
ブラジル先住民がTikTokのデータセンター建設に異議申し立て
先住民の権利、環境、憲法に関する懸念
ブラジルの先住民コミュニティが、TikTokのデータセンター建設を停止するための申し立てを行いました。
Politica & Poderによると、セアラー州北東部のカウカイアおよびサン・ゴンサーロ・ド・アマランチの自治体周辺に居住するアナセ先住民コミュニティは、8月26日、ブラジル政府に対して、コミュニティが所有権を主張する土地に建設されるデータセンターの開発を停止するよう申し立てを行いました。
この施設は、ブラジルの風力発電企業Casa dos Ventosによって開発され、TikTokの中国の親会社ByteDanceによって運営される予定で、セアラー州都フォルタレザの北に位置するペセン工業港湾団地内に建設されます。
施設は今年6月に規制当局の承認を受けており、2025年後半に建設が開始され、2027年1月に運用が開始される予定です。インフラと設備への総投資額は最大500億レアル(87億ドル)に達する見込みです。
これに対し、アナセコミュニティは8月4日、カウカイアにある州環境監督局(SEMACE)の本部を占拠しました。
Agencia Eco Nordesteなど複数のブラジルメディアによると、申し立てにはデータセンターの環境ライセンスプロセスの取り消し要求、施設が低影響活動として誤って分類されているとの指摘、開発許可の取り消し要求が含まれているようです。
申し立ては、環境、手続き、憲法上の根拠に基づいており、土地所有権に関連する問題にも触れています。
環境問題
申し立てはまず、Casa dos Ventosによる水使用量について異議を唱えています。Intercept Brasilによると、Casa dos Ventosのサステナビリティ報告書では、施設は1日あたり約30,000リットルの水を消費するとされていますが、申し立てはこれを過小に評価していると主張しています。
申し立ては「国際的なベンチマーク」に基づき、データセンターは1日あたり1,100万〜1,900万リットルの水を使用すると推定しています。この数値は、2025年2月にBBC Newsが掲載した記事に登場し、水資源を専門とするラマー大学の土木・環境工学部教授 Venkatesh Uddameri博士によって示されたものです。
BBCの記事によると、同博士の計算は「乾燥または半乾燥気候に基づいており、最近の効率改善やAIの発展は考慮されていない」と記されています。
国際エネルギー機関(IEA)は、2025年4月の報告書で、平均的な100MWのデータセンターは1日あたり約200万リットルの水を消費するとしています。開発計画によると、施設は第1段階で210MW、最終的には300MWの容量を提供する予定であり、IEAの計算を元にすると、Casa dos Ventosの主張よりも多くの水を使用しますが、アナセの推定よりは少ないと見られます。
Casa dos Ventosのイノベーション担当ディレクター、Joao CaldasはPolitica & Poderに対し、施設では閉ループ型液体冷却を採用すると述べており、これは従来の空冷システムよりも水使用量が少ないことが示されています。2025年5月のマイクロソフトの研究では、液体冷却によりデータセンターの水使用量を31〜52%削減できるとされています。
手続きおよび土地所有権の問題
アナセの指導者Cacique Roberto Ytaysaba Anacは、Rest of Worldに対し、政府がコミュニティの協議権を尊重していないと語りました。同氏によると、この権利はブラジルが署名している国際労働機関(ILO)条約により保証されているとのことです。
ILO条約169号「先住民および部族民条約」の第6条第1項では、政府は「関係する人々と、適切な手続きおよび特に彼らの代表機関を通じて協議を行う」こと、そして「これらの人々が自由に参加できる手段を確立する」ことが求められています。
両者は、土地がコミュニティに属するかどうかについても意見が対立しています。Casa dos Ventosは、データセンター用地が先住民の正式な所有地とは重なっておらず、建設地は先住民の領域から20km以上離れているとPolitica & Poderに述べています。
しかし、Cacique Roberto Ytaysaba Anacはこれに異議を唱え、距離は3km(約1.86マイル)であると主張しており、ブラジル憲法第231条に基づき、アナセには「伝統的に居住してきた土地」に対する権利があると主張しています。
Casa dos Ventosは、未使用の風力発電をデータセンター開発者に供給することを戦略としており、昨年10月にはラテンアメリカのデータセンター開発企業ODataと、バイーア州ヴァルゼア・ノヴァにある360MWのBabilônia Sul風力発電所からの電力供給に関する長期契約を締結しました。
同社は、3.1GWの運用中風力資産に加え、さらに30GWの開発中プロジェクトを保有しています。運用中の資産には、カンポ・フォルモーゾにある151.2MWのFolha Larga Sul 風力発電所や、São Tomé、Lajes、Caiçara、Rio do Ventoにまたがる1.038GWのRio do Vento風力発電所が含まれます。
ブラジルのデータセンター市場は近年成長しており、政府は歓迎の姿勢を示しています。2025年4月には、100%再生可能エネルギーを使用し、国内顧客向けにスペースを確保することを条件に、データセンター事業者に対する税制優遇措置を発表しました。ロイターによると、この優遇措置は9月初旬に開始される予定とのことです。
この記事は海外Data Centre Dynamics発の記事をData Center Cafeが日本向けに抄訳したものです。
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