GPUメーカー「Nvidia」の野望 – これまで歩み、そして

Nvidiaは、いつかAIが人間の「カオス」さえを理解する世界を夢見ている

いつか AI 革命の最前線に立つ。15年前、Nvidiaはそう決心をしました。そして今日、Nvidiaのチップは、開発者とクラウド企業の両者から高い評価を受けています。

Nvidiaは、当初はビデオゲームなどのグラフィックス処理装置として利用されていた GPU の本質を変えることを決心しました。
CEOで共同設立者のJ.フアン氏は「始めはグラフィックスアクセラレータであったGPUが、より汎用的になることに決めました」と、サンホセで開催されたNvidiaのGPU技術会議で語りました。

「バーチャルリアリティの開発を推し進めるためには、現実世界をシミュレートする必要があると感じたからです。例えば、光や物理的な事象を分析するには、粒子物理学や流体力学、レイトレーシング等多くのアルゴリズムを用いたシミュレーションがあり、物理シミュレーションには汎用性の高いスパコンアーキテクチャが必要なのです」

光を見て

NVIDIAのデータセンター部門長I.バック氏は、「 GPGPU (汎用グラフィックスプロセッシングユニット)は、大学などの研究機関が、GPUを活用した研究を取り入れてきた結果、開発されてきたものだと考えています。
当時の私たちには、たとえそれが問題を引き起こす可能性があったとしても、GPUは今後ますますプログラマブルなものへ変化していくと気がづいていました。ゲームの世界では、グラフィック処理は基本的に大規模な光のシミュレーションしています。課題解決にコンピューティング能力を用いる、ハイパフォーマンスコンピューティング( HPC )のような大きな市場と同様に、です。」とDCDに語りました。

フアン氏は付け加えました。「その結果として、GPUは、どこでも入手可能な一般的なコンピュータアーキテクチャとなったのです。今までは、タイミング良く入手することはできませんでした。例えば、新しいアプリケーションがすべて登場し始めた時、AIがソフトウェアを開発していてスパコンを必要としている場所、スーパーコンピューティングが今や科学の基本的な柱になっている場所、Nvidiaを採用してくれてAIや自律的マシンの開発方法について検討を始めた場所でタイミング良く入手できたでしょうか?」

「とにもかくにも、パーフェクトなタイミングだったのです」

アナリストや競合他社には、Nvidia自身が急激な需要の上昇を見越していたのか、あるいは、加速器に最適なディープラーニング等のワークロードを採用するように世界がシフトしたまさにその時、適切な製品を適切なタイミングで提供しただけに過ぎないのか、疑問視する見方があります。しかし、偶然にしろ先見の明があったにしろ、Nvidiaはデータセンター、ワークステーション、そしてビデオゲーム市場にその需要を見出したのです。

バック氏は、「1つのアーキテクチャを構築し、1つのGPUを構築し、全市場の85%で活用できますが、Nvidiaはまだ1社で運営できています」と語りました。「私自身も新しいことを学んだらアーキテクトチームとそれを共有しますし、ゲーミングチームは新しいものを常に学んでいたりします。そういったもの全てを1つのGPUアーキテクチャの1つの製品に組み込み、全ての市場の問題を解決するのです」

NvidiaのコアGPUアーキテクチャがこれら無数の分野で成功を収めている中、Nvidiaは次の大きなステップに向けて準備万端です。今よりシミュレーション分野に深く関わり、そこから見つけたものから構築される世界を生み出すのです。

データセンターの中心

シミュレーションの可能性を説明するためにNvidiaが取り組んでいるイニシアチブの1つにプロジェクトクララがあります。世界中の病院に設置されている300〜500万台の医療器具を溯ってスマートシステムに変換する試みです。

「病院に居座っている​​この15年ものの超音波装置を使って、超音波情報をデータセンターに送信します。するとデータセンターは、GPUサーバーの上でこのスタックを実行し、奇跡を生み出すのです」心臓の左心室をセグメント化して2D白黒スキャンを使ってAIネットワークのデモンストレーションをしながらフアン氏はこのように述べました。それも、動画で、3Dのカラー画面で。

NvidiaはClaraをプラットフォームとして宣伝していますが、成功を収めるために病院やセンサー業者を含む数多くのパートナーを頼りにしています。ソフトウェアに関しては、自社のハードウェアが重要な鍵となるエコシステムの構築を検討しながら、他にもチャンスを求めています。

時には、ソフトウェアを後回しにするのも悪くないと思っていますが、Nvidiaが業界の先頭に立ちたいを強く望む分野があるのは明らかです。それは自動走行車です。「今はこれに専念しています。自動走行車は究極のHPC課題、究極のディープラーニング課題、そして究極のAI課題なのです。我々はこれを解決できると思っています」とフアン氏は述べました。

Nvidiaは自律走行車(3月に起こったUber社の致命的な事故の後、計画は一時的に座礁していますが)を運営しており、各車両が生成する毎週ペタバイトのデータは、訓練を受けた分類作業者1,000人以上によって分類されています。

しかし、自動運転車では、人間が1年で運転する距離のほんのわずかしかカバーすることはできません。「シミュレーションは唯一の道です」と、Nvidiaの自動走行車事業開発マネージャーC.ガルシアーシエラ氏はDCDに語りました。

デジタルの現実世界

このアプローチはDrive Constellationという名付けられました。1つのサーバーで世界をシミュレートし、それを自動運転車をホストする別のサーバーに出力するシステムです。

自律運転シミュレーションシステム企業のTASSインターナショナル社のプロダクトディレクターであるM.タイドマン氏は、DCDに次のように語りました。「車両をモデル化してデジタルで双子を作る必要があります。しかしそれだけでは十分ではありません。世界のデジタルツインが必要です」

「これはNvidiaの技術がまさに輝く分野です」とジェンセン氏は言います。「バーチャルリアリティの世界を構築する方法はわかっています。将来、数千もの別々のシナリオが同時に実行される数千もの仮想現実世界が存在するようになるしょう。同時に、NvidiaのAI車はその仮想現実世界を走行し、自分自身をテストします。シナリオが失敗した時には、我々はその世界に入って、何が起こっているのか解明することが可能です」

自走車に続いて、ロボット産業にも同様のアプローチが計画されています。Nvidiaの自律マシン事業部のVP、D.タラ氏はDCDにこう述べています。「論理的に考えても、Drive Constellationはロボットにもを実施するのが理にかなっていると思います」

まだ初期段階ですが、この分野におけるNvidiaの取り組みは「The Isaac Lab」として知られています。「ロボットや自律型マシンが複雑な場所を走行するために必要な認知や知覚、ローカリゼーション、マッピング、および計画能力」を開発することが目的、とフアン氏は付け加えました。

Nvidiaは物理的システムを仮想世界で訓練できるようにする「Perception Infrastructure」を構築していますが、科学の発展ために、シミュレーションの境界を拡げようとしている人々がいます。

「すべてのクラウド層をシミュレートするために、世界の気候を高精度でシミュレートするという明確な目標があります。地球が2kmでグリッド化されて3Dで表示される様子をイメージしてみてください。これは彼らが超大規模エクサスケールのために求めているものの1つです」と、バック氏はDCDに語りました。

フアン氏は次のように述べています。「我々はエクサスケールコンピュータを開発中ですが、このシミュレーション時間はすべて1ヶ月から1日に短縮されました。しかし、それと同時に、シミュレーションモデルの複雑さを100倍に増えてもいます。それでシミュレーション時間は3ヶ月に戻ります。それでも、10  エクサフロップ コンピュータを構築する方法を見つけ出します。そして、科学の幅は再び拡がるでしょう」

より強力なハードウェア上で、これまで以上に複雑なシミュレーションが行われている、この一連の思考パターンが、この「シミュレーション仮説」を提唱しているのです。つまり、映画マトリックスにも似たシミュレーションのような人工シミュレーション世界に我々は生きていると言うことです。恐らくはデータセンター内、に。

フアン氏にこの仮説に対する彼の見解について尋ねました。「どうやって我々は本当に知っているのか?いう意味では、この論理は愚かではありません。同じように、私たちが本当は機械だ、または単なる分子生物学の機械だと言っても馬鹿げてはいませんよね?」

「自分が実際にシミュレーションではないとどのように知ることができますか? あるレベルではそれを証明することはできません。だから、それ以上深く考えません。でも私は、これこそが深い点だと思うのです:誰がそんな戯言を言うのか?」

– Data Center Dynamics
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