アリババクラウド、EMEA地域での活路を見出せるか

デジタルインフラストラクチャーの提供者たちにとって、ヨーロッパと中東地域(EMEA)は、大きな可能性が秘められた地です。

容易に予想できるように、大体私たちが思い浮かべるような会社 ― AWS(アマゾンウェブサービス)、マイクロソフト、そしてグーグル ― は、たがが外れたようにこの地域中にデータセンターを建設しています。

しかし、そのようなデジタルインフラストラクチャー企業はこの三社に限りません。
中国の クラウド サービスプロバイダーのアリババは、従来孤立していましたが、西洋のクラウド事業者に追いつこうと、現在EMEA地域に自分たちのデータセンターを配備することに多額の資金を投入しています。

果たして、中国のクラウド事業者が、EMEAで他のクラウド事業者たちと差別化を図りながら、新しい価値を提供することが果たしてできるのでしょうか。

私たち(DCD)はその答えを見つけるべく、大手コロケーション事業者EquinixでEMEA地域の上級支配人を務め、企業やクラウドサービス向けにソリューションマーケティングを行うサチン・ソニー氏にお話を伺いました。

積み上げられてきた歴史

Sachin Sony, senior manager of solution marketing for enterprise and cloud services at Equinix EMEA
– LinkedIn

コロケーション 事業を展開するEquinix社は、 IX – 相互接続性に重点を置き、一般企業とクラウド事業者の双方に、ITインフラストラクチャーを貸与しています。
ソニー氏は、Equinixがアリババクラウドと共働したときのことを私たちに語り、その体験から、頓挫の可能性に抗して、新たな市場で地位を得る可能性が十分にあるという目算を口にしました。

「ヨーロッパは岐路に立っています。
西欧市場のけん引力を見る限りでは、クラウドサービスは中央ヨーロッパや東部ヨーロッパ地域においても需要が高まっています。
そしてそのことは、企業がクラウドサービスを使用する際のリスクの多様化をだんだんと察知し始めているため、一つのクラウドサービスに限定せず、あらゆるクラウドサービスを選択する機会を、クラウド事業者へ与えています。」

とソニー氏は指摘しました。また、彼は同様に、

「たいてい、我々は様々なサービスプロバイダーを活用して仕事負荷を軽減しようと、7~8つくらいのさまざまなクラウド事業者と提携している企業を見かけます。なぜなら、ある事業者のサービスは価格の面で優れていて、またあるサービスは処理能力の面で優れている、ということがしばしばあるからです。
複数のクラウドを使用するという取り組みが相乗効果をもたらすのです。」
と説明しました。

価格、スペック、レイテンシ…クラウドサービスの選定基準は?

さて、アリババはどうでしょうか。中国のクラウド事業者であるアリババは、競合会社よりも低価格でより多様なサービスの組み合わせを提供しているため、アリババにとって「価格は問題ではない」とソニー氏は言います。

「サービス全体の組み合わせを見た際、クラウドコンピューティングだけではなく容量やデータの復元力やいくつかの他の性能を鑑みると、全体として、アリババはAWSよりも約15~20%安価であるということが分かります。」
「けれども、私は今日の企業のクラウドの採用基準は価格ではないと思います。むしろ採用基準は、安全性や調整力、API、機能パッケージ、コミュニティサポートといったようなものであると思います。」

実際、中国では有力なサービスではあるものの、他の地域においてはまだ影響力を発揮しきれていないいくつかの課題がアリババにはあるようです。
現在、EMEA地域と北米地域においては、北アメリカの会社が市場の大部分を占拠しています。
ユーザーは、一番よく知っているものにひかれるということがあるのが理由の一つでしょう。けれども、より長い間私たちの身近にあり認知されているということもありますが、AWS、マイクロソフト、そしてグーグルがすでにアリババよりも広大なデータセンター拠点を有しているということも、その理由にあげられます。

「中東、ヨーロッパ、北アメリカなどの地域へ進出をもくろむアジア太平洋地域の会社は、他の地域に進出する際に、クラウド事業者の見直しなどをすることはあまりありません。
彼らの多くが、現在アリババクラウドを使っており、中国の会社であればなおさらのことです。

けれども、一方でアメリカの売り上げ規模上位500社や、世界の有力企業2000社といった、アメリカを拠点とする会社に目を向けてみると、そういった会社は北アメリカから他の市場へと進出する際に、データセンターの接続性や リージョン などを考慮しながら、より使い勝手のよいクラウド事業者を選び、提携しようとしています。」

世界中のどこでも、ユーザーがクラウドサービスの能力に求める要件を提供できることは、非常に重要です。そして、この点においてアメリカの大手企業は、優位な立場にあります。
アメリカの大手企業には、顧客のデータを局所的に処理できるだけの、十分なインフラストラクチャー=データセンターがあるのです。

APIの充実、信頼性の担保

ソニー氏の意見では、アリババクラウドの機能パッケージは、AWSのそれと同じくらいしっかりしているけれども、アマゾンのクラウドプラットフォームは中国の競合会社であるアリババよりも、幅広いAPIのセットを提供しており、「幅広いAPIのセットを有しているかどうかということは、多くの企業にとって今後の重要な指標となります。」と語りました。

信頼性もまた、重要な差別化要因となります。
最近では、アリババと密接な関係を持つHUAWEI社が汚職などの疑惑の目を向けられるなど、中国社会への信頼感が低下する今日の風潮下では、アリババのヨーロッパと北アメリカへの進出というのは最も困難なことであり、断念せざるを得ないようにも思えます。

「私の意見ですが、企業は中国の販売会社と比べると、アメリカを拠点とした販売会社により大きな信頼を置いていると思います。
特にミッションクリティカルなデータすべてをクラウドに移動することになったときに、信頼性の問題が顕在化する可能性があります。」

もし事がより大きくなったら、アリババがいくつかの市場でのHUAWEI社のハードウェアの使用を再検討する可能性もあるとソニー氏は断言しました。
「もしHUAWEI社の事件がアリババにとってビジネス参入の障壁となるのであれば、アリババは大手企業と同じ路線をたどるしかないと思います。」

アリババにとっての解決法は、地元の民間企業との提携をすることであると言います。
ソニー氏は、例えばヨーロッパでクラウドサービスを提供するためにBT社とパートナーシップに向けて話し合いをしたといわれているHUAWEI社のように、中国のクラウドの提供会社であるアリババも同じような道を模索していると考えています。

「そうすれば、アリババはBTに信頼を置いているヨーロッパの顧客の心をつかむことも可能でしょう」
「メガクラウド企業同士での争いはし烈になっていますが、いずれにしても、Equinixは彼らメガクラウド同士の戦いに加担するつもりはありません。信頼性の高いセキュリティ環境と、プライベート接続サービスを充実させて顧客をサポートしていきます。」
とソニー氏は語りました。

– Data Center Dynamics
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