マイクロソフトの排出量が2020年以降23%増 AIデータセンターが原因か

急増するエネルギー需要に比べて「控えめ」

データセンターの新設により、2020年以降のマイクロソフトの二酸化炭素排出量は23.4%増加したと、マイクロソフトの2025年環境サステナビリティ報告書が発表しました。

同報告書によると、マイクロソフトは再生可能エネルギーと二酸化炭素除去への投資で顕著な前進を遂げたものの、主にAIシステムへの投資に対応するためのデータセンターの新設が原因で、排出量は増加傾向にあるとのことです。

マイクロソフトは、この増加の原因を「AIやクラウドの拡大といった成長に関連した要因」としながらも、同期間のエネルギー使用量が168%増、収益が71%増を記録したことにに比べれば、「控えめな増加」だと説明しています。

同社は炭素排出量の増加に対処するため、「サプライチェーン全体でカーボンフリーの電力市場を拡大する努力を続け、当社のデータセンターで使用される鉄鋼、コンクリート、その他の建築材料や燃料など、脱炭素化が必要なセクターの脱炭素化に向けた投資を行っている」と述べました。

排出量の大半はScope 3で、97%以上を占めています。Scope 3とは、企業が直接管理できない排出量を指し、通常、輸送、原材料調達、商品・サービスに関連します。マイクロソフトの場合、Scope 3は資本財と購入財・サービスが中心で、総排出量の4分の3以上を占めています。

排出量が増加する一方で、マイクロソフトはポートフォリオを脱炭素化するために、大規模な再生可能エネルギー容量を契約し続けています。2024年には、長期電力購入契約(PPA)を通じて、16か国で合計19GWの新規再生可能電力を契約しました。このPPAには、アイルランド、ヨーロッパ大陸、アメリカ市場全体におけるものも含まれており、同社のグリーンエネルギーポートフォリオは合計で34GWとなりました。

これにもかかわらず、マイクロソフトはデータセンターポートフォリオの近くでグリーンエネルギーの調達することに苦戦しているとし、特に送電網に制約のある地域において顕著であると述べています。

また、データセンター全体のエネルギー効率化対策の進展についても言及しました。報告書では、未割り当てサーバーのエネルギー使用量を最大35%削減できる低電力サーバーステートの利用を強調しています。同社によると、この取り組みは、2022年には数千台だったサーバーが2024年末には200万台近くにまで拡大されているとのことです。

また、炭素除去の最大の企業購入者であることも再度強調しました。

2024年、マイクロソフトは2200万トン近くの除去クレジットを購入しました。除去技術に関しては技術的に不可知論であるとマイクロソフトは自負しており、あらゆる分野に投資してきました。目立ったところでは、森林再生、直接空気回収、岩石風化促進プロジェクトからの購入があります。

マイクロソフトは、バリューチェーンの脱炭素化で業界をリードしています。しかし、2030年の目標がますます近づいており、同社は二酸化炭素除去の購入の勢いを維持しながら、排出量削減の努力を倍増させなければならないでしょう。

重要なのは、データセンター建設の脱炭素化です。報告書は、マイクロソフトがハイブリッド建設モデルでマスティンバーを使用した初のデータセンターを立ち上げるなど、この点での進展を指摘しています。このモデルでは、プレキャストコンクリートと比較して、データセンター建設の二酸化炭素排出量を65%削減できるとしています。

マイクロソフトはまた、Stegraなどの低炭素材料企業への投資についても言及しました。この企業は、ほぼゼロカーボンの鉄鋼製品を開発しており、データセンター建設の脱炭素化を支援する上で欠かせない存在です。

さらに、マイクロソフトは、データセンターにおける水使用効率の向上を達成するという目標を改めて表明し、「AIのワークロードを最適化し、冷却に使用する水をゼロにする新しい革新的なデータセンター設計により、1施設あたり年間推定12万5000立方メートルの水の使用を回避します」と述べました。

この記事は海外Data Centre Dynamics発の記事をData Center Cafeが日本向けに抄訳したものです。

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