混沌とした時代のレジリエンス設計【特集】
北極圏の森林が燃え、都市がかつてない大洪水を経験し、記録的なハリケーンや台風が無防備な町を襲った年に、安定した世界への信頼はおそらく不安定な兆候を示し始めています。
私たちの惑星はますます危険な場所になりつつあり、人々の生活だけでなく、社会を支える建物、そしてそれをすべて支えるグリッドを脅かしています。しかし、これら増大しつつあるリスクを示す豊富な証拠があるにもかかわらず、多くは従来のビジネスの考え方で運用を続けています。
「データセンター運用事業者でさえ、それをまったく(と言っていいほど)考慮していないのは信じられないことです。」と、グローバルのデザイン・コンサルティング会社Arupのリスク・レジリエンスプラクティスの責任者であるIbbi Almufti氏はDCDに語りました。
「彼らはただ他の人と同じように構築しているだけです。クレイジーです。」
現実に直面
データセンターは多くの場合、最新の建築基準に準拠し設計されていますが、その基準は一見、災害に対し合理的に耐えられるよう定められているように見えます。「しかし、建築基準が気にしているのは生命の安全だけです。仮に、より高いレベルの基準性能を目指して設計したとしても、生命の安全リスクを下げるだけです。
「機能レベルの性能などは見てはいけません。」と Almufti氏 は言います。脅威の高まり、そしてデータセンターの 可用性を保つ必要性を考慮すると、データセンターの設計では「生命の安全から、それを超えるレベルまで“敢えて規制を変え”(= move the goalposts)つつ、ダウンタイムや修理コストを抑えつつ、投資を保護する必要があります。」
彼はさらにこう付け加えます。「現在、自然災害リスクが高い地域にデータセンターを建設している場合、最新の建築基準に準拠した設計であっても、可用性目標を達成できない可能性が高いと思います。」
それは、データセンターの レジリエンス (回復)力を高めるためのコストと、ダウンタイムに悩まされないことに対するメリット、あるいは少なくともサービスの迅速な復旧とのバランスの問題、です。「データセンターの場合、1〜2日の停止は、数百万ドル相当の損失になります。」とAlmufti氏は言います。「そもそも何百万ドルも費用を掛け前もって投資をする事で、それらを予防することはできます。簡単なことではありません。」
人為的な気候変動は、天候をより獰猛に、また予測不可能にし、短期的に悪化させます。しかし、それだけが問題ではありません。
「地球温暖化を少し忘れてください。例えば10年前に建設したサイトがあり、そしてあなたがその付近に新たなサイト開発用の区画を得たとします、そこで突然水が流れ出るのを見たりした場合、それは浸水による障害の危険性が高い事を意味します。」と Almufti氏 は言います。
例えば、米国中西部や世界中のどこでも、フラッキング(水圧破砕法: 地下の岩体に超高圧の水を注入して亀裂を生じさせる手法)に起因する新しい種類の地震が発生しています。「これは人為的な誘発地震です。」と Almufti氏 は言います。「そして、研究者は常に新たな断層を見つけます。私は耐震エンジニアです。その場所で地震の危険性が下がることは決して無く、それは常に上昇していきます。」
地震活動に対する設計を検討している人は、地震に次ぐ地震と格闘している日本から学ぶことができます。
2017年に日本国内に新しいデータセンターを開設した後、Colt DCSのオペレーション部門VPのIan Dixon氏はDCDに次のように述べていました。「構造物を地震の横方向の力に対しより強靭にするために試行し信頼を得た手法は、壁、床、屋根を結び付けて、上部構造を形成することです。」
「それが我々の最新データセンターにおける基本前提です。しかし、振動を取り除き、機器を居住者と同じくらい安全に保つために、建物が何の上に置かれているかを調べる必要もありました。」
Coltの印西の2施設は、一連の免震装置とテフロンスライダーの上に置かれています。「これらのアイソレータはシェイクテーブルと呼ばれることもあります。1平米あたり125トンを保持でき、建物全体を地震の力から隔離し、下部構造と上部構造が独立して移動できるようにしています。」とDixon氏は言います。「したがって、地震の衝撃/エネルギーの大部分を下部構造で消散させ、上部構造への影響を減らすことができます。」
これは米国の多くのデータセンターでは過剰かもしれませんが、問題は多くのデータセンター事業者が施設を取り巻くリスクや、どのような設計変更が必要かを認識していない可能性があるということです。
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