世界のデータセンターの再エネ対応状況まとめ【特集】

Amazon Web Service

Amazonは、2014年時点で、自社データセンターの電力を100% 再生可能エネルギー で供給すると宣言していました。しかし実態はそうではないようです。

【参考】環境保護団体Greenpeace「AWSは再生可能エネルギー利用に消極的」と批判

今年の7月に同社は、オーストラリア政府の CER(クリーンエネルギー規制当局) に対し、2017~18会計年度のデータセンター の温室効果ガス 排出量とエネルギーデータを公表しないと申請しました。 ちなみに、このデータにはEquinixの名前も記されていないようです。

AWSの再生可能エネルギーに関する最新の取り組みとしては、今月アイルランドのコーク風力発電所(年間発電量:68,000MWh)と、米国バージニア州の太陽光発電所( 年間発電量:100,000 MWh )への資金供給が上げられます。来年2020年にそれらの設備が稼働を開始した後に、 PPA (電力購入契約)を通じて、AWSデータセンターに電力を供給する予定のようです。

Amazonは2020年までには、全世界66か所のサイトで合計1,342MWの電力を発電し、年間3,900万MWh以上のエネルギーを供給することができると言っています。ただ、2014年に「全世界の施設運営の電力を100%再生可能エネルギーにする」と宣言していたにも関わらず、 今年の初めに環境保護団体のGreenpeaceから出された報告書によると、例えば米バージニア州における同社の再生可能エネルギーの利用率は、わずか12%しか達成できていないと指摘されています。

Gizmodoによると、 Amazonは再生可能エネルギーに対する投資の減速と同時に、AWSの顧客である大規模な石油・ガス会社のプロジェクト参加への注力を増しているようです。

日本国内の動き

日本政府は、2011年の東日本大震災を受け、2012年に「固定価格買い取り制度(FIT)」を導入しました。これは太陽光や風力発電といった再生可能エネルギー事業者がつくった電気を政府が買い取る制度であり、国内における再生可能エネルギーの普及を目指すのを目的としていました。

この狙いは効果を上げ、 2012年の約10%から順調に増え、2014年12.1%、2015年13.8%、2016年14.7%、2017年16.4%、2018年17.4%と右肩上がりで再生可能エネルギー比率は伸びていきました。特に参入が容易な太陽光に事業者が集中し、他の再エネがほぼ横ばいの中で、2014年の1.9%から2018年は6.5%に急増しました。

国内データセンター事業者の再生可能エネルギーを活用した取り組みとして代表的な例としては、京セラコミュニケーションシステム(KCCS)が北海道石狩市に計画している同社の次期データセンターが有名です。同施設は、 2021年の稼働開始が予定されていますが、風力、太陽光およびバイオマスによる100%再生可能エネルギーのみで稼働できるようになるのは2022年頃になる予定のようです。

【参考】京セラ、雪氷冷房&再エネ技術を利用したデータセンター建設

さくらインターネットの石狩データセンターでは、独自の太陽光発電所を開設し、補助的に再エネを活用しています。

また、少し変わった取り組みではありますが、 青森県六ケ所村の青い森クラウドベースや、データドックが新潟・長岡データセンターで運用中の雪氷冷却設備も再生可能エネルギー活用の一例でしょう。

グローバルに展開する富士通においては、 国際的なイニシアチブ RE100 に 参加し、国内外において2050年までにこの指標を達成することを目標に掲げています。中間目標は2030年までの40%達成ですが、いずれにしても、現在のわずか7%利用からの増加を図ろうとしています。

【参考】富士通がRE100に参加、2050年までに再生可能エネルギーの100%利用を約束

このように日本国内のデータセンターでも、まだ事例としては決して多くないものの徐々に再エネへの取り組みが進みつつあるようです。

ただ、一方で大きな問題があります。FIT制度での買取費用は「賦課金」として各家庭や企業などの電気料金に上乗せして回収され、国民負担の増大を招いており、それはもはや限界と認識されています。

また、急速な再エネ発電所施設の構築の送電線などのインフラが追い付かないという問題もあり、経済産業省は、同制度の段階的な縮小をしているのが現状です。そして、今後は経産省の有識者会議で検討され、早ければ2020年の通常国会に関連法の改正案を提出するような話となっているようです。

[※ 尚、急激な太陽光発電の普及に伴い、太陽光発電設備の倒壊や飛散といった事故件数は増加し問題となっています。]

このような状況であるにもかかわらず、日本国内の再生可能エネルギー比率は他の再エネ先進国と比べて 依然として低い水準です。 日本政府としては「エネルギー基本計画」 を掲げ、 2030年度の再生可能エネルギー導入比率の目標値を22~24%としており、引き続き事業者に対して再生可能エネルギーの積極的な活用を推奨していますが、様々な難題に直面しているのが現状です。

まとめ

このように、世界各国では、様々な再生可能エネルギーへの取り組みが行わており、2030年頃には、各企業や各国の 再エネ比率が目標値と同等かそれ以上の達成率を実現できていることを期待するばかりです。 Bloombergによると、2050年までには 世界電力の50%は 太陽光発電が占めるとの予測もあります。 ただ、再生可能エネルギー対応可能施設にする為の投資には多大なコストがかかることもあり、普及を加速させるには、補助金制度や法整備など政府の全面的なバックアップがどうしても必要となるでしょう。

しかしながら日本国内の現状は冒頭で述べた通りです。政府には「再生可能エネルギー」だけの取り組みを考えるのではなく、あらゆる制度のバランスを上手く調整していく、難しいハンドリングが求められます。

もちろんデータセンター事業者側も、海外での先進的な事例を参考にしつつ、より高い環境意識を持ち、積極的な再生可能エネルギーへの取り組みの検討を始めるべきではないでしょうか?


記事編集:DC ASIA 岩崎和幸 (一部原文:Data Center Dynamics記事を引用・翻訳)

【参考にした文献】

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