
AI活用が加速、データセンターの約3分の1がトレーニング・推論を実施中
Uptime Institute 年次調査結果より
Uptime Instituteの2025年年次グローバルデータセンター調査によると、データセンターの所有者および運営者の約3分の1が、AIのトレーニングや推論のワークロードを一部実行していることが分かりました。
報告書では、現在AIワークロードを運用している企業は「初期段階で慎重な姿勢」であるとしながらも、今後さらに多くの企業がAI導入に踏み切る見込みであると述べられています。
この調査は、2025年4月から5月にかけて、800人以上のデータセンター所有者・運営者からの回答をもとに作成されました。回答者のうち43%はヨーロッパおよび北米に拠点を置いています。
調査結果によると、運営者や所有者が最も懸念しているのはコストで、38%が「非常に懸念している」と回答しています。次いで、将来のデータセンター容量の予測(36%)、エネルギー効率の改善、電力の確保が続きます。
ラックの電力密度は上昇傾向にありますが、ほとんどが10〜30kWの範囲にとどまっており、30kWを超えるケースは少なく、極端な密度はまだ稀です。
一方、PUE(電力使用効率)は比較的横ばいで、2025年の平均で1.54となっており、6年連続でほぼ変化がない状態が続いています。
一方で、ITの成長に対して「重大な障害」の発生率は減少傾向にあります。報告書では、障害の報道が増えているのは性能の悪化ではなく、デジタルインフラの可視性と日常生活における重要性が高まっていることの反映だとしています。
発生した障害の45%は電力関連ですが、これは2024年の54%から減少しています。これは、電力の冗長化への投資や、分散型・ソフトウェアベースの回復力アーキテクチャの進展が効果を発揮し始めている可能性を示しています。
別の調査では、電力障害の主な原因はUPS(無停電電源装置)の故障であり、次いで電源スイッチや発電機の不具合が挙げられています。
クラウドとオンプレミスの利用状況については、現在約55%のワークロードが何らかの形でオフプレミス(クラウドなど)でホストされており、残りの45%はオンプレミスのデータセンターに残っています。この割合は2027年までに58%に増加すると予測されています。
人材確保も依然として課題となっており、約半数の運営者が空きポジションに適任者を見つけるのが困難だと回答しています。また、約37%が人材の定着に苦労しているとしています。
Uptime Instituteの調査部門エグゼクティブディレクターであるAndy Lawrenceは、次のように述べています。「運営者は、複数の大きな戦略的課題に同時に取り組まなければならない状況にあります。これには、技術の変化への対応、電力供給の制約がある中での拡張計画、そして予測困難なAIワークロードへの対応が含まれます。こうした時期には、上級レベルの経験が非常に重要ですが、今回初めて、若手よりもシニア人材の採用・定着に苦労しているという結果が出ました。多くの経験豊富なリーダーが退職する中、新たな成長フェーズが始まろうとしています。」
報告書のその他の調査結果として、サステナビリティ(持続可能性)に関する報告が後退していることが挙げられています。これは、AIを支えるための商業的な圧力や、一部地域での規制緩和が原因とされています。
データセンター運営者によるAI活用のメリットとしては、施設効率の向上(58%)、人的ミスのリスク低減(51%)、スタッフの生産性向上(48%)が挙げられています。
この記事は海外Data Centre Dynamics発の記事をData Center Cafeが日本向けに抄訳したものです。
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