【特集記事】宙の混雑が始まる
”Amazonが衛星ブロードバンドサービスを発表。しかし、衛星が宇宙に上がるまでに多くのやるべきことがある ”
2019年7月4日 、Amazonが連邦通信委員会( Federal Communications Commission :FCC)に対し、Kuiper Systemと呼ばれるグローバル・ブロードバンド衛星コンステレーション(星座)を構築する為のライセンス申請は、多くの話題を呼び起こしました。しかしまだ計画はスタート地点に過ぎません。
Amazonの最初の衛星が軌道に乗る頃には、最大で4社が同様のサービス開始を計画しています。
たくさんの”スペース”を取る
Kuiper Systemは、高度590キロメートル、610キロメートル、630キロメートルの3つの異なる軌道上の3,236 Ka帯の「衛星艦隊」になります。AmazonのFCCライセンス申請内容によると、それは費用対効果の高い消費者向けおよび企業向けのブロードバンドサービス、IPトランジット、キャリアグレードのイーサネットと ワイヤレスバックホール を提供し、同社の地上の通信インフラを活用して安全、高速かつ低遅延のサービスを顧客に提供します。
サービスは固定の場所と移動体の両方に配信されるため、電車、飛行機、自動車、船舶はすべてKuiperブロードバンドに接続可能なプラットフォームとなります。
どこから見ても、Kuiper SystemはFCC申請からそれを現実に移行するために多くのやるべき事があります。数ヶ月はかかるであろう FCCによる RFスペクトラム の使用ライセンスの確認と承認、3200基を超える衛星を製造可能な業者を探すか、あるいは自社工場で建設をするのか?、そしてその後の衛星の軌道に乗せる準備、更には顧客側機器の製造、衛星ネットワークと世界中の地域間でトラフィックをルーティングするための地上局ゲートウェイ、等々が必要です 。
Kuiperの商用サービスは、Amazonが最初の578基の衛星を軌道に乗せた後に開始され、サービスは当初、北緯39度~北緯56度の間と南緯39度~南緯56度の2つの帯域で利用可能となる予定です。最初のサービスを開始するためには、一発射あたり34基の衛星の打ち上げ、合計で17回の発射を必要とします。仮に毎月打ち上げを行った場合でも、その限られた地域で24時間365日のサービスを提供開始するためには17か月の期間を要します。その後は、世界の大部分をカバーするまで、 追加の打ち上げにより南北に、赤道に向かってカバレッジを拡大していきます。Amazonは北極と南極のカバーについてはパスする判断をしました。
AmazonがFCCのライセンス承認を待っている間にも、2社がすでに本格的に衛星の製造と打ち上げを行っています。OneWeb(※)は今年、6基の本番衛星を軌道に乗せて運用を開始しましたが、SpaceX は既に60基の衛星を打ち上げ、55基の衛星が現在稼働中です。
OneWebは、秋から一度に30基以上の衛星を打ち上げる計画を立てています。SpaceXの創設者兼CEOのElon Musk氏は、米国北部とカナダ向けにサービスを提供する「便利な星座」を作りあげるために、年末までにさらに6回の打ち上げ実施を提案しています。
OneWebもSpaceXも、それぞれのサービスに対してまだ正確な価格を提示していませんが、エンドユーザー側の地上機器のコストに関しては多くの疑問が残っています。Musk氏によると、SpaceXはテストおよび試運転スケジュールの状況に応じて、今年後半または来年初めに一部の事前販売を開始する可能性があると言います。一方、OneWebは秘密にしていませんが、セルラー向け バックホール を提供するために、さまざまな分野の見込み顧客や通信業界に接触し始めています。
OneWebとSpaceXが2020年に衛星ブロードバンドを一部の市場顧客に提供し、2021年には世界中でより一般的に利用できるようになると言っても過言ではありませんが、彼らは長い間優位に立てる訳ではありません。LeoSat(※)は2020年に最初の衛星を打ち上げる予定で、Telesatは2022年に世界規模のサービスを提供する衛星の製造業者を選定する過程にあります。
【ここで国内関連情報を補足】
以前から衛星を使ったインターネットサービスは各社が試みてきました。技術的な問題もいくつかあり一時下火になりましたが、近年の技術革新によって最近再び盛り上がっているようです。
- ソフトバンクはOneWebの筆頭株主です。
- スカパーJSATは2017年5月 LeoSatに投資を発表しました。
- 日本では有名なホリエモンが出資するインターステラテクノロジズ株式会社は、最新Twitter情報によるとMOMO4号機の打ち上げを 2019/7/20(土)11:05〜12:30を予定 しているようですね。ホリエモンは狙ってないとの事ですが、この日は奇しくもアポロ11号の月面着陸からちょうど50年目の記念日です。
2021年後半か2022年初頭までに、Amazonは最初の衛星を打ち上げる準備をするべきです。可能性としては、Kuiper Systemの宇宙船がBlue Origin社のニューグレン・ロケットに搭載され、軌道に送られることです。 ニューグレン の最初の打ち上げは2021年中に行われる予定です。しかし、 ジェフ・ベゾス氏が Amazonを立ち上げ、一方 Blue Originを個人所有しており、上場のAmazonと私有のBlue Originとの間の利益相反問題を解決しなければなりません。
予定されている2024年のKuiperの立ち上げの日までに衛星ブロードバンドの利用顧客は十分いるでしょうか?確かにAmazonはFCC申請でそう言っていますが、衛星ブロードバンドは、Primeビデオの配信から世界中のデータセンターとの通信を補完するテクノロジやツールと見なされています。
Data Center Dynamics
【参考】
アポロ11号
「これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」
アポロ11号は、 1969年7月16日13時32分(UTC)にフロリダ州メリット島にあるケネディ宇宙センターからサターンV型ロケットで打ち上げられ、NASAのアポロ計画の5番目の有人ミッションでした。 ニール・アームストロング船長とバズ・オルドリン月着陸船操縦士の2名のアメリカ人が乗った アポロ月着陸船「イーグル」号 は1969年7月20日20時17分(UTC)に人類初の月面着陸を成功させました。 その後 アームストロング船長は7月21日の2時56分15秒(UTC)に月面に降り立った最初の人物となり、その19分後にオルドリンが続きました。 (Wikipediaより一部引用)
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