タイでデータセンター向け直接電力購入契約に関する法案

タイのエネルギー規制委員会(ERC)は10月3日、データセンターが電力生産者から直接再生可能エネルギーを調達する仕組みを、国家送電網システムを通じて規制する「直接電力購入契約(Direct PPA)に関する規制案」(Direct PPA Regulation Draft)として発表しました。これは先週土曜日に、米国の法律専門誌National Law Reviewが公開した記事によるものです。

2024年6月に、国家エネルギー政策委員会(NEPC)が承認したDirect PPAのパイロット政策により、タイ投資委員会(BOI)が推進するデータセンターは、再生可能エネルギー生産者と直接契約を締結することで、全国から迅速に再生可能エネルギーを調達できるようになります。電力は、タイの全国送電網を経由して供給されるため、エネルギー産業の自由化を促進すると同時に、データセンターが国際的な持続可能性の目標を達成する支援にもなります。

「業界が大幅な成長を予測する中、データセンター事業者は競争力のある価格でエネルギー、特に様々なESG目標との整合にも寄与する再生可能エネルギーの確保に躍起になっています。タイ国内のデータセンターエコシステム発展を支援する継続的な取り組みの一環として、同国をデジタルインフラの地域ハブと位置付けるという戦略的目標に沿うよう、様々な法令・規制の精緻化を進めています」と論文は述べています。規制は依然草案段階にあるため、さらなる改訂の可能性や、政府機関による基準・手続き・条件を規定・精緻化する追加ガイダンスの発出が想定されると付記されています。

法案草案によれば、対象となる電力生産者とデータセンターは特定の条件を満たす必要があります。

その条件の一部として、発電事業者は再生可能エネルギー、または再生可能エネルギーと蓄電池システムの組み合わせのみを使用することが求められています。発電所は新設施設で、設置容量が1,000kVA以上であること、民間オフテイカーまたは政府系電力事業者との既存PPAが存在しないことが必須条件となります。発電所の外資所有には制限はありませんが、土地所有にはBOIの承認が必要であり、BOIが促進する外資系投資家に限られます。

データセンターは、さらに多くの条件を満たす必要があります。例えば、プロジェクトはBOIによる投資促進を受けていること、建物あたり最低50MWのITベースロードを有すること、提案されるDirect PPA、系統利用、総負荷予測を詳細に記した10年計画を提出する必要があります。データセンターはまた、電力需要の100%を再生可能エネルギーで賄うことを意図していること、および本社から再生可能エネルギー使用を義務付けられていることが求められます。

さらに重要な点として、データセンターがERCにDirect PPA枠の申請を提出する時点で、当該施設は収益を一切生み出していないことが求められます。また、電力生産者からDirect PPA制度の利用に関する確約を既に得ている証拠を提出する必要があります。これは覚書(MOU)または、意向表明書(LOI)の形式で可能です。データセンターは、複数の電力生産者から供給を調達できます。

2025年前半期には、 データセンター事業単独で28プロジェクトから総額5,212億バーツ(161億米ドル)の投資を集めた一方、再生可能エネルギー分野ではクラウドサービス需要の高まりを受け、191件の申請で総額422億4,000万バーツ(13億米ドル)の投資が見込まれると、BOIが8月に発表しました。

一方、Krungsri銀行の「Industry Outlook 2025–2027:データセンター産業」では、タイのデータセンター産業の総収益が、年平均7.5~8.5%の成長率で推移すると予測しています。

「この増加は、タイがデジタルインフラの地域ハブとしての戦略的地位を確立し、規制改革やエネルギー市場改革を通じて大規模かつ持続可能な事業運営を可能にする取り組みを反映しています」論文は付け加えています。

W.Media ( Jan Yong 記者)より抄訳・転載

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