Y-Combinatorが支援する宇宙核融合発電スタートアップが注目を集める

Zephyr Fusion、 宇宙空間における電力制約という課題に野心的なソリューションを提示

米国ウィスコンシン大学マディソン校の核融合物理学者2名がY-Combinatorの支援を得て立ち上げたZephyr Fusionは、宇宙空間に設置するコンパクトな核融合発電所により軌道上でメガワット規模のエネルギー生産を実現する構想の概略を明らかにしました。

2010年にウィスコンシン大学マディソン校で出会ったGalen Burke(ガレン・バーク)博士とEdward Hinson(エドワード・ヒンソン)博士は、長年共同で核融合実験を続けてきました。両博士は、Zephyr Fusionが小型の宇宙環境対応型反応炉を開発し、核融合によるエネルギーを供給することで、未来の軌道上エコシステムに必要とされる高性能コンピューティングや複雑なロボット工学といった高負荷アプリケーションを稼働させられると確信しています。

「軌道上では核融合が容易になる。宇宙の真空は核融合プラズマに必要な閉じ込め空間を容易に提供し、磁気双極子(magnetic dipole)構成を活用できる」と両博士はY-Combinatorのブログ投稿で説明。「これにより、巨大な原子炉インフラなしで宇宙空間に大規模なプラズマ空間を創出できる」

両氏は、太陽電池パネルの気の毒なほど低いキロワット規模の発電能力を指摘し、その規模拡大には質量とコストの制約があり、大規模な産業活動、データセンター、軌道防衛プラットフォーム、大規模で長期滞在型の人間居住施設といった複雑な想定用途への電力供給には不向きだと説明します。

その仕組みとは?

バークとヒンソンはその提案が野心的だと認めつつも、それは確立された物理学に基づいており、現在では宇宙打ち上げコストの低下によって実現可能になったと述べています。

地上では、プラズマの規模に比例して原子炉を大型化する必要があるため、数十億ドルの開発コストがかかります。宇宙ではこの制約が不要となり、プラズマが自己組織化領域を形成して外部真空に晒されたコイルを包み込む「内側を向いた原子炉」構造により、ハードウェアの設置面積を最小化できるのです。

「 つまり、今日構築可能な軌道上の 1 メートル規模の双極子コイルは、質量とコストのごく一部で、[地球上で開発中の最大の原子力施設] を上回る磁化体積を生成することができる… これはSpaceX Falcon 9 打ち上げロケットに搭載可能なハードウェアで実現できるかもしれない。」

この飛躍は、イーロン・マスクの SpaceX のおかげで、この 10 年間で宇宙打ち上げコストが 10 分の 1 に低下したおかげで可能となりました。

彼らは、「真の宇宙経済」の最後の障壁は電力の制約であると指摘し、宇宙空間での核融合によって、かつて石炭が地球という小さな惑星で重工業の規模拡大を可能にしたのと同じように、惑星外での産業革命が引き起こされると予測しています。

現実の世界では、宇宙ステーションや衛星が電力を必要とするケースはほとんどありませんが、ゴールデン・ドーム構想の将来段階の一部として検討されている軌道上データセンターや軌道上レーザーは、確かに電力を必要とすることになるでしょう。

この記事は海外Data Centre Dynamics発の記事をData Center Cafeが日本向けに抄訳したものです。

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