エアバス、NTT、ドコモ、スカパーJSATの4社がHAPSの早期実用化に向けた提携

地上波以外のネットワークにおけるHAPSビジネスケースを各社が検討

エアバス、日本電信電話株式会社(以下、NTT)、株式会社NTTドコモ(以下ドコモ)、スカパーJSAT株式会社(以下、スカパーJSAT)の4社は 、高高度プラットフォーム(High Altitude Platform Station: HAPS)からの接続サービスを共同で検討するために提携します。

HAPSは、飛行船、気球、固定翼ドローンのいずれであっても、セルタワーや衛星の初期費用や専門受信機を導入せずに、地方をはじめこれまで通信が届かなかった地域に接続を提供する方法です。Google/アルファベットの今はなき高高度気球ユニットProject Loonが最も有名な例ですが、多くの企業がこの分野で成功するプラットフォームを開発しようとしています。

上記4社は、将来の宇宙ベースの無線接続エコシステムの一部として、HAPSベースの接続サービスを検討することを視野に入れた覚書に調印しています。

HAPS接続のテスト、実用的なアプリケーションの特定、必要な技術の開発、そして最終的には宇宙ベースの無線ブロードバンドサービス(両社はこのネットワークを宇宙RAN(radio access networks)と呼んでいます)の立ち上げを行う予定で、HAPSベースのネットワークの初期の展開要件を特定しようとするものです。

防衛企業エアバス社は、固定翼の太陽電池式成層圏無人航空システム(UAS) Zephyr (ゼファー)HAPSプラットフォームを開発中です。NTT、ドコモ、衛星会社のスカパーJSATが通信ネットワークを提供します。静止軌道衛星(GEO)、低軌道衛星(LEO)、HAPSを組み合わせた「非地上ネットワーク(NTN)技術」が期待されています。

この覚書の下4社は、HAPSによる成層圏からの通信に焦点を当てた技術に関する研究開発に加えて、HAPSの機体開発やHAPSの運用に向けた標準化・制度化への働きかけ、およびHAPSによるネットワークサービスの商用化に向けたビジネスモデルに関する検討も行います。主な研究開発の対象として、地上の移動機との接続や基地局バックホールなどにHAPSを適用する可能性に関する検討や、HAPSを利用した通信システムにおけるさまざまな周波数帯の通信性能の評価、およびHAPSと衛星および地上基地局との連携に向けた技術的な検討を行い、宇宙RAN事業を促進してまいります。また、今後は衛星・HAPSなどのNTN技術によるネットワーク構築の実証実験を視野に入れた協力体制も構築していく予定です。

イギリスの防衛関連企業Qinetiqは2003年からZephyrプラットフォームを開発し、2013年にエアバスに売却しています。2018年にはアリゾナから Zephyr S が飛行し、25日23時間57分にわたり上空に留まっています。同プラットフォームの翼幅は25メートル、重量は75キログラム。ドコモとエアバスは2021年11月に18日間の Zephyr 試験を実施し、140kmの距離まで様々な速度でデータ通信を実証することができました。また、エアバスはOneWebと欧州での販売契約を締結しています

NTTとスカパーJSATは、これまでにも「宇宙空間におけるICTインフラ」の開発や、宇宙RANで接続された宇宙データセンター「宇宙統合コンピューティングネットワーク」の開発で提携しており、2025年頃に商用サービスを開始する予定です。

同じ日本の通信事業者であるソフトバンクは、近年宇宙への投資を多数行っています。同社はLoonの投資家でしたがその閉鎖に伴い特許の一部を取得し、2017年には米軍用ドローン企業AeroVironmentと共同でHAPSmobileを設立しています。その他にも空を拠点とする多くの企業にわたって投資を行っており、HAPSのほか、低地球軌道LEOと地球同期地球軌道(GEO)の衛星会社、さらにはAerostats(テザー付き飛行船)にも投資しています。

2021年6月、ソフトバンクは上空からの接続ソリューションを提供する独自のNTN(Non-terrestrial Network)サービスを開始しています。



この記事は海外Data Centre Dynamics発の記事をData Center Cafeが日本向けに抄訳したものです。



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