IBMのハイブリッドな現実【特集】
強い逆風に直面し、IBMはクラウドに新たな生命線を模索
IBMは大きな課題に向き合っています。この超名門企業は、サービスやレガシーハードウェア事業から方向転換するために事業部門と従業員を削減し、 クラウドコンピューティング企業としての組織の再構築を試みています。
衰退するセクターから抜け出すことは理にかなっていますが、それは一方でIBMが、Amazon、Microsoft、Googleなど豊富な資金を持つ巨人が支配する最も競争の激しい市場にすべての希望を賭けることを意味します。
その賭けに勝つには真正面からの取り組みではなく別の方向からのアプローチが求められます。「今までと違うことをしようと考えている」とIBM CloudのCTOであるJason McGee氏はDCDにこう語りました。
「それはエンタープライズITの現実と、ビジネスを運営するために必要なミッションクリティカルなワークロードの複雑さを認識することにある。私たちのアプローチは、ロケーションに依存しないハイブリッドなマルチクラウドをIBMのアーキテクチャの奥深くに構築することだ。」
クラウドへの移行
その戦略の一部は、IBMが2019年に340億ドルで買収したレッドハットが開発したOpen Shiftを採用したことで分かります。「私たちは、クライアントがどこでも自由に実行できるプラットフォーム上にアプリケーションを構築できるように本気で取り組んでいる」とMcGee氏は述べています。
コンテナプラットフォームは、IBMが開始した新しい IBM Satelliteサービスのバックボーンです。これは「当社の真の分散型クラウドモデルで、IBMクラウドサービスを利用してデータセンターのバックエンドで走らせることも、AzureやAmazon、さらにネットワークのエッジ上でも走らせることが可能だ」とMcGee氏は説明しました。
「そのため、顧客がワークロードを実行する必要があるあらゆる場所で、完全なas-a-serviceとしてのパブリッククラウドエクスペリエンスを実現できる。」
大小さまざまな企業が、クラウド移行の初期段階におけるクラウドファシリテーターとして関わり、顧客のワークロードの最適配置を支援しようとしています。しかし独自のクラウドサービスを提供している企業はほとんどなく、それはIBMにとってのメリットであり一方で利益相反にも見えます。
McGee氏は、「企業は求める機能に対し最適なプロバイダーを利用すべきであり、IBMはそれを一般的なアプローチでカバーできる」と主張しています。 これは、IBM Public Cloudを高い レジリエンス (復元)力、強固なセキュリティ、安定したワークロードといった「大きな強みとしている部分で」利用することを意味する場合もあれば、一方で他のクラウドの利用を意味する場合もあります。「クラウド上でSQLサーバーデータベースを利用する場合、Azureが正解かもしれない。」
そして「率直に言って、IBM Cloud、Azure、Amazonが要件を満たすグレーゾーンはたくさんある。結局、それは顧客が選択することだ。」
この戦略はMcGee氏の部門である程度の成功を収めており、第3四半期の収益は19%増の60億ドル、四半期ごとの成長率は過去最高でした。「2020年はIBM Cloudにとって素晴らしい一年だった。驚くべき情報ではないと思うが、パンデミックと在宅勤務への移行により、クラウドの採用が本当に加速している。」
しかし、好調なクラウド事業の業績もIBM全体の落ち込みを補うことはできませんでした。昨年5月には、10年間で最大のレイオフとされる合計で約20,000人の従業員解雇が行われました。さらに10月には約10,000人のヨーロッパ部門の従業員解雇が報じられました。多くはパンデミック以前の問題によるものでしたが、新型ウイルスがその問題を悪化させ、収益は急落しました。
IBM Power関連部門は大幅に削減されたと考えられていますが、この一連のレイオフによってIBM Cloudがどれほど大きな影響を受けたかは不明です。取材中この話題に入ると、友好的な雰囲気は無くなりました。McGee氏は「その点については私はコメントする立場ではない」と述べています。
同社はまた、グローバル・テクノロジー・サービス(GTS)事業のうちマネージド・インフラストラクチャー・サービス部門を分社化して、「NewCo」として知られる新会社を設立します。
「これは広範囲にわたるIBM事業の別の部分だ」とMcGee氏は言います。「その事業は、クラウド上でアプリケーションを構築・実行し、ワークロードのクラウドへの移行に関する数多くの作業を行う。以前はこれをIBM事業の一部として行ってきた。そして今後は独立した組織として、IBMのパートナーとして行っていくことになる」
分社化が来年末までに完了した場合、IBMははるかに小さな会社になり、そしてそれが望むものははるかにスリムなものになるでしょう。
この分社化はコロナ禍の前に下された決定でしたが、McGee氏はクラウドへの賭けが今まで以上に意味を持つと信じています。「 クラウド導入の加速は続くと考える。なぜなら現在の状況下で誰もが加速を余儀なくされているから。」
「そしてこの状況が、彼らが考えていた以上に多くのワークロードがクラウドに移行できることへの気づきを促し、それが様子見や躊躇されていた状況の解消を手助けしていると私は考えている。」
Data Center Dynamics
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