
米国政府がインテルの株式を10%取得~CEOに対する辞任要求から一転
トランプ大統領、89億ドルの合意
米国政府は、苦境に立たされている半導体メーカーIntel(インテル)の株式9.9%を取得しました。
政府はインテルに対し、総額89億ドルを投資し、うち57億ドルはCHIPS法による補助金、32億ドルはSecure Enclaveプログラムからの資金より調達しています。インテルはすでにCHIPS補助金として22億ドルを受け取っていましたが、今回の合意により、補助金に含まれていた利益分配や返還条項は撤廃されます。
この合意は、インテルが設計・製造の両面で市場シェアを失い、米国唯一の先端半導体メーカーとしての地位が揺らいでいるなかで成立しました。
トランプ大統領はTruth Socialで「米国はこの株式に対して何も支払っていない。現在の価値は約110億ドルだ。これはアメリカにとって大きな取引であり、インテルにとっても大きな取引だ。」と述べました。(実際には、すでに割り当てられていた補助金を通じて支払われています)。
政府は、インテルがファウンドリー事業の過半数を失った場合、追加で5%の株式を取得できるワラントも保有しますが、取締役会の議席や経営権は持ちません。
この合意は、トランプ大統領とインテルCEOであるLip-Bu Tanとの交渉の結果として成立しました。トランプ大統領は、交渉について「私は『政府をパートナーに迎えるのは良いことだと思う』と言った。彼は同意し、それを実行することに同意した。彼らにとってこれは素晴らしい取引だと思う。」と述べたようです。
トランプ大統領は以前、インテルのCEOに中国政府との関係があると主張し、辞任を要求していましたが、同社は当時、これを否定しました。
トランプ大統領は、今回の合意について「彼は自身の立場を守りたくてこちらにきて、結果的に米国に100億ドルを差し出した。我々はこのような取引を沢山行ってきており、今後ももっと行うつもりだ。」と語りました。
一方、Lip-Bu Tan CEOは声明で、次のようにコメントしています。「インテルは米国で先端ロジック半導体の研究開発と製造を行う唯一の企業として、世界最先端技術がアメリカ製であることを実現するため尽力しています。」
「トランプ大統領の米国半導体製造への注力は、経済と国家安全保障に不可欠な産業への歴史的な投資を促進しています。インテルに対する信頼に感謝し、米国の技術と製造業のリーダーシップを推進するために協力していきます。」
現在、インテルの製造は台湾のTSMCに大きく依存しており、TSMCはNVIDIA、AMD、Apple、AWS、Googleなど、同社の競合企業向けに半導体を製造しています。インテル自身の製造施設は、最新プロセスノードの開発が遅れ、TSMCやSamsungに数年遅れを取っています。
設計面では、AMDのCPUがインテルの市場支配を侵食し、Armプロセッサの台頭も進んでいます。インテルは現在のAIブームにも乗り遅れており、NVIDIAがほぼ独占的な地位を築いています。
複数回にわたる再建策も失敗し、損失が拡大する中で、インテルは大規模な人員削減を実施し、製造施設の開発を中止または延期しています。2025年7月には、財政難により「Intel 14A」およびその後継ノードの開発を中止または一時停止する可能性があると発表しています。
この記事は海外Data Centre Dynamics発の記事をData Center Cafeが日本向けに抄訳したものです。
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