量子コンピューティング 2023Q2決算：IonQ、Rigetti、D-Wave、Quantum Computing Inc.

4社とも赤字が拡大する中、今後の大きな成長を約束

IonQ、Rigetti Computing、D-Wave、Quantum Computing Inc.はいずれも量子コンピューティング分野の上場企業です。

2023年第2四半期決算では、4社とも収益が伸びた一方で純損失も増加しました。

IonQ：収益の伸びは続くが損失も拡大

IonQの第2四半期の収益は550万ドルで、前年同期の260万ドルから111％増加しました。純損失は4,370万ドル、調整後EBITDA損失は1,940万ドル。

ちなみに、同社の第1四半期収益は430万ドル、純損失は2,730万ドル、調整後EBITDA損失は1,590万ドルでした。

また、第2四半期の新規受注は2,800万ドル、累計では3,220万ドル となりました。

「当四半期もIonQにとって画期的な四半期であり、特に2,800万ドルという記録的な受注を達成したことで、上半期の総額は3,200万ドルを超えた」とIonQ社長兼CEOのPeter Chapman（ピーター・チャップマン）氏は述べています。「我々は現在、今年度の予想売上高を4,900万ドルから5,600万ドルに修正し、その達成に向けて順調に進んでいる。また、2021年からのIonQの商用化後3年間の累計売上高1億ドルという目標も射程圏内に入ってきた」

「第2四半期の素晴らしい業績は、2023年の技術目標である29アルゴリズム量子ビット（AQ29）を7ヶ月早く達成したことを受けてのものである。AQ 64と 量子優位性への道筋が明らかになるにつれて、公的機関も民間機関も、現在のForteプラットフォームだけでなく、IonQの技術ロードマップにも投資をしています。当社の成功実績は、一般市場でも語られ始めており、当社は、すべてのお客様に幅広い量子優位性を提供することに全力を注いでいる」

同社は5億ドル以上の現金および等価物を保有しています。

Rigetti：国立研究所に量子コンピュータを販売

Rigettiの当四半期収益は330万ドルでした。また、純損失は1700万ドルでした。

ちなみに、2023年第1四半期の総収益は220万ドル、純損失は2340万ドルでした。

同社は最近、某国立研究所への初のQPU（量子プロセッシングユニット）の受注を完了しました。Rigettiは、9量子ビットのQPUと関連するハードウェアをその研究所に納入しました。

Rigettiは今月、外部のパートナー向けに新しい84量子ビットのAnkaa-1システムチップを発表しました。量子ソフトウェア企業のRiverlaneが、この新型チップを最初に使用するパートナーとなりました。

「Ankaa-1システムを内部でローンチ後、長年のパートナーであるRiverlaneにシステムを使って新アーキテクチャの誤り訂正技術の改善に取り組んでいただき非常にうれしく思う」と、RigettiのCEOであるSubodh Kulkarni博士は述べています。「また、私たちは最も革新的なAnkaa-2システムを今年の第4四半期に一般の方々に提供できることを楽しみにしている」

現在の現金及び現金同等物の総額は1億500万ドルであり、同社は2023年末までに6500万ドルから7500万ドルの手元資金を確保する予定です。

同社は最近、アブダビに拠点を置くADIA Labと協業契約を締結しました。この提携により、確率分布分類の問題、つまり量的ファイナンスの課題に取り組むための量子コンピューティングソリューションの設計、構築、実行、最適化を行うこととなります。

決算発表の中で、Kulkarni氏はQPUの販売価格について次のように述べました。「希釈冷凍機（dilution refrigerator）を所有している顧客にとっては、9量子ビットのQPUの価格は100万ドル未満となる。希釈冷凍機を含む全システムを購入したい場合は、価格はもちろん高くなる。9量子ビットのシステムの場合、大体2250万ドルの範囲になるが、私たちは主に、すでに希釈冷凍機を持っており、私たちからQPUだけを購入したいと考えている顧客に焦点を当てている」

「国立研究所との最初の販売で見られた関心に非常に興奮しており、現在進行中のプロジェクトにも期待している」と彼は付け加えました。「また、セキュリティやハイブリッド環境の検証など、さまざまな理由により、自社環境でオンプレミスのQPUを持つことに興味を持っている多くの顧客もいる」

D-Wave: わずかな収益拡大、損失もわずかに拡大

D-Waveの2023年度第2四半期の収益は170万ドルで、これは2022年度第2四半期から33.6万ドル、つまり前年同期比で25パーセントの増加となりました。

2023年度第2四半期の純損失は、同じく2022年度第2四半期の1330万ドルに対し、2590万ドルとなりました。

2023年度第2四半期の調整後EBITDAは、これも同じく2022年度第2四半期のマイナス1130万ドルに対し、マイナス1490万ドルとなりました。

参考まで、2023年度第1四半期収益については160万ドル、純損失は2460万ドル、調整後EBITDAはマイナス1690万ドルでした。

2023年度第2四半期の受注は250万ドルで、前年の同四半期比で150万ドルの増加となりました。

D-WaveのCEOであるAlan Baratz博士は、次のように述べています。「我々の第2四半期の結果は、企業が、複雑な業務上の課題に対処できる現実的な量子コンピューティングソリューションへのコミットメントと投資を増加させていることを反映していると考える。前年同期比で三桁の受注増と平均取引規模の拡大は、先見的な組織が量子を現代のテックインフラの一環として優先させている証拠だと私たちは考えている」

収益発表の際、Baratz氏は、広告およびマーケティング会社IPG、テクノロジー企業Unisys、建設会社VINCI Energiesなど、数多くの新規顧客の獲得を紹介しました。

「新しい高コヒーレンスの製造スタックで、1200量子ビットのプロトタイププロセッサを製造した。Advantage2は最終的に7000量子ビット以上、20ウェイの接続性、および著しく高いコヒーレンスを特徴とする予定です。ソフトウェアの面では、リアルタイムの量子クラウドサービスであるLeapの強化を引き続き行っている」と彼は付け加えました。

Quantum Computing Inc.：AI向けのエッジデバイスを発表

Quantum Computing Inc.の2023年第2四半期の収益は約11.2万ドルでした。なお、2022年第2四半期は6.5万ドル、2023年第1四半期は12.1万ドルとなります。

2023年第2四半期の純損失は、前年同期の510万ドルに対し、460万ドルとなりました。

「2023年第2四半期の終了は、QPhotonとの合併から1年が経過したことを意味する。1年の間に、私たちは核となる技術の基盤を築き、主要な製品コンポーネントをミニチュア化するための先進的な量子フォトニックチップを設計し、特定の先行市場向けの光子ベースの量子対応製品とサービスのリリースを開始し、商用化を開始した」と、QCiの共同創設者、CEO＆会長であるRobert Liscouski氏は述べています。

量子チップ製造への参入に向けて、同社はアリゾナに計画されている製造施設でのリチウムニオバート光学チップの製造のために、約130万ドルの頭金を支払って長期のリードタイムの装置を確保しました。これらのチップは量子情報処理およびその他の単一光子検出およびセンシングアプリケーション向けです。

QCiは、Dirac-1およびDirac-2 Entropy Quantum Computersへのサードパーティユーザーのオンボーディングを開始しました。同社はまた、この四半期に、光フォトニクスにインスパイアされた、FPGAベースで再帰型ニューラルネットワークアプリケーションに最適化されたReservoir Computer（RC）という種類の機械学習エッジデバイスをローンチしました。

この記事は海外Data Centre Dynamics発の記事をData Center Cafeが日本向けに抄訳したものです。