Starlink、年末までに利用者2500万を目指す~第2世代衛星でデータ密度100倍へ

Sバンド周波数帯と大型フェーズドアレイアンテナの活用により、宇宙から「地上並みの接続」を提供する計画

SpaceXの幹部は、Starlinkが第1世代のモバイル向けコンステレーションの拡大と、第2世代による5G並みのブロードバンドサービスを提供する計画を背景に、2026年末までにアクティブユーザーが2,500万を超える見込みであると述べています。

「MWC (Mobile World Congress) 2026」の基調講演で登壇した、SpaceXのStarlink担当SVPであるMichael Nicollsは、2024年に開始した同社の携帯電話直結型通信「Mobile」ブランドが、最近1,000万件の加入者数を突破したことを明らかにしました。

Nicollsは、次のように述べました。「サービス開始当時、米国の陸地面積の20%、地球表面全体の90%は地上モバイル通信が未整備でした。Starlink Mobileは、そのギャップを埋めるものです。そして開始から18か月で、第1世代のStarlinkモバイルコンステレーション650基を全面配備し、現在は5大陸で運用しています。地理的なカバレッジでは、私たちは世界最大の4G提供者となっています。」

同氏によると、SpaceXの低軌道(LEO)ブランドは、これまでに1,600万人以上のユニークユーザーに接続を提供してきたとのことです。

しかし、イーロン・マスク率いる同社は、さらなる成長を目指しています。Nicollsは、次世代のStar Link Mobileについて、次のように説明しました。「単なるテキストメッセージやビデオ通話を超えて、未改造の一般的な携帯電話に対してブロードバンドを提供し、衛星コンステレーションの拡大に合わせて何億台、さらにはそれ以上のデバイスまで対応可能になります。」

Starlinkの第2世代(Gen2)コンステレーションは、2027年の打ち上げを予定しており、SpaceXは、「地上ネットワーク並みの接続性」を提供することを目指しています。同氏は、ユーザーが「高性能な5G地上ネットワークに接続しているような感覚で接続できる」ものになると説明しました。

同社は、昨年EchoStarから取得した2GHz〜4GHzのSバンド周波数帯域を、活用する計画です。

スペクトラム効率の向上に加え、Nicollsは、サービス提供開始に向けてSpaceXがデバイスメーカーや、自動車メーカーと緊密に連携していることを明らかにしました。サービスは2027年半ばに予定されている打ち上げ後、できるだけ多くのデバイスで本サービスが利用できるようにしており、「米国内のほとんどのデバイス」で利用可能になる見込みです。

また、NicollsはMWCの会場で、第2世代の衛星は、第1世代の5倍の大きさの大型フェーズドアレイアンテナを搭載し、ビーム当たり4倍の帯域幅を提供するため、第1世代のstarlink システムの20倍のリンク性能を持つと話しました。

「20×20 MHzのビームを使用し、さらにMIMO(Multiple-Input, Multiple-Output)といった新しい機能も活用します。また、衛星とユーザー間のリンク用に設計された5G NR NTN(non-terrestrial network:非地上系ネットワーク)規格を使用することで、特にユーザーが衛星のエッジ(端)にいる場合でも、体験が10倍ほど向上し、最大150Mbpsのダウンロード速度を提供できるようになります。まさに本格的なブロードバンド体験を実現します。」

さらに、Starlinkの第2世代衛星は、第1世代衛星のほぼ100倍のデータ密度を持ち、衛星1基当たりのビーム数が約16倍に増える大型フェーズドアレイアンテナにより、ダウンロードで100Gb㎰超、アップロードで50Gbps超の衛星全体のスループットを実現するとのことです。

「私たちの目標は、6か月以内にグローバルかつ連続したカバレッジを提供できるコンステレーションを展開することで、そのためには約1,200基の衛星が必要です。その後、Starlinkブロードバンドシステムと同様に、容量を増やすためにコンステレーションをさらに拡大し、音声とデータを世界中で提供できるようにします。また、極地を含む真のグローバルカバレッジが可能になります。」

Nicollsは、同社がこの製品を従来の通信を置き換える手段としてではなく、「地上ネットワークを補完する存在」として位置づけていることを強調しました。

「衛星は、地上ネットワークが持つデータ密度には及びません。しかし、地上ネットワークが到達できない場所や、地上ネットワークに追加の容量が必要な場面では、それを補完することができます。たとえば欧州では、大陸上空にテラビット級の容量を確保できます。この容量を活用すれば、地上ネットワークがカバーできない地域、例えば山頂や海上などを補うことができます。」

Starlinkは単に地方のバックホールではなく、人命を守るインフラへ

Starlinkを既存の地上ネットワークを補完する手段として活用できるというNicollsの見解は、SpaceX COOのGwynne Shotwellの発言でも繰り返されました。同氏は、Starlinkが緊急時や災害対応における重要な手段になると強調しました。

2025年初頭にロサンゼルスで発生したパリセーズ火災の際、Starlinkの展開によって40万人以上が接続を維持し、25万件以上のテキストメッセージと150件以上の無線緊急警報を送信できたとのことです。

「この技術は、単にモバイルアプリへアクセスしたり動画をダウンロードするためだけのものではありません。人命救助能力を大きく高めるものでもあります。私たちは7月下旬のカムチャツカ地震の後、そして12月の青森地震でも日本の皆さまにサービスを提供しました。災害が起こると、地上通信は最初に被害を受けることが多いです。そのため、衛星による通信能力は、平常時は補完的な役割ですが、緊急サービスにとっては極めて重要な要素になります。」

SpaceXのCOOは、緊急時や災害時にStarlink Mobileを通じて440万人以上が接続したと述べました。しかし、この技術が特に活用されている緊急事例のひとつが、ウクライナへのロシアの軍事侵攻です。

Starlinkは、侵攻開始当初からウクライナで利用されています。イーロン・マスクが、重要鉱物の取引に応じない限りウクライナのアクセスを遮断すると脅したという報道は否定されています

さらに最近では、Veon傘下のKyivstarが昨年11月に、Starlinkを利用した携帯電話への直接衛星通信サービスを開始しており、Shotwellによると、すでに300万人以上の加入者を獲得したとのことです。

Shotwellは、次のようにコメントしています。「私たちは、120万件以上のテキストメッセージを送りました。ブロードバンドと直接衛星通信によるStarlink Mobileの両方でウクライナの皆さんを支援できていることを嬉しく思います。この非常に困難な時期に、ウクライナ政府との関係を築き、支援できていることを誇りに思います。」

また、モバイルネットワークが米国よりも普及している欧州においても、衛星通信の果たす役割が拡大していると主張しました。SpaceXは、2GHz帯を利用した無線緊急警報の試験運用をバルセロナで実施しており、MWCの来場者が同社ブースでデモ警報を発信できるよう案内しています。

この記事は海外Data Centre Dynamics発の記事をData Center Cafeが日本向けに抄訳したものです。

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