データセンター/ サーバ室技術ガイドブック【特集】②
【第2部:コンテンツの一例 冷却編その1】
今回はコンテンツの一部ダイジェストとして、冷却編その1を掲載します。第1部はこちらからご覧ください。
都市伝説「サーバは冷やす」
サーバは冷やさないといけないという認識をお持ちの人も多いと思います。しかし、実際には冷蔵庫のように「冷やす」のではなく、ICT機器で発生した発熱を空気(風量)により「熱を抜く」といった処理が正しい理解です。それを「冷却」と言います。
ICT機器発熱に対する風量の計算式は以下のようになります。
F = Q/(Cp× ρ×ΔT×1/(60×60))
F :風量[㎥/h]
Q :発熱量[W]
Cp:比熱[J/(kg·K)]
ρ :密度[kg/㎥]
⊿T:温度差[℃](「サーバの排気温度」-「サーバの吸気温度」)
※ 例えば吸排気温度差(ΔT : 「デルタT、デルタティー」と読みます)が10℃の場合、ICT機器の消費電⼒1kWの発熱に対し、1時間当たり約300㎥の風量を吸気することで適切な冷却が⾏える計算となります。
必要風量(㎥/s)=1,000(W)/(1.205(kg/㎥)x1,006(J/kg・K)x10(℃)))=0.0825(㎥/s)≒300(㎥/h)
・密度ρ︓1.205 kg/㎥(20℃時)
・⽐熱Cp︓1,006 J/kg・K(1J=1W・s)
・ΔT︓(「サーバの排気温度」-「サーバの吸い込み温度」)※ 通常、サーバのΔTは10〜15℃程度
空冷方式の適用範囲
アイル分離の考えを押し進めた アイルコンテインメント 方式は、単にラック列(アイル)を分けるだけではなく、それを物理的な壁などで区画分離することで、無駄な空気の漏れを防ぎ、冷却効率をより高めます。アイルコンテインメント方式には、ホットアイル側を封じ込める「 ホットアイルコンテインメント 」、コールドアイル側を封じ込める「 コールドアイルコンテインメント 」があります。
アイルコンテインメント方式による冷却は一般的にラック当たりおおよそ15kWが限界といわれており、それ以上の高密度実装環境になると、より冷却する範囲を狭める局所空調方式が必要になってきます。
局所空調方式にも様々なアプローチがあり、それぞれ冷却能力は異なります。ラック架列に空調装置を配置する架列配置局所空調方式( In-Row冷却 )、ラック上部にファンを設置する方式、あるいはラック背面ドア自体を空調装置とする リアドア冷却 方式など様々です。これらはラック当たり10kW以上の高電力密度環境に適用されます。
サーバラックの基本仕様
サーバラックは、サーバ等のICT機器を適切に稼働させるために機能面や運用面を考慮して選択し設置する必要があります。以下にそのサーバラックの基本仕様の一例をあげます。
- 前面、背面扉の適正な開口率の確保
- ICT機器などの吸排気を考慮し、前面、背面扉のパンチング開口率は、単位面積当り70%以上を推奨
- 奥行き寸法の選択
- 電源・配線の煩雑化を防止するためにコンセントバーおよび配線スペースも考慮した奥行寸法のサーバラックを選択
- 安全確保
- 地震発生時における人の安全確保が重要であることから、フロアへの固定ができ、耐震性能が明確にされた ラック を使用する。耐震評価基準としては、兵庫県南部地震波、 NEBS規格にて評価されている。
- 情報セキュリティ対策
- 必要レベルに応じ、ラック扉に施錠
- キー付ハンドル
- ダイヤル錠ハンドル
- 電気錠による管理
- 必要レベルに応じ、ラック扉に施錠
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