香港がAPACで第3の魅力的なデータセンター拠点として浮上~クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド

香港のデータセンター投資市場は、不安定な政情やパンデミックの影響を受けながらも堅調に推移しています。

世界的不動産サービス会社クッシュマン・アンド・ウェイクフィールド社のレポートによると、香港はアジア太平洋地域で第3の魅力的なデータセンター拠点に浮上し、投資家や事業者から大きな注目を集めています。

エクイニクス、PCCW、SUNeVisionなど既存データセンター事業者は、新しいデータセンター施設の建設を続けており、さらにいくつかの新規事業者も加わっています。

5月には、APACに特化した物流資産ポートフォリオ管理会社ESR ケイマン社が新しいデータセンターを開発するために、香港で初めて不動産を購入しました。ESRは、香港の新界で香港島の主要なデータセンター群である葵涌(クワイチョン)に土地を取得しました。

メープルツリー インベストメンツ社は、8億1,300万香港ドルで 粉嶺 の敷地を取得し、2023年までに完成する予定の香港でのローカルデータセンター建設プロジェクトをデビューさせました。同様にGDS社は 葵涌 で初の自社データセンタープロジェクトをキックオフしており、2022年半ばに完成する予定です。

2020年12月、オーストラリアのハイパースケールデータセンター企業AirTrunkは、シンガポールと香港に2つの新しいデータセンターを「世界初」デュアルオープンすることを発表し、APACへの進出を拡大しています。

2021年第1四半期末時点で、香港のデータセンターの総面積は838万平方フィートで、そのうち80%を10社の事業者が占めています。その中には、総床面積で最大のローカル事業者であるSUNeVisionとPCCWの2社が含まれ、市場面積の30%を占めています。地元以外の事業者は合計で約43%を占めています。

既存のデータセンターの需要を支えているのは、金融、銀行、保険、テレコムです。IoT5Gネットワーク、クラウドコンピューティングの利用が拡大し、パンデミック以降、自宅で仕事をすることがニューノーマルになっていることから、クラウドコンピューティングとストレージに対する市場の需要は急速に高まっています。

クッシュマンでは、データセンターの今後の需要は、AWS、Microsoft Azure、Google Cloud、テンセントクラウド、アリババクラウドなどの大手グローバルクラウドサービスプロバイダーが大きく牽引すると予想しています。

同社は2025年末までに416万平方フィートのデータセンターが供給されると予測していますが、建設の速度は上昇を続ける高度な施設への需要を満たすには至っていません。

クッシュマンの香港リサーチ部門責任者であるキース・チャンは、「今後供給されるデータセンターの約86%は、すでにデータセンター事業者によって事前に予約されており、将来の需要に対応できるスペースはごくわずかであることがわかりました。香港では新しいデータセンターを建設するには、通常少なくとも3~4年かかります。そのため、データセンターの供給は中期的にはまだ不足していると予想されます」と述べています。

強力なケーブルインフラ

クッシュマンによれば香港のケーブルインフラはますます強化され、範囲を拡大し、さらにファイバー接続が香港と他の地域の拠点を結ぶようになると言われています。

例えば「アジア・ダイレクト・ケーブル(ADC)」は2022年末までに稼動する予定で、大手通信会社8社が資本とノウハウを提供して、9.400キロメートルのシステムを構築しています。

このケーブルは、香港と日本、フィリピン、中国本土、ベトナム、タイ、シンガポールを結びます。また、来年には、香港と韓国、日本、中国本土、台湾、ベトナム、タイを結ぶ「東南アジア・日本ケーブル2(SJC2)」も開通します。また、チャイナ・モバイルが支援する「海南-香港エクスプレス・ケーブル」は香港と海南、珠海を結び、今年中に運用を開始します。クッシュマンの予想では香港のデータセンター市場は、投資家の関心と合併統合が比較的高いレベルで維持されており、今後も成長が続くとされています。

電力供給と土地の不足

香港のデータセンター開発では、土地の不足と電力供給が問題となる可能性があります。既存の11kVの電力供給ネットワークでは、超大型データセンターのかなりの電力需要を満たすことができません。通常、電力会社が132kVの変圧器で追加の電力供給を行うには約4年かかり、データセンターの運用開始目標日と必要な電力供給の提供との間に18~24ヶ月のギャップが生じます。

クッシュマンは政府と電力会社に対し、今後の香港におけるデータセンター開発のためのインフラを確保するために、電力供給能力の増強と電力供給スケジュールの短縮を早急に検討・調整することを推奨しています。

土地の供給不足は、香港のデータセンター市場の今後の成長にとって重要な課題の一つです。クッシュマン香港のマネージング・ディレクター、ジョン・シウは、データセンター用地の不足に対応するため、政府はグレーターベイエリア向けのデータセンター施設を共同開発するために、 落馬洲ループ にある 香港深圳イノベーションアンドテクノロジーパーク (HSITP)での深圳との協力を検討すべきでは考えています。

「加えて、政府は異なる部門間の調整を効率化し、データセンターの開発や再構築に必要な工事の申請や承認プロセスを加速させるべきです」とシウは付け加えました。

W.Media (Venkatesh G記者)より抄訳・転載

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