AIインフラが前例のないプロジェクトファイナンス急増を牽引

プロジェクトファイナンスの専門家の過半数、インフラを最大の成長分野と認識

企業向けサービス企業CSCが実施した調査によると、AIインフラがプロジェクトファイナンスを「前例のない水準で押し上げる」要因になるとのことです。

CSCは本調査において、AIデータセンターに対する需要の拡大と、1.5兆ドル規模とされる資金調達ギャップを評価するため、200人のプロジェクトファイナンス専門家を対象に調査を行いました。

その結果、回答者の過半数にあたる70%が、インフラ分野を将来最も成長が見込まれる分野だと考えていることが分かりました。これは、AIを支えるデータセンターによる電力消費の急増と、急速なデジタル化が主な要因とされています。

次いで、再生可能エネルギーが48%、テクノロジー・メディア・通信分野が43%となりました。これらの分野もまた、AIデータセンターの成長によって大きく牽引されています。

地域別では、約40%の回答者が最も高い成長を見込む地域として欧州を挙げ、英国が35%でこれに続きました。

一方で、アジア太平洋地域と北米については見方が分かれており、それぞれ32%、31%の回答者が成長地域として選択しました。

CSCは、これらの結果について「幅広く分散したグローバルな投資パイプラインを反映している」と述べています。

CSCのプロジェクトファイナンス部門マネージングディレクター兼責任者であるChristian Oakley-Whiteは、次のようにコメントしています。

「AIは、特にデータセンターおよび関連インフラ分野において、プロジェクトファイナンスの前例のない急増をもたらす可能性が高いです。データセンターの利用がクラウドサービス中心から生成AIへと移行するにつれ、コンピューティング能力、エネルギー、そして資金調達に対する要件は指数関数的に拡大していきます。」

「クラウドインフラは主に大手テック企業の内部キャッシュフローによって資金調達されてきましたが、AIの処理能力需要によって生じると推定される1.5兆ドルの資金調達ギャップは、はるかに幅広い投資家層と資金調達手法を必要とします。これには、プライベートエクイティや政府系ファンド、銀行融資、公募債市場、さらにはプライベートクレジットまでが含まれます。」

CSCによると、こうした資金調達手法はすでに多様化し始めており、回答者の53%が株式資金の主要な供給源としてプライベートエクイティを挙げています。これに加えて、インフラファンドや開発金融機関も重要な役割を担っているとされています。

また、38%の回答者は、プライベートクレジットが「ますます重要な資金供給源になっている」と回答しました。

一方でCSCは、投資活動の加速が「実行面でのプレッシャーの高まり」をもたらしている点も指摘しています。最大の課題として、80%の回答者が顧客確認要件(KYC)を挙げました。

CSCのプロジェクトファイナンスおよびローンエージェンシー部門グローバル営業責任者であるBryan Gartenbergは、次のように述べています。

「新たなエネルギー、インフラ、デジタル容量に対する世界的な需要は、従来の資金調達チャネルの拡大スピードを上回っています。民間資本がそのギャップを埋めつつありますが、現在の案件では単なる資金提供以上のものが求められています。」

「ステークホルダーには、複雑で国境をまたぐ取引を管理できる、深い専門知識と高いオペレーション能力を備えたパートナーが必要です。大規模プロジェクトを迅速かつ確実に実行するため、経験豊富な信託・エージェントサービス提供者へのアウトソーシングは不可欠になりつつあります。」

資金調達ギャップ

AIインフラにおける資金調達ギャップは、ここ数カ月にわたり大きな議論の的となっており、AIバブルへの懸念が強まっています。

JPMorgan Chase & Co.の分析によれば、今後5年間で世界のデータセンターおよびAIインフラに対して5兆ドル超が投じられる見通しです。同社は、こうした投資計画を実現するには、「公的資本市場すべてに加え、プライベートクレジットや代替資本提供者、さらには政府の関与も必要になる可能性が高い」と指摘しています。

しかし、これほどの規模の投資に対して十分なリターンが得られるのか、また開発事業者やオペレーターが金利負担に耐えられるのかについては、依然として懐疑的な見方も残っています。

先週には、IBMのCEOが、これほど巨額な投資に伴う利払い負担が大きすぎるとして、「AI企業やデータセンター開発事業者が投資回収できる可能性はない」と発言しています。

この記事は海外Data Centre Dynamics発の記事をData Center Cafeが日本向けに抄訳したものです。

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