理研、日本初の量子コンピュータを稼動開始

離れた場所にある2つの量子ビットの接続にも成功

理化学研究所が構築した日本初の量子コンピュータが、3月27日に正式に稼働開始しました。
これにより、埼玉県和光市に設置されている量子コンピュータに共同研究者がアクセスし、利用することができるようになりました。
 
「リリースはゴールではなく、マイルストーン」と、理研量子コンピュータ研究センター(埼玉県和光市)の中村泰信所長は話しています。「レースは始まったばかりです」
 
理研の量子コンピュータは現在64量子ビットですが、2040年までに広く普及させるという目標を達成するためには、この数を100万量子ビットに増やす必要があると理研は話しています。
 
量子コンピュータは、複数の複雑な計算を同時に行うことができ、従来のスーパーコンピュータでは数万年かかるような問題を数分で解決できる可能性があり、オンラインや金融分野で使われている現在の暗号を簡単に解読することができるようになると、世界中の多くの組織が取り組んでいます。
 
量子コンピュータは、量子力学の原理に基づいており、電子や原子などの微小粒子の挙動を利用して計算を行います。量子コンピュータの作り方はいくつかありますが、理研の場合は、量子ビットを超伝導材料で囲んで極低温に冷やす超伝導方式を採用しています。
超低温(~272℃)という条件と、現在の量子コンピュータの信頼性の低さ、膨大なスケールアップの難しさから、今のところ実用化には至っていません。
 

離れた2つの量子ビットの接続に成功

 
さらに理化学研究所は4月3日、物理的に離れた2つの量子ビットを接続することに成功しました。
 
今回の成功は、シリコンの微小なドットを用いた量子コンピュータのスケールアップに役立つと考えられます。現在、量子コンピュータは、量子ビットが近くにある場合は接続が容易ですが、離れている場合は接続が難しく、量子ビットを非常に小さな領域に押し込む必要があります。
 
この問題を解決するために、理化学研究所創発物性科学研究センター量子機能システム研究グループの野入亮人基礎科学特別研究員らの研究チームは、シリコンのスピン量子ビットの間に2量子ビット論理ゲートを用いました。
「この分野では、さまざまなアプローチで多くの研究が行われていますが、離れた2つの量子ビットで形成される信頼性の高い論理ゲートを実証することに成功したのは今回が初めて」と野入氏は言います。「今回の実証により、シリコン量子ドットを用いた量子コンピュータのスケールアップの可能性が開かれた」
コヒーレントスピンシャトリングを使って、電子を電圧で押すことで、量子ドットの位相コヒーレンスに影響を与えることなく、単一スピンの量子ビットを量子ドット間で移動することに成功しました。
 
2つの量子ビットの間の距離は比較的小さかったが、理研チームは現在、その距離を1マイクロメートル程度まで伸ばそうとしています。

この記事は海外Data Centre Dynamics発の記事をData Center Cafeが日本向けに抄訳したものです。

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