ローレンス研究所、世界3位の処理速度を誇るスパコン「Sierra」公開

アメリカ合衆国エネルギー省が所有するローレンス・リバモア国立研究所は、この度、世界で3番目に処理速度の早いスーパーコンピュータのSierra(シエラ)を公開しました。

– LLNL

125 ペタフロップス の高性能計算システムは、NNSAが実施している核兵器備蓄性能維持計画(Wikipedia参照)の一部としての、模型製作とシミュレーションのために利用されています。
現在、世界で最速のスパコンシステムは米国のサミット スーパーコンピュータ であり、続いて中国のサンウェイハイライト(Sunway Taihulight)が続きます。

高密度化への動きは止まらない

– Randy Wong/LLNL

Sierraシステムは、専有面積7000平方フィート(650㎡)、サーバーラック240台、計算ノード4320台を利用しています。
各ノードは、IBM社のPower9 CPUを2つ、Nvidia社のV100 GPUを4つ搭載し、マルチプロセッサ間での計算を速めるためにメラノックステクノロジーの EDR InfiniBand interconnectとNvidia社のNVLink interconnect機能を装備しています。

データ保管用に、24ラックをストレージ用途に確保しており、IBM®のデータ管理ソフトSpectrum Scaleを154ペタバイト装備しています。
合計で11メガワットにもおよぶこのシステムは、先代のスパコンシステムであるSequoia(セコイア)に比べるとその電力効率は5倍にまで飛躍したとも言われています。

今後Sierraは、Lassenという比較的小容量な スーパーコンピュータ と統合されます。Lassenは、癌細胞治療薬の発見や精神的外傷を与える脳損傷の研究、地震や気候等の研究など、未分類されていない分野に焦点を当てることになります。

IBMの研究者で、コグニティブソリューション部門の上席副社長を務めるJohn Kelly氏は、スーパーコンピュータの新たなる分野は人工知能分野にあると語ります。
「IBMとローレンス・リバモア国立研究所は数十年間にわたって協働しており、SierraなどのAI研究に求められる大規模なデータ処理用の独自設計、アーキテクチャを一から構築することが出来ます。驚異的な洞察力を持つ研究者の取り組みにより、研究・ビジネスへのハイパフォーマンスコンピューティングの応用はより加速します」

Sierraは、NNSAでは初となる、GPUを搭載したスーパーコンピューターシステムとなり、同局でも最大規模のシステムとなります。

著名なIBMの研究者Peter Hofstee氏は、今年の年初にDCDの取材に対して、SummitとSierraのマルチコアプロセッサを利用したヘテロジーニアスコンピューティングへの取り組みは、IBMが2006年頃に東芝・ソニーと協力しながら開発に取り組んだマルチコアプロセッサ「Cellチップ」と似ている部分があると指摘しました。(不運なことに、Cellチップは思うように普及しませんでした)

Nvidia社のVP兼GMを務め、高性能コンピューティングに関わるIan Buck氏は、
「Sierraは、世界クラスの エクサスケールスーパーコンピュータ で、大規模で複雑な科学的シミュレーションを、これまで不可能とされていた規模と速さで行うことを可能とします。TeslaのTensorコアであるV100GPUが17,000以上も搭載されたSierraは、力強く、数値計算科学的シミュレーションの普遍的なプラットフォーム、機械学習、 ディープラーニング 、可視化アプリケーションをひとつに行うことが出来ます。未来の高性能コンピューティングを牽引していくでしょう」
と語りました。

今後Sieeraは、核兵器の寿命延長プログラム(アメリカでは25年程核兵器の開発が行われておらず、プルトニウムなど経年劣化によって引き起こされる事故の防止も一つの課題となっている)武器科学、核抑止のために使われます。
「Sierraの出現により、リバモア研究所は、NNSAへ備蓄管理のための強力な新しいツールを提供しました。このマシンは、これまで以上に科学的な問題に取り組むことができるハイパフォーマンスコンピューティングへの新しいアプローチを表しています」
とLLNLのディレクターであるBill Goldstein氏は述べています。

NNSAのアドバンスト・シミュレーション・コンピューティング・インスティテュート・リサーチアンドディベロップメント担当ディレクター、Mark Anderson氏は、
「NNSAやその前身機関は、第二次世界大戦以来、科学計算の最前線に立ってきました。NNSAが提供するスーパーコンピュータは、核実験を行わない重要な核兵器備蓄性能維持計画を実現します。シエラは、私たちがこれまでに受け入れてきた最も能力の高いコンピュータです。また、将来のコンピューティング技術の先駆者であり、エクサスケールしていく重要なステップでもあります。」

NNSAは、2023年にはリバモア研究所のEL Capitanシステムと統合して更なるエクサスケールを予想しています。その場合、 Sierraは更に10倍近い性能を発揮すると予想されています。

エネルギー省の秘書官を務めるRick Perry氏は、
「今後、数年の間に、ローレンス研究所やArgonne、Oak Ridge(国立研究所)によってさらなるエクサスケールシステムが展開され、この分野での世界的な優位性が何十年にもわたって保証されると期待しています。シエラをはじめ、新しい世代のスーパーコンピュータは、世界の絶対的なゲームチェンジャーになるでしょう。」
と語りました。

– Data Center Dynamics
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