空調装置と消火システムの不具合がオーストラリアの賭博サイト「Tabcorp」ダウンの原因

昨年の主要なレース日にオーストラリアのTabベッティング・システムが停止した原因は空調装置の不具合によるものであったと事故報告書で明らかになりました。

2020年11月に開催されたメルボルン・カップの当日、Tabcorp社のサービスが停止したのは、Global Switchのデータセンターで発生した空調の不具合が消火システムを作動させたことが原因であり、その結果、衝撃波が発生してTabcorp社のIT機器を損傷させたとのことです。この事故により、Tabcorp社の売上高1億豪ドル（7300万米ドル）、利益200万豪ドル（150万米ドル）の損失が発生したようです。

火事ではなく、ただの煙

初期の報道では、シドニーのウルティモにあるGlobal Switchのデータセンターで火災が発生したとされていましたが、詳細な事後調査の結果、火災は発生していなかったものの、空調装置のベアリングの不具合により摩擦、熱、そして煙が発生し、それにより消火装置が作動したことが確認されました。

その結果、難燃性のガスが放出され、データセンターのラックに設置されていた「非常に繊細なIT機器」を損傷させるのに十分な衝撃波が発生したとのようです。

この機器の故障により、週末の27時間以上にわたって「Tab betting」のサービスは停止し、社内システムのデータも破壊されました。また、この障害はスタッフにも不利益をもたらしました。当時Tabcorpは企業再編の真っ最中で、上級管理職やIT部門の責任者らは、レース開催前の週に仕事に再応募する必要がありました。シドニー・モーニング・ヘラルドによると、データが失われたため、これらのスタッフは翌週の月曜日の朝に再度応募しなければならなくなったと報道しています。

この障害は、高いギャンブル性が期待される「Stakes Day」の日に発生しました。レースを主催するRacing Victoria社は11月、「2019年に1億400万ドルだった売上高が、Stakes Dayミーティングでは8,000万ドルに落ち込み、前年比23％減となった」と報告しています。しかし、これは4日間の国内での賭け金が6％増の6億6730万ドルとなったことで多少相殺されました。レーシング・ビクトリア社は、補償を求める権利を留保しているといいます。

Tabcorpは当初、Global Switchが所有するデータセンターで発生した「煙と火災の可能性」を障害の原因としていました。この事故により週末の27時間以上にわたって賭けを行うことができなくなり、1億豪ドル以上の損失が発生したとしています。

Tabcorpの賭博・メディア部門マネージング・ディレクターのアダム・ライテンスキルド氏は、「お客様、Tab、そして競馬業界にとって重要な日に障害が発生したことは、非常に残念だ。我々は対処を行い、このようなことが再び起こる可能性を最小化させるための措置を講じていく」と述べていました。

Deloitte社が作成した報告書によると、今回の事故は、空調装置の機械的な故障が目前に迫っていたことを示していなかったため、まったく予見できなかったとITnewsは報道していました。

故障した空調装置は、コロケーション・データセンター内のGlobal Switchのエリアにあり、ITシステムはTabcorpのスペースにありました。

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消火装置は過去にもIT障害を引き起こしたことがあります。例えば、2016年にトルコのING銀行では、消火装置の試験中にデータセンター内に衝撃波が発生し、ハードディスクのデータを破壊しました。2015年には、グラスゴー市議会のデータセンターで消火システムが作動し、振動でディスクドライブが破損し、同市議会のITがしばらくの間使用できなくなりました。

消火システムへの批判に応える形で、タイコは2016年に、IT機器にダメージを与えなくする「アコースティック」ノズルを発売し、ますます繊細になるハードディスクに合わせて放出力を弱める措置を行いました。

シドニー・ウエストの「Global Switch」のデータシートによると、この施設では「Inergen」というガス火災抑制システムを使用しています。Inergenは、2016年にジョンソンコントロールズと合併したタイコの商標です。DCDはジョンソンコントロールズに連絡を取り、今回の事故にタイコのシステムが関与していたかどうかの確認を取っています。

この記事は海外Data Centre Dynamics発の記事をData Center Cafeが日本向けに抄訳したものです。