの計画に反対しました。
地元自治体が主張するには、電力線の建設によって土地価格が急落すれば、土地所有者たちはすぐさまこの55エーカーにも及ぶ線路沿いの土地所有権を地区政府へ移行すると思われます。(補足:政府によってお墨付きを受けた権利ですが、これはあくまでも「私有財産の収用権」であるため、地区政府へ土地の所有権を移管されると、Dominonはその土地の収用ができなくなってしまうジレンマが存在するようです。)
Prince William County地区は、議会において、Dominionの土地収用権を全会一致で否決しました。ワシントンポストによると、このCounty地区の働きかけは、Dominionが鉄道線沿いでの計画を見直し、最終的に高速道路沿いへの建設を選択させた一因となったと伝えています。

電力線は地下へ、負担はAmazonが

Carver Road近隣地域に住むNathan Grayson氏は、奴隷として連行されて来た先祖が解放された時に購入した土地を、今尚3代目の子孫として受け継いでいますが、線路沿いでの建設計画をあきらめたのちにDominonが選択した電力線ルートがまさに自宅の上を通過しようとしています。Natahn氏は、「問題は、私たちの真上でおきている」とワシントンポストに述べました。自宅を所有する人々は、高圧電流が学校や自宅の上を通過していくような計画は見直されるべきだと、今後主張していくと述べています。
アメリカ政府機関の一部であり、軍事施設の施行管理やダム、土木工事の計画設計などを行うアメリカ陸軍工兵司令部は、VADataの施設建設プロジェクトそのものを見直しています。(もともと建設場所はアメリカ市民戦争で激しい戦いが繰り広げられた場所にあり、さらに湿地に囲まれているためです)しかし司令部は、電力線や変電所の影響については特に考慮していません。
このような変電所や、受電所、電力線などの電力輸送ルートは、Prince William County地区の住人グループが線路沿いやCarver地区での電力線建設に反対するためのグループを結成するなど、数年に渡って反対されて来ました。彼らの主張は、「ケーブルは地上ではなく地下へ埋めるべき、そしてそのコストは、Amazonが負担すべきものである」というものです。
2015年には、Amazon CEOのベゾス氏に対して、「地下に電線を埋めない限り、この地域でのデータセンター建設計画は一切認められません」という手紙を地元議員のRichard Marshall氏とRichard Black氏が送っています。

– Data Center Dynamics
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