月面インターネットの構築【特集】

NASAの月面基地「LunaNet」は、太陽系の他の場所にインターネットを導入するための第一歩となるだろう

月がオンラインになる時が来ました。NASAは、月面インターネットを構築するという野心的なプロジェクトに着手しています。これは月の裏側を開放し、人類が居住するための基盤を作り、そして火星での文明構築に繋げるための準備をするものです。

月面での技術の運用方法は多くはありませんが、しかし、私たちが持っているわずかな情報は、地球との直接のコミュニケーションによって保たれています。NASAの探査・宇宙通信プロジェクト部門のアーキテクト、デビッド・イスラエル氏はDCDに対しこう話しています。「これまでのところ、月の情報はすべて地球との直接通信であった」

ダークサイド・オブ・ザ・ムーン(月の裏側)

2019年に人類初の月の裏側への軟着陸を果たした中国の「嫦娥4号」と、それに続く昨年の探査活動は、いずれも「鵲橋(じゃっきょう、Queqiao)中継衛星」を使って偉業が成し遂げられました。「しかし、私たちのミッションでは、今のところ中継能力は持っていない」とイスラエル氏は言います。

これは、アメリカが、決して地球に向くことはない月の裏側を探査しようとする場合の問題となります。地球に面している側でさえ、クレーターや渓谷が直接のLine of Sight(LOS:無線通信で送信機と受信機間を結ぶ直線距離) を妨げ、あらゆるミッションやすべての機器に個別に地球との直接接続機能を持たせる必要があり、そのスコープや野心が制限されてしまうのです。

新たなミッションが計画されている以上、私たちに最も身近な月面で人々や機器が通信するためのインフラが必要であることは明らかです。50年近くも放置していたアメリカが、大々的に月に戻る計画を立てています。

アルテミス計画は、すべてが計画通りに進み、バイデン政権が何も変更を行わなければ、2024年に最初に女性、そして次に男性を月に連れて行きます。10年後までにNASAは、有人の月面基地を視野に入れ、惑星の衛星上で持続可能(サスティナブル)なオペレーションを確立したいと考えています。

これらを実現するためには、月の表裏両面に数多くの探査機やセンサー、探査プロジェクトを配備する必要がありますが、すべてのシステムに地球との直接通信をさせることはできません。そのために必要なのが「LunaNet」となります。

「LunaNetとは、インターネットを置き換えたようなもので、それを意識して作られている」プロジェクトを率いるイスラエル氏はこのように説明しています。

計画では、月科学衛星、月探査衛星、月面移動・定置システム、月と地球の周回衛星が相互接続されたネットワーク全体を展開し、月面システム、月面での上下降ヴィークル、そして関係する地球の地上局やコントロールセンターに中継やPNT(測位・航法・計時)サービスを提供することになっています。

「リレーが設置されると、月の南極や月の裏側までネットワークで接続できるようになる」とイスラエル氏は説明し、2024年にはこの2つの地域を訪れる予定だと言います。同様に重要なのがPNTで、月面での人によるナビゲーションや自律システムにはGPSのような技術が不可欠です。

もちろん、私たちから約38万kmも離れた場所に何かを設置するには莫大な費用がかかるため、LunaNetの中核となるのは、モジュール式に拡張し、必要なときに必要な場所に接続できるようにすることです。

「例えて言うなら、モバイル通信が始まったばかりの頃は、都市部にいれば電話が通じたが、田舎に行くと圏外になってしまっていた。新しい携帯電話を買う必要はなく、ただ基地局を設置するだけでよかったのです。つまり、LunaNetの構築は、モバイル通信やインターネットの構築と非常によく似ているのです」

米軍の研究室から生まれ、国際的な取り組みに発展した地上のインターネットのように、LunaNetは共同作業を目的としています。規格については、あらゆる主要宇宙機関が参加しているIOAG(Interagency Operations Advisory Group)とCCSDS(Consultative Committee for Space Data Systems)の既存の取り組みを基に策定されています。

「LunaNetには、さまざまなタイプのプロバイダーが参加することになるだろう」とイスラエル氏は説明しています。「国際的なパートナー、商業的なパートナー、NASA関連、欧州宇宙機関関連など、すべてはLunaNetサービスを提供する大規模なインフラの一部となり、より大きなLunaNetを構築することができるのです」

イスラエル氏は、LunaNetのサービスプロバイダーと技術プロバイダーが多ければ多いほど良いと考えています。「月に行く人たちがこの会社のシステムを買わなければならなくなるような、独占的な商業的プロバイダーにならないようにしなければならない」

NASAは調達文書の中で、「LunaNetは、サービスプロバイダーとサービスユーザー間の相互運用性を実現するために、標準規格と規約に依存している。そのため、LunaNetを所有する組織は存在しない。LunaNetコミュニティには、政府機関、商業団体、学術団体が含まれており、最終的には個人も含まれる可能性がある」と述べています。

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