米商務長官、 中国の台湾侵攻は半導体を失い、米国に「深刻かつ即時の不況」をもたらすと警戒

米国商務長官は、台湾の半導体へのアクセスを失うことは、深刻な不況を引き起こし、軍事にも影響を及ぼすと警告しています。

バイデン政権は、国内でのチップ生産に540億ドルを投入するCHIPS法の成立を推進しており、今回の警戒感漂うコメントは、そういった状況の中で発表されました。

ジーナ・ライモンド商務長官はCNBCに次のように語っています。「もし、米国が現在台湾で作られているチップを入手できなくなった場合のシナリオを考えると、それは恐ろしいシナリオである」

「それは、深刻かつ即時の不況に繋がる。軍用設備を生産し自衛することができなくなる。これらはアメリカで作らなければならない。少なくとも十分な数のチップを生産する製造拠点がこの地に必要だ。そうでなければ、他国に依存しすぎてしまうから」

世界で最も先進的な半導体の大半は台湾で開発されており、主に半導体受託製造会社であるTSMCが製造しています。

このため、台湾は世界経済に大きな影響を与え、製造の遅れが世界中の産業に影響を及ぼしています。

台湾と中国本土の政治的緊張を考えると、これはデータセンターセクターを含むあらゆる産業にとって致命的な脆弱性を意味します。

中国は長い間、台湾を独立した州とみなしており、中国の習近平国家主席は昨年、台湾との「統一」を「果たさなければならない」と発言しています。台湾の防空圏に飛来する中国軍のジェット機は過去最高を記録しています。

ロシアがウクライナに侵攻したことで、専門家や政治評論家の間では、中国を煽るかどうかで意見が分かれています。世界の軍隊がウクライナ防衛に参加しなかったという事実から、プーチンの失敗から学ぶことができること、あるいは、決定力のある国との長期にわたる紛争がいかに危険で予測不可能であるかを示すことで、彼らを躊躇させたということです。

中国国際経済交流センターの陳文凌チーフエコノミストは5月の講演で、米国と同盟国がロシアに展開したような制裁を中国に課す場合、中国は「台湾を取り戻さなければならない」「もともと中国のものであったTSMCを押さえるべきだ」と警告しています。

台湾は、半導体産業への影響力が大きいため、この分野でのリーダーシップを防衛手段としてきました。簡単に言えば、世界経済にとって重要な国であればあるほど、他国はその国を侵略されたら困るということです。

今年初め、米陸軍大学校の季刊学術誌「Parameters」に掲載された論文では、台湾が中国からの侵略の知らせを受けてTSMCを含む自国の半導体産業を破壊し、台湾の魅力を低下させ、中国自身の技術的野心をなくす「壊れた巣」政策を採用するよう提案しています。

もちろん、米国はこのような事態を望んでいません。しかし、このような政策を明確に打ち出すことで、侵略を「武力で押さえ込むと魅力がないだけでなく、維持するのにコストがかかる」ことになると主張しているのです。

ライモンド長官のコメントは、アメリカ自身の国内半導体生産が何年も前から減少し、世界の供給量の約半分から現在ではおよそ12%に落ち込み、最先端のチップを台湾や韓国に完全に譲り渡した後のことです。

しかし、軍事生産に関する彼女の発言は、完全に正しいとは言えません。軍用設備は、確かに台湾から来る可能性のある先進的な商用オフザシェルフ(commercial off-the-shelf、COTS:コッツ)チップ、特にFPGAの利用が増えていますが、国防総省(DoD)は、過度の依存を避けるために特定のプログラムを持っています。

DoDのTrusted Foundry Programは、世界最大の軍隊に供給するために、審査を受け、一定のセキュリティレベルに達している国内メーカーのネットワークを維持しています。BAE、ジェネラル・ダイナミクス、ロッキード・マーチンなどの大手軍需企業は、米国内に独自のチップファウンドリーを維持し、米国製兵器を供給しています。

しかし、ライモンド長官は、米国内での半導体生産を増やすことを目的としたCHIPS法の推進に協力しており、そのようなニュアンスはカバーされていません。

この法律は、民主党の法案の多くと同様に、何度も延期と手直しが繰り返されてきました。中国や気候変動に対応するための科学技術に資金を投入しないよう切り詰めた結果、今週初めに上院を通過しましたが、まだ議会を通過する必要がある段階です。

この記事は海外Data Centre Dynamics発の記事をData Center Cafeが日本向けに抄訳したものです。

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