英国最大を目指すNTTデータセンターの視察レポート【特集】

目を離せないNTTのロンドン新データセンター(London1)のシェル

イギリス国内で最大規模のデータセンターになるとみられる建設プロジェクトは、こっそり忍び出てくるわけではありません。NTTのLondon1は、昨年11月に訪れた際には工業団地というよりも、第一次世界大戦時の戦場のように見え、泥の荒廃した土地に存在していました。

現地で借りたゴムブーツを履き、沼地を横断していると、グリーンの色合いの建物が見えました。それは周囲を囲む見た目の悪いグレーの倉庫よりもはるかに魅力的でした。

計画当局の要請により、建物はグリーンに塗装されました。敷地は、歩行者が頻繁に訪れる湿地帯に面しており、地元の役人は、構造物ができるだけその場所に溶け込むようにしたいと考えていたようです。

ブランド変更

「Dagenham Somme (ダグナム・ソム)」を見学する前に、私たちは現場事務所の一角にあるオフィスで、John Eland氏に会いました。彼は、NTT Ltdのグローバルデータセンター事業部門で、グローバル戦略の責任者を務めています。

2019年7月、日本電信電話株式会社(NTT)は、サービスプロバイダー事業のNTT Ltdを分社化しました。その後、NTT Ltdは2020年1月、RagingWire、NetMagic、e-shelterなどのデータセンター資産をロンドンに本社を置く、「NTT Global Data Centers」に組織化しました。

「日本の企業として、コストの話はあまりしない傾向がある 。」と、Eland氏は言います。「しかし、データセンターのワット数から数字を導き出すことはできるだろう。」

この施設は、60MW以上のIT負荷を持ちますが、地元当局によると、ライフタイム全体に渡り、約15億ポンド(20億ドル)のコストが発生すると予測されています。

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Eland氏は、ダグナムの経済再生の一環として、このプロジェクトを売り込み、この施設は鉄道の経済効果と比較できるほどだ、と地元の記者に話しています。しかし、データセンターは、多くの雇用を生まない傾向があります。約200名ほどが建設工事で動員されているとはいえ、5月の完成後は20~30名程度の現場スタッフしかいないでしょう。

では、なぜダグナムなのか?この地域には、見逃せない特徴があります。基本的に、ここはLINX (London Internet Exchange) といった、ロンドン中心部の相互接続ハブには近接しています。しかし、データセンターの建設スペースがほとんど残っていない中心部からは離れています。

「ロンドンは、コロケーション事業者で飽和状態になっている。」と Eland氏は言います。「ダグナム周辺地域に移転することで、イーストロンドン都市再生プロジェクトの活用が可能となる。この地域が活性化し、企業がそこに移転してくれば、より多くのクライアントも移転してくるだろう。」と、Eland氏は言います。

イーストロンドン都市再生プロジェクトへの参加だけでなく、NTTは、将来に向けて土地への慎重な投資を心がけています。

Eland氏は次のように我々に言います。「当社のスラウのセンターは、LINXから35km(22マイル)離れているが、この地域は16km(10マイル)しか離れておらず、非常に理にかなっている。」

「ここには、電力も土地もある。この新データセンターは、成長を続ける当社のグローバルデータセンタープラットフォームの礎となるだろう。」

獣の腹の中

私たちが訪れた時には、基本構造は完成しており、サイトはさくらんぼ狩りと建築工事以外は閑散としていました。部屋やトイレ、事務室などの基本的なものはまだ完成していませんが、いくつかの構造物や部屋は確認できました。

「これは、第一期工事の終わりに過ぎない、今後データセンターのコア部分の整備や、顧客のワークロードを稼働させるためのエキサイティングな数ヶ月が待っている。」と、Eland氏は言います。

サーバーホールとなる部屋の外周には、「冷却通路」となる予定のスペースがあります。私たちが訪問したときには、小さな壁が目印になっていて、簡単に飛び越えることができました。システム稼働時には、エアクーラーやラックが徐々に移設されてくるでしょう。

本館に隣接した構造物には、すでにUPSや発電機が設置されていました。しかし、私たちの訪問では、より単純な作業が優先されているように見えました。

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「データセンターは、約60MWのIT負荷が実行できるよう設計されている。必要であれば、それを少し増やすこともできる。だから、高密度の土地の要求があった場合、それも実現できる。」と、現場の技術者は話してくれました。

5月には、 London1はスラウとヘメル・ヘムステッドにある、5か所のNTTデータセンターの仲間入りをし、オープンする予定です。(注:NTTサイト上では9月オープンターゲットと表記:2020/6/8時点情報)データセンターの容量は、合計で110メガワットのIT負荷を超えます。London1は、完成時には54,000平方メートル(580,000平方フィート)の敷地となる予定です。

また、完成時には、25,600平方メートル(275,000平方フィート)のITスペースを提供する予定です。

段階的に開発される London1には、最終的に4つのホールを持ち、それらは時間の経過とともに埋められていくことになります。設備やシステムは、需要の増加に応じて設置される予定です。

イノベーションサービス

ダグナムサイトが他のデータセンターと異なる点は、NTTの顧客の要望に応じてハードウェアやソフトウェアの設計や試験を行い導入できる「イノベーションラボ」があることです。

イノベーションラボは、NTTがグローバル・データセンター部門に合流させた欧州のデータセンター事業者e-shelterの特徴でした。これは、サービスやクラウドのパフォーマンス合理化に役立つソフトウェアの改善を示します。

すべてのデータセンターは、信頼性を保証します。多くの施設と同様、London1は、事実上の業界の信頼性基準である Uptime Tier システムに照らして設計されていますが、現段階では認証取得に向けた正式な計画はありません。

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「当社は通常、Tier III 仕様を標準として構築している。」と、Eland 氏は説明します。「通常、Tier認証を取得すのは非常に難しいが、それは設計の仕方によるものだ。認証取得のクライアント要件がある場合はそれを行うが、そうでない場合は、とにかくその標準に合わせて建築するだけだ。この施設が一般的になるにつれ、クライアントは『快適な毛布』を求めるようになる可能性があるため、認証を受けるかもしれない。」

他のマルチテナント型データセンター(MTDC)と同様、London 1 は数多くの個別の顧客の要求に応えなければなりませんが、 Eland氏は、段階的に建設される新しい施設の方が、より容易にこれを実現できると考えています。

「マルチテナント施設であることの難しさは、あらゆる顧客にあらゆるものを提供しなければならないということだ。」

「これは、段階的に建設することの利点であり、顧客のさまざまな要件に合わせて施設を最適化させることができる。例えば、特定のスイート内に30kWの設備を構築する必要がある場合、4~6kWのラックしか必要としない金融サービス会社とは全く異なる要件になる。」

「従い、可能な限り設計に柔軟性を持たせることだ。」

Data Center Dynamics

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