
AWSがEuropean Sovereign Cloudを別会社として設立
Amazon Web Services(AWS)は、欧州の顧客からの強い需要を受け、「AWS European Sovereign Cloud」の新会社を設立しました。
同社が6月3日に明らかにしたところによると、AWS European Sovereign Cloudは今後、EU主導の新しい親会社が率いる独立した欧州ガバナンス構造と、独自の専用セキュリティオペレーションセンターを持つことになります。
この動きは、競合するマイクロソフトとGoogleが、貿易摩擦や米国のハイテク企業への依存に対するEUの懸念を踏まえて、顧客を安心させるために行った同様の取り組みに続くものです。
AWSによると、新会社は「強力な技術管理、主権保証、法的保護に裏打ちされた、完全な機能を備え、独立して運営される唯一の主権クラウド」となり、欧州の政府や企業のニーズを満たすために、同社のサービスと運営上の自律性を組み合わせるとのことです。
Kathrin Renzは、2023年末までに立ち上げられる、AWS European Sovereign Cloudの新会社のマネージングディレクターを務めます。
親会社とその子会社3社は、ドイツで設立され、事業を率いるのはすべてEUに居住するEU市民となります。
さらにAWSは、AWS European Sovereign Cloudの最善の利益のために行動する法的義務を負う独立した諮問委員会を設立します。この委員会のメンバーは4名で、やはり全員がEU在住のEU市民であり、そのうち少なくとも1名はAmazonと無関係の人物となる予定です。
AWS European Sovereign Cloudのマネージングディレクターに就任する予定のKathrin Renzは、次のように述べました。「我々は、AWS European Sovereign Cloudでユニークなアプローチを取っています。機能制限のあるソリューションと、AWSのフルパワーのどちらかを選択したくないという声をいただいているため、顧客が期待するサービスポートフォリオ、セキュリティ、信頼性、パフォーマンスを維持しながら、欧州のデジタル主権要件に対応するAWS European Sovereign Cloudを設計しました。クラウドとAIの導入促進は、欧州のイノベーションアジェンダの中核をなすものであり、このソリューションにより、お客様はデジタルソブリンニーズを満たしながら、イノベーションを加速させることができます。」
リーダーシップに加え、AWS European Sovereign Cloudのデータセンターへのアクセス、テクニカルサポート、カスタマーサービスを含む日々のオペレーションを管理するのは、EUに居住するAWS社員のみです。
米国のハイパースケーラーが欧州の顧客を安心させる必要性は、ドナルド・トランプ大統領の就任以来、この半年でより顕著になっています。
ここ数か月だけでも、100を超える団体が欧州当局に宛てた公開書簡に署名し、欧州大陸が「より技術的に自立」することを求め、現在のハイパースケーラーへの依存が「セキュリティと信頼性のリスク」を生み出していると述べています。
欧州の団体は、トランプ政権がGoogle、Amazon Web Services、マイクロソフトなどの米ハイテク企業への依存を通商交渉のテコとして利用する可能性から、ホワイトハウスによるNATOへの攻撃、EUへの関税、さらにはグリーンランド侵攻の脅しまで、さまざまな懸念を抱いています。
欧州のクラウドプロバイダーであるOVHcloudの4月の決算説明会で、Benjamin RevcolevschiCEOは、次のように述べました。 「現在の地政学的な状況では、ヨーロッパの民間企業や公的機関の懸念に変化が見られます。戦略的自律性の問題が、いまやCEOの課題となっています。」
「クラウドプロバイダーの選択は、もはや技術的な問題だけではなく、戦略的な問題でもあります。」
これを受け、マイクロソフトは欧州大陸へのコミットメントを再確認する声明を発表し、今後2年間で欧州のデータセンター容量を40%増やすと付け加えました。
マイクロソフトのブラッド・スミス社長は、ブログで次のように述べています。「最近の地政学的な不安定さを考慮すると、欧州政府が新たな選択肢を検討する可能性が高いことは認識しています。」
「その中には、欧州の国産製品を支援するための公的資金を伴うものもあるかもしれません。我々は、多様化したテクノロジーエコシステムの重要性を認識しており、テクノロジーエコシステム全体で欧州の参加者と協力することを約束します。」
Googleは、ソブリンクラウドソリューションを更新し、「Google Cloud Data Boundary(データ境界)」を導入しました。これにより、顧客はデータの保存および処理場所を制御できる境界を設定でき、データ処理を米国またはEU内に限定したり、保存先の国を指定したりすることが可能になります。また、「User Data Shield(ユーザーデータシールド)」を開始し、Mandiantのサービスを活用して、データ境界上に構築されたアプリケーションのセキュリティを検証できるようにしました。さらに、フランス企業Thalesとのパートナーシップも拡大しました。
この記事は海外Data Centre Dynamics発の記事をData Center Cafeが日本向けに抄訳したものです。
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