MWC:メタバースに対応したネットワークの充実をMetaが要望

メタは一社ではできない、とザッカーバーグ氏

本日バルセロナで開催されたMobile World Congress(MWC)で、Meta(メタ)CEOのマーク・ザッカーバーグ氏が、メタバースにはスマートヘッドセット以上のものが必要であるとし、より良いネットワークの構築を呼びかけました。

メタ(旧フェイスブック)は、スペインの通信会社テレフォニカと共同でマドリッドに設立する研究センター「メタバース・イノベーション・ハブ」を発表し、通信事業者とパートナー企業がメタバース・アプリケーションに対応していけるような支援を目的としています。本日のMWCでは、フェイスブックがスポンサーを務めるオープンソースグループのTelecom Infra Project(TIP)が、テレフォニカとともにFira Gran Viaカンファレンスセンターでセッションを行い、メタバース・テレコムのためのワーキンググループとプロジェクトの立ち上げを開始すると発表しました。

2月28日に開幕したMWC2022は、主催者のGSMAによれば、パンデミック前の水準に近い来場者になるとのことです。但しロシアパビリオンは急遽中止となりました。

バーチャルワールドの構築にご協力を

フェイスブックの創設者でメタのCEOであるザッカーバーグ氏は、MWC開幕前の声明で、「スマートグラスやVRヘッドセットで提供される仮想世界で真の臨場感を生み出すには、これまでのどの段階的変化よりも大きな接続性に関する進歩が必要だ」と述べました。

没入型の仮想環境を構築し、それをリアルタイムで人々と共有するには、現在広くサポートされていない方法でデータを高速に処理する能力が必要です。ザッカーバーグ氏の声明では、メタバースには迅速に進化できるインフラが必要であり、パートナー企業の強力なしではこれを実現できないと述べています。

テレフォニカとメタが設置したメタバース・イノベーション・ハブは、スタートアップ企業や開発者に対し、5Gラボでのメタバースのテストベッドを提供し、テレフォニカのパートナー企業やリソース、メタのエンジニアリングサポートにアクセスすることができるようになる予定です。

メタのコネクティビティ担当副社長ダン・ラビノビッチ氏は、Tech@Facebookのブログ記事の中で、何が必要かをもう少し詳しく説明しており、メタバースは複数のパートナー企業の共同により構築される必要があり、そのためには開放性と相互運用性が必要であると述べています。

「メタバースへの移行は、コネクティビティ業界にとって前例のない機会だ」とラビノビッチ氏は言います。「これはオープン性と相互運用性の基盤の上に構築され、できるだけ多くの人がアクセスできるようにしなければならない」

さらに彼は、メタバースにはレイテンシー(遅延)、symmetrical bandwidth(シンメトリックな帯域幅)、そして全体的なスピードの進化が必要であると明言し、次のように述べています。「1つの企業、1つの業界だけでこれを実現することはできない。メタバースを作るには、グローバルな取り組みが必要であり、この新しい旅に協力してくれるパートナーを募集している」

インタラクティブな参加者が「そこにいる」ことを体験できるようにするためには、参加者のインタラクションに応じて高速に更新されるグラフィック要素が必要になります。「ビデオ通話やクラウドゲームなど、レイテンシ―に敏感な今日のアプリケーションでは、往復で75~150ミリ秒のレイテンシーが求められ、多人数の複雑なゲームの場合、30ミリ秒以下となる可能性もある。しかし、ヘッドマウント型の複合現実ディスプレイでは、目の位置に応じてグラフィックを画面上にレンダリングする必要があるため、1~2桁msと桁違いに速くする必要がある」

ラビノビッチ氏は、「多くのアバターが登場する複雑なシーンでは、現在のネットワークではダウンロードに数時間かかるかもしれない」と言います。「今後、エッジ・クラウドを利用したリモートレンダリング、あるいはローカルレンダリングとリモートレンダリングのハイブリッドが、より大きな役割を果たすようになると考えている。また、リモートレンダリングを実現するには、固定網とモバイル網の両方を再構築し、エンドユーザーまでのcontinuum of distances(距離の連続体)にコンピュートリソースを作成することが必要になる」

ヘッドセットにはより多くのピクセルが必要なため、メタバースではビデオストリーミングはより高速である必要があります。「標準的なスマートフォンの画面で720pビデオをストリーミングするには1.3~1.6Mbpsのダウンリンクスループットが必要で、腕を伸ばして持つスマートフォンでは、720p解像度で人間の網膜解像度に十分到達する。しかし、目からわずか数センチの距離にあるヘッドマウントディスプレイでは、4Kの解像度を超えて、網膜級の何桁も大きな解像度が必要になるだろう」

しかし、これらの機能には、物理層からリンク品質や輻輳に関する指標にアクセスする必要があるとラビノビッチ氏は言います。

更に、コンテンツ・プロバイダーとネットワーク・オペレーターは、輻輳を回避するためのネットワーク最適化プロトコルで協力していく必要があります。「このようなサイロ化された最適化を超えて、OSI層やネットワーク・ドメイン間でメトリックを共有するオープンインターフェースに向かうことによって、大きな利益を実現する機会があると信じている」と彼は言います。しかしインターネットの自由化の活動家たちは、これがネットワークに対するパワーをアプリケーションに与えられるかどうかに疑問を呈しています。

彼はまた、与えられたネットワークが実際にメタバースのユースケースに対応できるかどうかを判断することができるフレームワークを求めています。「例えば、高度なエンドツーエンド・ネットワークの定義を業界全体で統一するためには、共通の体感品質指標とそれがネットワーク能力の評価に果たす役割を開発し、ネットワークのサービス品質指標とユーザーの体感品質指標との関係を相関させる必要がある」

「メタバースに向けた業界全体の推進によって提起された接続性の課題に関して、特効薬はない」とラビノビッチ氏は言います。「これらの課題を克服するためには、1つの企業、あるいは1つの産業が単独で維持することのできないグローバルな取り組みが必要だ。しかし、何十億もの人々に高速で信頼性の高いインターネットをもたらしたモバイル時代の教訓は、接続性産業が一丸となって世界に貢献するときにどれほど力を発揮できるかを示している」

ラビノビッチ氏は、フェイスブックが2016年に立ち上げたオープンソースの通信ソフトウェアグループ「TIP」のような取り組みで、メタは独自の貢献をしていると言います。メンバーは集まっているものの、同グループは2011年に同様の基盤で設立されたオープンソースのデータセンター・ハードウェア・グループ「Open Compute Project」に比べると、その知名度はかなり低くなっています。

メタはMagmaのようなオープンソースプラットフォームも推進しており、海底ケーブルの敷設に資金を注いでいるとラビノビッチ氏は言います。「欧州とAPACにおける海底ケーブルへの投資は、2025年までに国内総生産を半兆ドル以上増加させる可能性があると本日発表した。APACだけで、これらの取り組みにより、最大370万人の新規雇用が創出される見込みである」

この記事は海外Data Centre Dynamics発の記事をData Center Cafeが日本向けに抄訳したものです。

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