Googleのバッテリーへの大いなる賭け【特集】
クラウドの巨人、ディーゼルフリーの未来に向けた第一歩を踏み出す
ハイパースケーラーの巨人Googleは、データセンターにおけるディーゼルの終焉をもたらす可能性への賭けとして、発電機をリチウムイオンバッテリーに置き換える計画を進めています。
「バッテリーは来年の夏の終わり頃に稼働する予定で、これはデータセンター業界で初めてのことである」Googleでカーボンフリーエネルギー化を主導するMaud Texier氏はDCDにこう語りました。
同社はベルギーのSt. Ghislainデータセンターの発電機を「従来と同じ3MW容量のバッテリー」に交換する予定であるとTexier氏は言います。これによりグリッド(送電網)がダウンした場合でも、バッテリーが「特定のワークロード」に関しては1時間ほど稼働を維持できる見込みであるとしています。
ディーゼルの終焉
元テスラの幹部は、Googleが使用するバッテリーの供給元についてはコメントを控えましたが、リチウムイオンバッテリー採用の理由としては近年の価格低下だけでなく、データセンターにリスクをもたらす可能性に対し、確実に信頼できるアプローチであるからだと述べています。
リチウムイオンバッテリーのエネルギー密度は著しく向上してきており、システムに割くスペースを比較的簡単に見つけることができます。「今日、私たちが持っているシステムは、実際にはディーゼル発電機が占める物理スペースに非常に近い」とTexier氏は言います。
「私たちの初期の調査段階では、それが重要な課題の1つだった、リチウムイオン産業の大幅な進歩により、数年前に比べると懸念はそれほどでもなくなっている」
ディーゼル発電機はその生涯の殆どの時間は本質的に役に立たず、停電時にのみ素早く作動するものですが、バッテリーはグリッドと密接な関係を持つことができる点をGoogleは期待しています。
「したがって今回の試みでは、周波数調整を検討している」とTexier氏は言います。「バッテリーがバックアップとして使用されていない間は、その容量を使い、通常、発電と消費の間の過剰・不足からくるグリッドのアンバランスの解消をリアルタイムに支援する」
周波数規制は例えばベルギーのサイトにとっては意味のあることですが、将来の展開はさらに大掛かりなものになりそうです。「他のデータセンターへの展開を進めていく中で、各地域の状況によってはエネルギーポートフォリオの最適化や特定のサービス提供のために、 他の用途や需要家側蓄電池(Behind The Meter:BTM)としての利用も考えられる」とTexier氏は述べています。
Googleは、データセンター業界全体で世界中に約20ギガワット程度のバックアップ用ディーゼル発電機が点在していると推定している
同社は現在、データセンターのニーズを満たす十分な再生可能エネルギーを購入していますが、必ずしもデータセンターが再生可能エネルギーで稼働しているという意味ではありません。太陽光が得られないときや風が吹いていない時など、グリッドが化石燃料ベースの電力しか提供できないことはあります。将来的にはGoogleは、再エネ作動時に充電されるバッテリーに、再生可能エネルギーが得られない時間帯にデータセンターへの電力供給を頼ることができるようになるかもしれません。
しかしこのことは単に増大する気候危機の中、正しい行いをするという点だけに留まらず、グリッドへの支援により収益をもたらす、といったビジネスケースも存在します。「これが、今回の試みを決定した実際の理由だ」とTexier氏は認めています。
「ディーゼル発電機を持続時間の短いバッテリーに置き換えることができるという側面、これらのテクノロジーのコスト曲線、そして他の目的への利用から得られる潜在的なメリットにより、持続可能性プロジェクトと言うよりも運用の観点から意味のあるビジネスプロジェクトのようなものだと信じている」
データセンター業界全体を見ると、Googleは世界中に約20ギガワット程度のバックアップディーゼル発電機が点在していると推定しています。それらをすべて交換すると、多くの炭素汚染物質が除去され、実際に再エネ展開に役立つものに交換されます。
ただし、Googleでさえ当初これを今後稼働する施設にのみにしか展開を予定していませんが、これが成功した場合は今後の20ギガワット分のバックアップ電力に影響を与えることになります。
データセンター業界以外でも、再生可能エネルギープラントの稼働が始まりつつあり、エネルギー貯蔵の必要性が急速に高まっています。この需要を満たすために、Googleは系統側(Front)及び需要家側(Behind)においてバッテリーストレージの展開にさらなる関与をしていきたい、とTexier氏は語っています。
これは、リチウムの先のエネルギー貯蔵ソリューションの模索を意味する、とTexier氏は述べていますが、詳細は明らかにされていません。例えば、グループ企業のXは、エネルギー貯蔵に関する溶融塩の利用調査プロジェクトを進めています。一方で多数の企業や政府の研究プロジェクトも、再生可能エネルギーがつまずいた場合のエネルギー貯蔵の様々な代替方法を追求しています。
しかし、それら全てに先んじて、Googleは発電機をリチウムイオンバッテリーに交換したことへの有効性を証明する必要があり、そのため多くの非公開マイルストーンを設定しています。「2、3か月でなるべく早く終わらせたいが、現時点ではまだわからない 」とTexier氏は言います。
Data Center Dynamics
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