人気ゲーム企業EA社、クラウドゲーム配信プロジェクトを発表
数々の人気ビデオゲームを開発してきたElectronic Arts社は、 クラウド 上でのゲームプラットフォーム構築の動きを加速させていくようです。
今後、ゲームのプレーヤー達は、最小のハードウェアで、ビデオゲームをストリーミングすることができるようになります。
多少の遅延やバッファリングであれば許容されるビデオストリーミングとは異なり、ビデオゲームでは、上りでも下りでも非常に低い レイテンシ (遅延時間)が求められます。FIFAシリーズ、Battlefield、Need for Speed、Simsなどのゲームを開発したEAは、同社で進める「Project Atlas」がこの難題を乗り越えられると信じています。
Project Atlasのストリーミング
EAでCTOを務めるKen Moss氏はブログの中で、
「私たちがクラウドゲームについて語る場合、それはゲーマーのPCや携帯などのハードウェアではなく、我々EAが保有するサーバ内にあるゲームを指します。ゲーマーは、ゲームが実行されているEAのサーバーにアクセスできる端末(PCや携帯など)を手に入れるだけで、好きなゲームをプレーできます。私達は、遠隔からの制御、ダイナミックなソーシャルプラットフォームとクロスプラットフォームのプレイの可能性をさらに広げることができるソフトウェアを開発しています。」と語りました。
クラウドゲームという概念自体は、別に目新しいものではありません。
クラウドゲーム会社「OnLive社」は、5つの コロケーション データセンターからクラウドゲームを提供するサービスを2003年に開始されましたが、最終的には、2015年に倒産を宣言しました。その資産はソニーへと買収され、同じくソニーによって3.8億ドルで買収されたゲームプラットフォームのライバル会社Gaikaiへと統合され、PlayStation Nowの開発へ使用されました。
ゲームプラットフォームへの取り組みは様々な企業で進んでいます。
今月初め、Googleは似たようなプラットフォームを開発する計画を考えており、またMicrosoftも、同社のプラットフォームはXboxなどへ接続されたサーバーラックで構成されているxCloud上で稼働していることを明らかにしました。
また、Nvidiaは、商用クラウドゲームサービスのGeForce Nowを提供していますが、フランスのクラウドゲームスタートアップのBladeは、Equinixのデータセンターを利用して「シャドウ」サービスを提供しています。
これらのアプローチはそれぞれ、「一人のゲームプレーヤー」を「単一のサーバー上」の「単一システム」へと接続しています。しかし、Project Atlasでは、EAは違う方法を採用しています。
「以前は、ゲーム内のアクションのシミュレーションやレンダリングは、プレイヤーのコンソールや、PCの処理性能、またはシステムとやりとりする単一のサーバー機能に制限されていました。
しかし、クラウドを利用することでプレイヤーは多くのサーバのネットワークに接続することができ、複雑なタスクにも対処し、自社のデバイスと連携して、HDゲーム内で現実とほとんど区別できないくらいの、とてもリアルな革命を実現します。私たちは、あらゆるデバイスで、このレベルでゲームができる環境を普及させていくつもりです。サービスをクラウドから配信できることで、単一のコンピューティングデバイスの処理能力という制約を無視することができます。」
とMoss氏は述べています。
Moss氏は、同社が人工知能システムの利用を非常に高いでレベルで検討しながら、クラウドベースのゲーム開発プラットフォームを構築していると主張しています。
「Project Atlasは、EAのFrostbiteゲームエンジンとゲームサービスだけでなく、人工知能をシームレスに統合し、クラウド対応の世界向けに最適化された新しいゲーム開発プラットフォームを生み出すように設計されています。」
同社がこの目標にどれだけ近づいているかは不明瞭ですが、現在、およそ1,000人の従業員がプロジェクトに取り組んでいるとMoss氏は説明しました。このシステムの導入先は不明ですが、求人リストには「AWS、Azure、Googleのクラウドプロバイダーの経験」が記載されています。
今年の初め、AWSでテクニカルエバンジェリストを務めるIan Massingham氏は、DCDの取材に対して、
「EA社は、機械学習を上手に利用しながら自社のAWS EC2リソースを管理しているため、新しいゲームを発表した場合にも、十分な能力を確保し対応することが出来ます。」と述べました。
しかしながら、ゲームプレイヤーは、企業が配信するゲームが少しでも使いづらい(遅延する)ことには慣れていないことを指摘しておく必要があるでしょう。オンラインゲームをローンチした際、なかなかゲームが起動しなかったり、落ちたりすることはよくあります。
おそらくもっと極端な場合は、EAの2013年発売のSim Cityでしょう。
ほとんどのプレイヤーの経験に反して、このゲームを使用するには常にインターネットへ接続された環境が必要でした。しかし、EAのサーバーが数日間クラッシュし、復旧後もデータが完全に再生できなくなったため、1000人以上の怒りくるうゲーマーによってAmazonに「1つ星」のレビューが残されました。
最近の例は、ポケモン・ゴーです。これは携帯電話を利用した拡張現実の大ヒット例でしたが、スマートフォンを利用するプレイヤーが最も近い公園に殺到するようになりました。また、かつての大ヒットに頼って、単純に AR 要素(オンライン)に頼ってしまったことも問題でした。ゲームはすぐにダウンしてしまい、開発元のNianticは、このゲームが許容可能なプロビジョニングされた容量を超えてしまったと説明しました。
– Data Center Dynamics
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