理研が富士通、NVIDIAと提携し「富岳NEXT」を開発へ

日本のフラッグシップスーパーコンピュータとして初めてGPUをアクセラレータとして採用

日本の研究機関である理化学研究所(理研)は、富士通とNVIDIAと協力し、スーパーコンピュータ「富岳」の後継機となる「富岳NEXT」の共同設計を行うことを発表しました。

NVIDIAのハードウェアの採用は、日本のフラッグシップスーパーコンピュータにおいてGPUがアクセラレーターとして使用される初めての事例となります。

富士通は2025年6月に「富岳NEXT」の契約を獲得しており、「富岳NEXT」はシミュレーションとAIワークロードを融合させたハイブリッドAI-HPCシステムとして設計されます。理研の発表によると、富士通がシステム全体、計算ノード、CPUの基本設計を担当し、NVIDIAがGPUインフラの設計を主導します。

富士通は、エネルギー効率に優れたArmベースのCPU「FUJITSU-MONAKA」を開発しており、2027年にリリース予定です。このCPUは、2nmプロセス技術で設計されており、GPUなどのアクセラレータと統合され、先進的な3Dパッケージングと超低電圧回路動作に最適化されたマイクロアーキテクチャを採用しています。

富士通によると、「FUJITSU-MONAKA」の後継となる「FUJITSU-MONAKA-X」(仮称)は、「富岳NEXT」の基盤となり、富岳の既存アプリケーション資産を継承・加速しつつ、最先端のAI処理能力を取り入れることが可能になるとのことです。

「FUJITSU-MONAKA-X」のCPUは、NVIDIAのアーキテクチャと高帯域接続を可能にする「NVLink Fusion」技術を用いて、NVIDIAのハードウェアと連携されます。

「富岳NEXT」は2030年の稼働を予定しており、科学研究、実験シミュレーション、地球システムモデリングなどのアプリケーションを支援します。理研、富士通、NVIDIAは、混合精度計算、継続的ベンチマーク、性能最適化などのソフトウェア開発でも協力します。

理研はブログ投稿のなかで、「日米の先進技術を基盤に設計される富岳NEXTは、FP8精度(疎行列)で600エクサフロップスを超えるAI向け性能を持ち、世界初の『ゼッタスケール』スーパーコンピュータになることが期待されている」と述べています。

このゼッタスケール性能はAI向けのFP8(8ビット精度)で測定されるもので、従来のスーパーコンピュータ性能(ダブル精度計算、いわゆるFP64)とは異なります。例えば、FP64で100ペタフロップスの性能を持つシステムは、FP8で同じ数値を持つシステムよりも計算能力が高いとされます。

NVIDIAのハイパースケール・高性能計算担当VPであるIan Buckは、次のようにコメントしています。「日本は製造業、ロボティクス、工学において世界をリードしており、自然災害への対応や高齢化社会への課題にも取り組んでいます。AIとHPCは、これらの複雑な課題に対応するための鍵となります。」

「理研、富士通、NVIDIAの協力により、富岳NEXTは前世代と同じエネルギー消費でアプリケーション速度を約100倍に向上させ、研究の加速、産業競争力の強化、日本および世界の人々の進歩を促進します。」

2020年に初めて稼働した富岳は、Armベースで442.01ペタフロップスの性能を持ち、当時のTop500ランキングで世界1位となりました。しかし、最新のランキングでは、米国エネルギー省が運用する3つのエクサスケールシステム、欧州の2つのスーパーコンピュータ、Microsoft Azureの「Eagle」に次ぐ7位となっています。

この記事は海外Data Centre Dynamics発の記事をData Center Cafeが日本向けに抄訳したものです。

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