米DARPA、量子コンピューティングコンソーシアム設立を検討
Defense Advanced Research Projects Agency (DARPA:アメリカ国防高等研究計画局)は、 量子コンピューティング コンソーシアムの設立を検討しています。
DARPAは情報提供依頼書(RFI:Request For Information)で、「DARPAや量子研究におけるリーダーと協力し、 量子ハードウェアの提供を目指すためのパートナーシップを組んでいただける企業」 を探している、と記載しています。
Quantech
添付文書では、回答企業に対し、量子コンピューティングコンソーシアム参加への適正を判断するためにいくつかの質問が用意されています。
質問では、企業が他の量子ハードウェアメーカーと研究情報や結果を共有することに積極的かどうか?、また研究者のハードウェアやソフトウェアへのアクセスをコスト折半、もしくは無料で提供するかどうか?、そして、量子ハードウェアへの商用アクセスに対する費用について尋ねています。
DARPAはまた、コンソーシアムをどのように形成すべきかについての回答も求めています。すなわち、「コンソーシアム管理会社による主導がいいのか?、メンバー主導か?、政府主導か?」ということです。
興味のある団体は2020年1月24日、東部時間の1:59PMまでに返信をする必要があります。RFIでは、DARPAが何らかの回答をする必要があるという意味ではなく、場合によってはコンソーシアムの計画が前進しない可能性もあるようです。この初期段階では、DARPAが行う投資水準について示されていません。
過去に倣うべき1つのアプローチは、SEMATECHのそれです。(日米半導体摩擦を受けて)1987年に日本のテクノロジー大手企業に対抗するために設立された Semiconductor Manufacturing Technology consortium (SEMATECH:半導体製造技術コンソーシアム)は、5年間に渡りDARPAから5億ドル(現在の換算では10億ドル以上)の資金を受けました。当時14社のコンソーシアム参加企業は投資を一致させる必要がありました。
「SEMATECHは、製造技術における政府と業界のR&Dコンソーシアムが米国の業界の技術的地位を向上させる手助けとなることができると実証した。コンソーシアムをうまく運営することや公的資金の適切な活用など、政府の関心を守りながら実証した。」とは当時の Government Accountability Office ( GAO:米国会計検査院 )の調査報告書の記述です。
「全般的に、SEMATECHは順調に機能した。とりわけ、メンバー企業がコンソーシアムを率いており、その企業の上級幹部が活動の監督に積極的に関わっていたからです。」
さらに、「特に、メンバー企業は製造プロセスと機器に関するいわゆる“競争前段階”の情報を共有し、コンソーシアムに技術スタッフを配置していただいた。」
GAOはこのコンソーシアムが「業界全体の効率を改善するための業界の慣行と標準を開発することができた」ことを理解しました。
米国の半導体産業は自立できるほど強力になったとみられ、政府の資金提供は1996年に終了しました。しかし、その後のGAO報告書の指摘にあるように、政府の関与の欠如は1つの意図しない副作用をもたらしました。「SEMATECHは競合する国の企業からのメンバー受け入れを開始し、これによりコンソーシアムが米国国外に技術移転することになった。」
量子コンピューティングコンソーシアムはSEMATECHからインスピレーションを得るかもしれませんが、 1986年時点の半導体産業は2020年時点の量子コンピューティング市場よりもはるかに成熟していた点に注意が重要です。IBMやGoogleなどの企業は 量子コンピュータ を提供していますが、それらは機能や使いやすさにおいて制限があります。
米国の量子コンピューティングを促進するための別の取り組みとして、2018年後半に米国政府は米国量子科学イニシアチブ法(※エネルギー省、国立標準技術研究所、NASA、および全米科学財団全体で、10年間で12億ドルを量子研究に投入する計画)を可決しました。
米国は、量子コンピューティングの研究に多額の資金を投入している中国との大きな競争に直面しています。 中国は安徽省ひとつとっても、合肥市の量子情報科学研究所の建設に100億ドルを投じていると言われています。
Data Center Dynamics
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