
チリと中国を結ぶ海底ケーブル、ラテンアメリカのデジタル主権に懸念
「Chile-China Express」計画は香港とチリを直結するが、データ管理や安全保障リスクへの懸念が
チリは、香港と直接接続する野心的ながらも物議を醸す海底ケーブルプロジェクト「Chile-China Express」を推進しています。
このケーブルは、英国の港湾・海事管理企業Inchcape Shipping Services(ISS)と中国と関係のあるパートナーによって、透明性の乏しい形で開発される予定です。
このプロジェクトは、アジアとの接続強化を目的としているとされていますが、ラテンアメリカ地域におけるデジタル主権やサイバーセキュリティに対する重大な懸念を引き起こしています。
Googleとチリ政府が主導するHumboldt project(フンボルト計画)は、バルパライソとシドニーを結ぶもので、オープンで透明性のあるパートナーシップのもと進められています。一方、「Chile-China Express」は、公開されたスケジュールや資金提供者、コンソーシアムの詳細が明らかにされていません。
このプロジェクトは2025年夏に発表されましたが、ルートや陸揚げ地点などの詳細は、ほとんど公開されていません。
「Chile-China Express」は、チリと中国を直接結ぶ初のケーブルであり、チリに陸揚げされる太平洋横断ケーブルとしては2本目となります。
Googleは現在、チリとグアム、仏領ポリネシアなどの太平洋諸島を結ぶHalaihai systemを開発中で、同地域の他のケーブルとも接続される予定です。
この新プロジェクトの不透明性は、中国の現行法によってさらに懸念を深めています。中国では、企業が国家の情報機関に対して、国外であってもデータの提供や監査に協力する義務があります。
この法律により、チリだけでなく、アルゼンチン、ブラジル、ペルー、エクアドルなど、通信ネットワークが国境を越えて広がるラテンアメリカ諸国にとっても、機密データへの不正アクセスのリスクが生じる可能性があります。
このプロジェクトは、グローバルなデジタル経済を支える重要インフラの支配をめぐる地政学的競争の一環です。中国はこうした巨大プロジェクトを通じて影響力を強めようとする一方、西側諸国はフンボルト計画のような取り組みを通じて、チリを南太平洋の信頼性あるオープンなデジタル拠点として位置づけようとしています。
しかし、「Chile-China Express」の実施における透明性の欠如は、デジタルガバナンスや地域のプライバシーに対する影響について、正当な疑問を投げかけています。
技術的な側面に加え、最近の報告では、中国の海外活動には、海外の中国人コミュニティに対する監視や圧力を行う仕組みが存在することが明らかになっており、これらのプロジェクトには政治的・安全保障的な次元も加わっています。これに対し、国際的なパートナーとの共同プロジェクトは、一般的により高い透明性とグローバルなガバナンス基準へのコミットメントを示しています。
このような状況の中、ラテンアメリカは、デジタルインフラの近代化と主権・サイバーセキュリティの保護をいかに両立させるかという重要な議論に直面しています。海底ケーブルの急速な整備は、経済・技術の未来にとって戦略的な要素であると同時に、商業・技術・地政学的な利害が交錯する分野でもあり、慎重な検討、透明性のある管理体制、そして地域全体での情報に基づいた対話が求められています。
ISSは、ロンドンに本社を置く英国の多国籍港湾・海事管理企業で、2022年にドバイ・ワールドの投資部門Istithmar Worldから、ロンドンのプライベートエクイティ企業Epiris LLPによって買収されました。
この記事は海外Data Centre Dynamics発の記事をData Center Cafeが日本向けに抄訳したものです。
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