AWSが量子コンピューティングマネージドサービスBracketを開始
また、シカゴ大学の科学者らも量子コンピューティングにブレークスルーをもたらした
AWSは、量子アルゴリズムをテストするためのフルマネージドサービス「Amazon Braket」の一般提供を開始しました。
Braketでは、開発者は量子アルゴリズムを設計したり、あらかじめ用意されたアルゴリズムのライブラリから選択する事ができます。 AWSによると、Braketは量子アルゴリズムのテストやトラブルシューティングもできるといいます。
ユーザはBraketを使用することで、量子アルゴリズムをシミュレートされた量子コンピュータ上、あるいはD-Wave、IonQ、およびRigettiといったシステムを含むAWSが運用する量子プロセッサのホスト上で実行できます。
新しいタイプのコンピュータのためのツール
量子コンピューティングは、「古典的な」コンピュータでは及ばない計算上の問題を解決する可能性を秘めています、しかしその可能性はGoogleが行った1つの実験以外ではまだ満たされていません。
「量子コンピューティングテクノロジーがより有意義な進歩を遂げつつある中、何千もの顧客が、テクノロジーの可能性を探り、その開発に貢献するために、 量子コンピュータ を実験する方法を求めている」 AWSのテクノロジー部門VPのBill Vass氏は、 このように述べています。
「クラウドは、顧客が量子コンピュータにアクセスし、そのシステムを特定の計算集約的研究(computationally-intensive research)のために古典的な高性能コンピューティングと組み合わせる主な手法となるだろう」
Fidelity Center for Applied Technology(FCAT)、電力会社のEnel、Volkswagen Group、Amgen、ロンドンを拠点とする量子機械学習企業のRahko、ウォータールー大学(カナダ)の量子コンピューティング研究所、量子コンピュータ企業のQu&Coなどが既にBraketを利用しています。
Amazon Braketは現在、米国東部(バージニア州北部)、米国西部(カリフォルニア州北部)、および米国西部(オレゴン州)のAWSリージョンで利用可能で、今後更なる リージョン への展開が計画されています。
すべてを遅くする
量子コンピューティングの問題は、そのキュービットが長い間ずっと、量子状態または「コヒーレント」にならない傾向があることです。1980年代に量子コンピューティングの概念が始まって以来、エンジニアと科学者は、実用的な量子コンピュータを作るためにキュービットを一貫した状態に保つことを試みてきました。
先週、シカゴ大学は科学者のチームが電磁パルスを介して量子状態を拡張する方法を発見したことを発表しました。
科学者のKevin Miao氏、Chris Anderson氏、およびAlexandre Bourassa氏らは、シカゴ大学のPritzker School of Molecular EngineeringのAwschalomラボで量子研究に取り組んでいます。
彼らの論文「Universal coherence protection in a solid-state spin qubit(ソリッド・ステート・スピンキュービットにおけるユニバーサル・コヒーレンス保護)」で、科学者らはパルスが量子システムを以前より10,000倍長くコヒーレントに留まることができる事を発見したとしています。
量子コンピュータは、ノイズ、温度変化、および電磁場に敏感です。つまり、量子コンピュータが動作するには、非常に静かで安定したスペースが必要です。
微調整
博士研究員のKevin Miao氏は、次のように述べています。「原則を理解するのは、周りで大声で叫ぶ人々とメリーゴーランドに座っているようなものだ」
「乗り物が止まっているときは、それを完全に聞くことができるが、高速で回転している場合、ノイズが入り混じってしまう」
科学者らは、ソリッド・ステート・キュービットでその技術をテストしましたが、それは他の多くの量子システムでも機能するはずであると彼らは考えています。
「このアプローチでは、周囲のノイズを排除しようとはしていない。代わりに、システムを「騙し」、ノイズが発生しないと考えさせる」とMiao氏は補足しています。
パルスは、何らかの形の温度変動、物理的振動、および電磁ノイズをほぼ完全に調整することができ、通常それらすべては量子コヒーレンスを破壊します。
これにより、システムは最大22ミリ秒のコヒーレントな状態を維持でき、修正しない場合より4桁ほど高くなり、以前報告された電子スピンシステムよりもはるかに長くなります。
研究の主執筆者であるDavid Awschalom氏は、次のように述べています。「この画期的な成果は、量子科学における研究の刺激的な新たな道の基礎を築きます」
「この発見の幅広い適用可能性と、著しくシンプルな実装により、この堅牢なコヒーレンスは量子工学の多くの側面に影響を与える。これにより、以前は非現実的であると考えられていた新しい研究機会を可能とする。このアプローチは、スケーラビリティへの道筋を作る」とAwschalom氏は補足しています。
研究は、 米国の国防高等研究計画局(DARPA)、空軍研究所 (Air Force Research Laboratory)、海軍研究局(Office of Naval Research)、国立科学財団 (National Science Foundation)、および日本学術振興会から資金提供を受けています。
Data Center Dynamics
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