5G、エッジとサービス革命【特集】

2019年、主要メディアでは 5G というキーワードがモバイル通信とデータ処理の未来を担う技術として更に注目を浴び、取り上げられてきました。 しかし、インフラ業界の巨大企業は、5Gが実現する大きな可能性と共に生じる課題に対し、かなり長い間熱心に取り組んできました。

5Gを4G/LTEからの増分の進歩と考えたくなりますが、5Gは指数関数的により優れていると言えます。5Gは最大で20Gbpsの通信速度に達し、1平方キロメートルあたり最大100万台の IoT デバイスをサポートしつつも、僅か1ミリ秒のレイテンシ(=遅延)でのサービスが提供されます。 5Gは、最終的にはIoTの真のプラットフォームとなります。

IoTデバイスの登場以来、ネットワーク上の制限事項もあり、実際のユースケースに対してはいくつかの制限が設定されました。HPCアプリケーションなどの分野では、データ処理要件に制限が設けられています。

Bring on the Edge

例えばライドシェアリング(※ 乗用車の相乗り)アプリでは、1分間に何度もデータセンター内のAI予測アルゴリズムにアクセスします。これはクラウド内でのデータ処理に依存する他のアプリでも同じことが言えます。これはデータの取得元に関わらず当てはまります。データ処理がクラウド側に集中している以上は、最終的にはネットワーク上の制約により完全にシームレスかつ瞬時のエンドユーザエクスペリエンスは得られません。

デジタルインフラ業界は、エッジコンピューティングという形でこの課題に対するソリューションを提示しています。これは、中央集中型のコアからパーツを取り出し、データソースまたはエッジの近くでそれを利用できるようにすることで、分散システムをより効率化する方法です。

簡単に言えば、ストレージ、データサービス、およびコンピューティング処理が、それぞれのサービスや機能に基づき適宜再配布されることを意味します。レイテンシを抑えることでメリットが得られるものはエッジに近づき、残りはコア側に残ります。

– Shutterstock

エッジコンピューティングは、重要なリソースをエンドユーザの近くに配置することでデータ処理の待ち時間を短くし、代替のデータ送信ルートを確保することで レジリエンス (=復元)力を高めます。ただし、システムは断片化され、物理的・論理的セキュリティの観点からリスクをもたらす可能性があります。また、追加のハードウェアに依存しなければならず、多額の先行投資が必要となります。しかし実際問題として、現時点のエッジコンピューティングの能力では、今後数十年に渡る革新的なユースケースをサポートすることは到底できません。

そのすべては、ネットワークの レイテンシ (遅延)と可用性に帰着します。

5Gは、ネットワークエッジの能力を効果的に高め、既存の制約を取り除くのに大きな役割を果たします。エッジでのデータストレージと処理能力に対する需要は劇的に増していくでしょう。

もし5Gが1ミリ秒の遅延と100万台のデバイスをサポートするという約束を果たした暁には、ベストプラクティスから設計標準に至るまで、多くの業界再編が起きるでしょう。

大きな仮定

例えば、分散システムアーキテクチャの大半は、帯域幅と遅延の要因もあり、設計の選択肢は制限されています。 5Gがこれらの障壁を取り除くと、現在僅か30個のセンサーしかリアルタイム監視出来ていないシステムが1,000個を管理できるようになる可能性があります。

同じことがモバイルアプリにも当てはまります。毎分のクラウドエンドポイントへのクエリが、毎秒ではないのはなぜでしょうか?これら設計の選択肢が進化するにつれ、そのシステムをサポートするデジタルインフラに大きな影響を与え、各企業はHPCテクノロジーや設計戦略を検討する必要に迫られます。基本的に、5Gは何よりも高性能コンピューティング( HPC )に大きく依存します。

現在のモバイルネットワークは、自動運転車、ドローン、天気予報などの技術に対してある程度のサービスを提供できていますが、これらのアプリケーションは5Gにより完全にロック解除されます。

5Gネットワ​​ークに驚異的な通信速度や帯域幅を実現するのは、そのテクノロジーです。それは30GHzから300GHzの間の周波数(4Gは1GHz〜5GHzの間で動作)のミリ波と呼ばれるもので動作します。これらは短波長よりも範囲が狭いため、以前は1つの4G基地局でカバーされていたエリアを、建物や街灯に設置される多数の小型で安価な5Gアンテナでカバーする必要があります。

電話会社のエッジデータセンターでこの変化を最初に目にしますが、その維持は難しいでしょう。自動運転車の分野を考えるだけでも、その数は日々増加し、テレメトリデータ(=遠隔計測データ)は複数の5G基地局アンテナにより継続的に収集されます。これをリアルタイムに分析し、あらゆる車を車線と路上に維持する為には、ストレージとAI予測サービスによる高性能コンピューティング処理が必要になります。

-Shutterstock

これにより、HPC機器を効率的かつ持続可能性を維持しつつ展開していく為の考慮事項が生まれます。 4Gでは、デバイスは1対1で接続します。携帯電話は通信基地局に接続し、基地局は別の基地局などに接続します。 一方5Gでは、デバイスを複数の基地局アンテナに接続できます。これにより、100%信頼できる理想的なシナリオの可能性が生まれます。ただし、トラフィックが1秒あたり数百万の書き込みと指数関数的に拡大するため、事業者は、分散ファイルシステム、インメモリデータグリッドなどのHPCテクノロジーを採用し、適切な設計手法を実装する必要があります。

5Gの可能性や要件は、データセンターの構築・運用手法の再構築を促し、また既存のサービスプロバイダでは、サービスを維持するためのインフラ設備のオーバーホールが必要となってきます。 5Gをサポートするバックエンドサービスは、従来の4G機器よりもはるかにスケーラブルである必要がありますが、これらのサービスは、既存のクラウドネイティブツールやテクノロジーから生まれる可能性が高いでしょう。

さらに、ストレージとコンピューティングの能力は、可能な限りエンドユーザ側に近いエッジにシフトします。前述のように、これらはHPCの方法論により設計、そして展開する必要があります。

データ量が大幅に増加すると、データの分析と管理を行う必要性も増します。これは、オブジェクトストア、分散データベース、ファイルシステムなどのHPCテクノロジーを通じて再び起こります。事業者がより大容量のデータを展開、管理し、およびスケーラビリティを維持するためには、これらのツールやテクノロジーが必要です。またデータが安全なコアクラウドデータセンターからネットワークエッジに移ると、新たなセキュリティ問題が発生します。システムが断片化されるほど、セキュリティの維持は困難になります。このようなニーズは、交通制御システム、自動運転車、ドローンなど5Gサービスを活用するクリティカルなアプリケーションによって更に強調されます。

5Gの登場により、データセンター業界全体で多様化の取り組みが推進され、状況は変化していきます。 Vapor IOやEdgeConneXなどの企業は、エッジ・モジュラー型データセンターの新たなエコシステムの構築を試みており、5Gによるこの分野の驚異的な成長を予測しています。一方、既にデータセンター業界でのポジションを確立している企業は、今後の需要に対応するために、既存のデータセンター、コロケーション施設に追加の投資を行いつつも、マイクロデータセンターの展開に焦点を移していく必要があります。

– DCD/Dot McHugh

これは、事業の拡大を妨げるものではなく、モバイルテクノロジーと通信の可能性を完全に解放するための必要なステップと見なされるべきです。

最終的に5Gは、グローバル経済全体に渡り根本的な変化を推進する力を持つテクノロジーである「汎用技術(GPT)」というものに進化していくでしょう。GPTの過去の具体例としては、印刷機、自動車、蒸気エンジンなどがあります。

データセンター事業者が5Gのニーズと課題を把握し、ニーズに応じてインフラ施設を調整する事で、5Gのエンドユーザ数の急増に繋がり、最新かつ最も影響力のあるGPTとなります。

近い将来、インターネットに接続されるIoTデバイスの数は数十億台に達すると予想されており、これらのすべてのデバイスが以前より迅速かつ確実にデータを相互接続し交換できるようになる為に5Gが必要となります。

ただし、データセンター事業者は、短期のROIに関しては出資者の期待に応えつつも、初期段階で巨額の投資を行う必要があります。これらの方法論を展開していくには、厳密かつ慎重な計画と実装が求められます。

産業全体としてはまだ確立されておらず、5Gが目指すネットワークやサービス革命を起こすためには、まだ多くのニーズを実現していく必要がありますが、少なくとも現時点では正しい方向に推移しているようです。

2020年、未来はもうすぐです!

Data Center Dynamics

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