データセンターでの再エネ利用増加への道筋【特集】

【原文著者】Emiliano Cevenini氏 / Vertiv Europe, Middle East and Africa (EMEA) / vice president commercial and industrial vertical

データセンター業界は、効率の改善において著しい進歩を遂げています。国際エネルギー機関(IEA)がまとめた統計によると、ワークロードとインターネットトラフィックが劇的に増加したにもかかわらず、データセンターにおけるエネルギー消費量は過去3年間横ばいであったということです。

これらの努力にもかかわらず、データセンター業界は依然としてエネルギーの重要な消費者であり、世界の電力消費の約1%を占めています。ワークロードは今後も増加の一途であるため、この業界のエネルギー消費の動向は今後も注目され続けると思われます。

再生可能エネルギーが必要

簡単に実現可能な効率化についてはすでに達成されており、効率の向上を継続的な成長の中で維持し続けるのは難しいでしょう。考えられる解決策の1つは、 再生可能エネルギー 源の利用を増やすことであり、この点においては業界の専門家の間でかなりの楽観的な見方があります。

Vertivの2019 Data Center 2025調査では、800人以上の業界の専門家に対し、2025年の世界のデータセンターにおいて、さまざまな電源から供給されるエネルギーの割合の予測値を尋ねました。調査結果では、データセンターの電力全体の13%は太陽光から、8%が風力から供給されるだろうとの予測でした。データセンターの総電力5 kWh毎に約1kWhがこれら2つの再生可能エネルギー源から供給される計算です。エネルギー源に関する予測は、いくつかの例外を除き、各地域でもかなり一致しています。南米地域では、太陽光への期待が他の地域よりも高い(17%)結果でした。南米は水力発電についても高く、2025年にデータセンターの電力の29%は水力発電により供給されるだろうという予測をしています。北米の水力に関する予測値は13%と遠くかけ離れています。

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南米からの回答を平均すると、 2025年にはデータセンターの電力の56%が太陽光、風力、水力の3つの再生可能エネルギー源から供給されるだろうとの予想結果となりました。北米は34%で、再生可能エネルギーの活用に対する予測値が最も低かったのは31%のAPACでした。

これらの予測に対し、現在の状況を正確に把握することは困難ですが、僅かではあるが、達成するペースにあると主張する人はいます。風力および太陽光発電技術は近年、より効率的かつコスト競争力を高めてきていますが、それらの本質は断続性の性質を持ち、今日のデータセンターが要求する常時稼働や高電力要件とは一致しません。これらのソースがデータセンターに必要な容量と可用性を提供するには、グリッドを統合する必要があります。直近の2つの傾向は、それがどのように起こっているかを示しています。

より多くのマイクログリッドを

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マイクログリッド は、再生可能エネルギーをデータセンターに統合するうえでの実行可能な戦略であり、勢いを増してきているようです。2Q19 Navigant Microgrid Tracker(マイクログリッド導入の追跡調査)によると、2019年の第2四半期に575件の新たなマイクログリッドが計画あるいは設置され、APAC地域がマイクログリッド容量のグローバルリーダーとして浮上し、続いて北米、中東、アフリカが続くとレポートしています。

データセンターアプリケーションでは、これらのグリッド間接続、オンサイトエネルギー生成あるいは貯蔵プラントが、ピーク電力需要を抑制することでエネルギーコストの制御を強化します。これは、持続可能性の目標を超える強力な価値提案となります。

その役割は需要のピークを相殺することであるため、データセンターはマイクログリッドに完全に依存することはなく、太陽光などの再生可能エネルギーは魅力的なマイクログリッドの選択肢となります。データセンターの電力の大部分を占めることはないかもしれませんが、太陽光マイクログリッドの継続的な成長は、データセンターにおける再生可能エネルギーの利用増加に貢献できます。

PPAの力

データセンター事業者は、開発やグリッド接続された太陽光発電や風力発電の可用性を高める為に、電力利用を柔軟化していく余地がまだ大いにあります。これは、電力購入契約( PPA )の使用を通じて実行されます。

再生可能エネルギーのクリーンエネルギー属性を表すが直接的なエネルギー購入ではない再生可能エネルギークレジット(REC)とは異なり、PPAでは、可能な場合、事業者はバンドルされたRECと共に送電されるクリーンな電力を購入できます。

PPAは、大規模なハイパースケーラーやコロケーション事業者にとって好まれる手法となりました。これら事業者らは、しばしば、顧客から来るクリーンエネルギーの需要に駆り立てられ、野心的なクリーンエネルギー目標を達成するためのタイムラインを加速します。グリッド接続された再生可能エネルギー源が利用できない場合、大規模なデベロッパーは、可能な限りそれを利用可能とするために、公益事業会社と協力しあいます。結果として、PPAは、再生可能エネルギー消費増加のための最良の手段であるだけでなく、グリッドスケールで再生可能エネルギー源の新規開発を促すのに役立ちます。

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PPAはグリッド上での再生可能エネルギーの割合が増加するにつれて必要性は低くなりますが、100%の再生可能電力利用をコミットする組織や個々の施設では、可用性の避けられないギャップを補うために長期的に使用され続けられ、同時にこれらのギャップを埋めるのに役立つ開発が推進されていきます。

大規模なデータセンター事業者は、クリーンエネルギーへの取り組みとデータセンターの総キャパシティ容量の増加の面で業界をリードしており、PPAは業界内で利用される再生可能エネルギーの割合に大きな影響を与える可能性があります。効率の改善を推進し続けつつ再生可能資源を最大限利用することにコミットし続けることにより、業界は電力利用における責任あるリーダーとなっていくでしょう。

Data Center Dynamics

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