Alphabet Sidewalk Labsによるトロントのスマートシティ構想に、データセンターの廃熱利用を計画
トロントにあるアルファベット子会社のSidewalk Labs( Googleの姉妹会社 )による「都市の中の都市」構想は、データセンターからの廃熱を利用することを目的としておりますが、様々な物議を醸しています。
1,500ページにわたる「インターネットにより構成された街」を構築するという提案書は、公共メディアの利用や個人データ悪用の可能性についての懸念があると、地域メディアからの反対や批判を受けています。
Sidewalkの「Master Innovation and Development Plan」(MIDP)は、市の機関であるWaterfront Torontoによって分析され、2019年末から2020年初頭にかけて、理事会とトロント市議会で投票がおこなわれる予定です。 もしそれが承認されれば、Sidewalkは2021年までの建設を計画しています。
データセンターの排熱利用
このプロジェクトにはまだ克服すべきハードルがあり、批評家のコメント(下記参照)もいくつかありますが、MIDPの中でも特に物議をかもしていない内容の1つは「エネルギー設備と熱の再利用」です。第4章では、建物から少なくとも3種類( 廃熱、地熱、および排水熱の回収 )のクリーンなエネルギー源を組み込んだサーマルグリッドを配置する提案になっています。
「このシステムは、コストの削減に役立つように、産業廃熱(データセンター、地元の製造業、発電所などから排出される熱など)を受け入れるように設計されています。」
提案では、商業ビルのサーバールームからの廃熱の利用を想定しており、Sidewalk Labsは、年間を通して多くの熱を発生すると思われる Quayside (キーサイド地区) 近辺にあるデータセンターの廃熱調査を開始しました。
第2章には、Parliament通り キーサイド地区の Sidewalk Labs社屋のちょうど外側に立つ「商用データセンター」の地図が含まれています。
そこは、エクイニクスのTR2データセンターの場所です。DCDがエクイニクスに確認を取ったところ、そのデータセンターはSidewalkのプロジェクトで利用可能であることがわかりました。
データセンターは 5階建てで、敷地面積23万6000平方フィート、床面積は14万平方フィートです。最大電力容量は16MW、目標 PUE 値は1.2〜1.3のようです。
漏洩した文書
Sidewalk Labs のたくらみは、キーサイドとして知られる12エーカーの未使用のウォーターフロント区画をセンサーを張り巡らせたスマートシティに変貌させようと Waterfront Toronto 社 (=カナダの政府系企業 )と提携を発表した2017年に初めて明らかになりました。
以前のニューヨーク副市長であったDan Doctoroff氏がCEOとして率いるSidewalk Labs社のこのプロジェクトに関して、現在論争が巻き起こっています。 個人データの悪用の可能性についての懸念を感じSidewalkを辞任した元オンタリオ情報保護委員長のAnn Cavoukian氏を含む、このプロジェクトに関する数名のアドバイザー や、プライバシー保護を唱える人たちは、大量のデータ収集を行う事についての懸念を表明しています。
Sidewalkは、独立した データ信託機関がすべてのデータを処理し、同社は個人データの販売や、広告への使用、ユーザーの同意なしに第三者への共有はしないと述べています。また、Sidewalkはデータを匿名化し、決してクラウド上への公開もしないとも約束していますが、 データ信託機関 の方針が同様であるかどうかについては明確にしていません。
一つの大企業が公有地を運営することについての問題を提起する人もいます。今年の初め、The Toronto Starメディアは、漏洩した文書で、同社が密かに350エーカーの敷地にスマートシティを拡張しようとしている計画も明らかにしました。
内部文書では、Sidewalk Labsが固定資産税、開発費、そして本来は市の行政に行くはずの土地の価値の上昇分をも集めようと望んでいたことも明らかになりました。今後、住宅やオフィスが建設された後の総収益は、今後30年間で60億カナダドル(45億米ドル)になるであろうと予測されていました。
Sidewalkは9億カナダドル(6億8,400万米ドル)の投資を予定していますが、連邦、州、市の各政府は、より広い ポート・ランズ エリアを気候変動による洪水から守るために25億カナダドルを投じることを計画しています。 またSidewalk は、この開発は2040年まで更に380億カナダドル(288億米ドル)の 民間の追加投資をもたらすであろうと予測しています。
漏洩した別文書では世論の否定的な認識に関して述べられていました。「否定的な報道にもかかわらず、主要な政府機関、地域社会、そしてウォーターフロントの支持者からは慎重な支持を得ています。世論調査結果は6ヶ月前からほとんど変わっていません。否定的な報道の大部分は、反Googleの元RIM(ブラックベリー)の共同創設者Jim Balsillie氏による反論に根ざしており、 カナダのイノベーター評議会を通じて広められています 。」
2011年にRIMを去り、 Centre for International Governance Innovationという シンクタンクを設立したJim Balsillie氏は、このプロジェクトについて批判的な意見を述べています。
流出した文書は更に続きます「このプロジェクトはトロント人の生活レベルと経済的な利益について、よりポジティブかつ具体的なメリットを強調しているので、ネガティブな話題については答えられません。」
しかし、Sidewalkの努力にもかかわらず、最も重要な Waterfront Toronto からの意見待ちの状態です。
MIDPが公表された後、Waterfront Torontoの理事会会長であるStephen Diamond氏は、計画から遠ざける内容の公開書簡を発表しました。
「初回の MIDP レビューでは、特に環境の持続可能性と経済発展など、私たちが直面する課題を解決する多くのエキサイティングなアイデアを認識しました。 Waterfront Toronto と Sidewalk Labs双方の見解が大きく異なる中で、成功に向けて何が必要か?についての提案がありました」と Diamond 氏は述べています。
それから彼は提案が「 時期尚早」であると、いくつかの懸念を述べています。
- 「Sidewalk Labsは、12エーカーの キーサイド地区よりもはるかに広いIDEA District(=理想郷?)の創設を提案しています。Waterfront TorontoはSidewalk Labsに、IDEA Districtの概念は時期尚早であり、他のエリアに関しての協力を判断をする前に、Waterfront Torontoがまず目的を明確にすべきです。それでも、トロント市の全面的な協調と支援を表明した場合は提案は前に進むでしょう。
- 「Sidewalk Labsは、 キーサイド地区 の主力開発企業になることを提案しています。これはPDA( =Plan Development Agreement: 開発契約計画) では考慮されていません。MIDPを進めるためには、Waterfront Torontoが入札を管理し、Sidewalk Labs とともに公共調達プロセスを業者に開示するようにすべきです。
- 「Sidewalk Labsの提案には、 政府による将来の約束が必要です。 これには、開発前のキーサイド地区への公共交通機関の拡大、 行政機関の新しい役割、規制の変更、および政府からの投資が含まれます。これらは Waterfront Toronto ができる約束でもありません。
- 「Sidewalk Labsは、データ収集、データ使用、およびデジタルガバナンスに関する初期提案をしています。それらが法に準拠しているかどうかを確認し、 またWaterfront Toronto のデジタルガバナンスの原則を尊重するためにはさらなる追加の情報が必要です。」
Waterfront Torontoは、提案の中でも特に公共の利益になると思われるいくつかの提案に関する文書を発表し、地元の意見やアドバイスを歓迎する予定です。
Data Center Dynamics
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