ソフトバンク、英国のAIチップ設計メーカー、Graphcoreを買収
英国のチップ設計メーカーであるGraphcoreが、ソフトバンクグループ株式会社に買収されました。
Graphcoreはソフトバンクの完全子会社となりますが、今後も社名はGraphcoreのまま事業を継続するとのことです。なお、買収額については明らかにされていません。
Graphcore 本社は引き続き英国のブリストルに置かれ、そのほかケンブリッジ、ロンドン、ポーランドのグダニスク、台湾の新竹にオフィスが置かれます。
「これは、我々のチームと、真に変革的なAI技術を大規模に構築する彼らの能力に対する絶大な支持であると同時に、当社にとっても素晴らしい成果である」と、Graphcoreの共同設立者兼CEOのNigel Toonは語っています。「AIコンピュートに対する需要は膨大で、成長し続けています。AIの可能性を最大限に引き出すために、効率性、耐障害性、計算能力を向上させるためにやるべきことはまだたくさんあります。ソフトバンクというパートナーを得たことで、GraphcoreチームはAI技術の展望を再定義することができるでしょう」
「社会は、基礎モデル、生成AIアプリケーション、科学的発見への新たなアプローチが提供する機会を受け入れています。次世代半導体と計算システムはAGIの旅に不可欠であり、このミッションでGraphcoreとの協業を喜ばしく思います」と、SoftBank Investment AdvisersのマネージングパートナーであるVikas J. Parekhはコメントしています。
Graphcoreは2024年2月から事業価値を4億ポンド(5億400万ドル)以上にできる売却先を探していました。5月には、ソフトバンクがこのチップメーカーの買収を検討していると報じられていました。
この買収に対し、科学・技術・イノベーション省のPeter Kyle長官は、「 Graphcoreとその従業員が直面していた不確実性に終止符が打たれることを歓迎する」と述べています。
ソフトバンクは2016年にArmを320億ドルで買収し、同社の過半数株式を保有しており、昨年株式市場に再上場した際も支配権を保持していました。
2016年に設立されたGraphcoreは、Intelligent Processing Units(IPU)と呼ばれるAIアクセラレータを製造しており、Nvidiaが製造するGPUの代替品として販売されてきました。
しかし、同社は深刻な経営難に陥っていました。2023年10月、Graphcoreの2022年財務諸表は、同社が1億6,100万ポンド(約2億400万円)の税引き前赤字を計上したことを明らかにし、収益は46%減の210万ポンド(約2億7,000万円)と、計上した損失の約1%にとどまっていました。
ピーク時の同社の推定価値は21億ポンド(28億ドル)でした。今回の買収で Graphcore の評価額が以前推定されていた4億ポンドになったとすると、同社の価値は以前の25%以下になったことになります。
Financial Timesは、この件に精通した関係者の証言を引用し、この買収の実際の評価額は6億ドルであったと報じていますが、それでも同社の以前の評価額に対して大幅な痛手となります。
2023年、同社はアメリカの輸出規制により、以前から主要成長分野として狙っていた中国市場からの撤退を 余儀なくされました。
そして2024年3月、Graphcoreはクラウド企業のHyperAIから不公正な取引を行っていると提訴されていました。
HyperAI によると、Graphcore は欧州の別のクラウドプロバイダーとの独占契約を主張し、HyperAI に対して、Graphcore がエンジニアを大量解雇したため、以前提供していた技術サポートは提供できないと伝え、最終的には、HyperAI がすでに製品を受け取っているにもかかわらず、HyperAI に製品を販売したことはないと主張しようとしたとしています。
この記事は海外Data Centre Dynamics発の記事をData Center Cafeが日本向けに抄訳したものです。
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