マイクロソフトとWiwynn、二相式液浸冷却の実運用試験を実施
マイクロソフトは、米国ワシントン州クインシーのデータセンターで、 液浸冷却 方式のサーバ導入に関する試験を行こなっています。
この二相式冷却システムは、台湾のサーバメーカーであるWiwynn社と共同で開発したものです。
異なる種類の液浸冷却サーバ
このシステムでは、水よりも90度低い華氏122度の沸点を持つ3M社のエンジニアリング・フルードを使用しています。
この流体は蒸気となり、タンクの蓋の中の冷却されたコンデンサに向かって上昇し、そこで液体に戻り、液浸サーバの上に落下します。この冷却コイルは、流体を使ってタンクの熱をタンクの容器の外側にある乾式冷却器に移動させる別の閉ループシステムに接続されています。
マイクロソフトのデータセンター先行開発チームの主席ハードウェアエンジニアを務めるHusam Alissa氏は、次のように述べています。「二相式液浸冷却を本番環境で運用しているクラウド事業者は当社が初である」
欧米のクラウド事業者としてはマイクロソフトが最初のようですが、アリババは2017年に液浸冷却システムの試験を開始しています。
2019 OCPビデオの中で、シニアエンジニアのYangfan Zhong氏は、同社は過去1年間で大規模な導入を行っており、2021年までに2万台のサーバ規模の第2の液浸冷却データセンターを構築する見込みであると述べています。クラウド事業者以外にも、GRC、Iceotope、Asperitas、Submerなど、単相または二相の液浸冷却の研究や提供をしている企業は数多くあり、3Mの液体を使用しているところもあれば、より安価なもの、または独自の液体を使用しているところもあります。
このアイデアは、コンピュータの黎明期にさかのぼります。初期のスーパーコンピュータの一部はさまざまな液体に浸されていましたが、当時のシステムには空冷で十分であることが判明したことで、人気がなくなりました。
しかし、チップの高密度化や消費電力の増加に伴い、企業らは液浸冷却方式に回帰しつつあります。「空冷では十分ではない」と語るのは、マイクロソフトのデータセンター先進開発グループのVPであり、また著名なエンジニアでもあるChristian Belady氏です。「そのため、チップの表面を直接沸騰させることができる液浸冷却方式を採用した」
マイクロソフトは、非公開の業界パートナーと協力し、液体の損失を軽減する方法でタンクを稼働させる方法の研究を行います。
マイクロソフトは、このプロジェクトを発表したブログ記事の中で、次のように記しています。「マイクロソフトを含むいくつかのテクノロジー企業はコールドプレート技術の実験を行っている 」事実、スーパーコンピュータ業界では、何年も前から数多くの企業が コールドプレート 技術を提供しています。一方GoogleのTPUは冷却にコールドプレートを利用しているようですが、標準的なハイパースケール環境では使用されていません。
マイクロソフトは、データセンターを海中に沈める「Project Natick」のテストで結果で見られたようなハードウェアの信頼性向上を、この「イマージョン・システム」で実現したいと考えています。そうなれば、故障してもすぐに部品を交換する必要がなくなり、水蒸気の損失を抑えることができるだけでなく、サービスが行き届かない遠隔地へのタンク設置も可能になると期待しています。
また、このシステムは、小さなフットプリントで大容量の演算処理を可能にするエッジの導入にも役立つでしょう。
しかしその前に、マイクロソフトは今後数カ月間、単一のタンクを使った試験を行う予定です。
Belady氏はこう話しています。「この最初のステップは、人々にこのコンセプトを心地よく感じてもらい、そして我々が本番のワークロードを実行できることを示すためのものだ」
Data Center Dynamics
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