マイクロソフトの687億ドルのActivision Blizzard買収はGoogle Cloudとの契約を視野に

過去最大の買収で問題を抱えるゲームソフトメーカーを手中に

マイクロソフトは、Call of Duty、World of Warcraft、Diablo、Overwatch、Candy Crushなどのビデオゲームフランチャイズを展開するActivision Blizzard(アクティビジョン・ブリザード社)を買収すると発表しました。

この687億ドルの買収は、本来はマイクロソフトのXbox Game Pass事業の強化に重点を置いていますが、一方で同社は通常、買収した企業を自社のプラットフォームに移行させるため、クラウド部門にも影響を与えると見られています。マイクロソフトは2014年にMinecraftの開発元であるMojang Studiosを25億ドルで買収した際、同社を競合するAmazon Web Services(AWS)から徐々に移行を始め、2020年に移行を完了させています。

Activision BlizzardのMicrosoft Azureへの移行は、コストを下げ、顧客を獲得しやすくし、そして競合から顧客を引き離せることを考えると、十分に可能性があります。

さらに、クラウドゲーミングの台頭により、XboxのプレイヤーはいずれMicrosoftのデータセンター内のXboxサーバーでActivisionのゲームをプレイすることになるため、周辺のインフラを同じ施設に移すことでレイテンシを低くすることができます。

このように考えると、Activisionのデータセンターのフットプリントはどうなっているのでしょうか。

ActivisionのITインフラは、数十年にわたり運営されてきた複数の事業の集合体であり、開発者ごとに異なるプロバイダーと連携し、それぞれのニーズに応えているため、やや無秩序な状態になっています。

文化的現象であるWorld of Warcraftは、AT&Tのデータセンター10カ所からホスティングされて数年を過ごし、2019年にEvoque Data Center Solutionsに売却されました。2020年4月には、Amazon Web ServicesのIPアドレスがWoWのロビーに表示されていることに気づいたユーザーもいましたが、提携が正式に発表されたことはありません。

他のゲームも同様に、データセンターに特定の専用サーバーを設けていましたが、急激に人気が出ても拡張することが難しく、ユーザーが実際にプレイしたいタイミングでゲームがオフラインになってしまうことがありました。

2020年、同社はクラウドへの移行を発表しました。同社はGoogle Cloud を優先的なクラウドプロバイダーとして選択し、Googleは、YouTube で同社の esports リーグとイベントを独占的に配信するために、3 年間で 1 億 6,000 万ドルをゲームパブリッシャーであるActivisionに支払うという契約を締結しました。

「ゲーム業界の次世代イノベーションを推進する上で、Googleとの提携を嬉しく思う。Google Cloud のクラス最高のインフラストラクチャは、世界中のファンに素晴らしいエンターテイメントを提供する自信を与えてくれる」Activision Blizzard の最高情報責任者である Jacques Erasmus 氏は当時このように述べていました。

同年、Activisionは環境報告書の中で、米国内のデータセンターの統合を発表しており、それはおそらくこれらのワークロードをクラウドに移行するためであったと思われます。また、既存のコロケーション契約については、電力使用効率(PUE)および水使用効率(WUE)の指標の収集を開始したと述べていました。

プロバイダーとの提携は、実際の作業が始まる何年も前に発表されることが多いため、Activisionがどれだけ早くクラウドに移行したかについては不明です。

しかし、その後 Google Cloud の障害により、Activision ゲームの多くがダウンしましたが、これは(クラウド移行の)進展があったことを示唆しています。Google が公開したクラウドゲームインフラの概要では、Call of Duty、Overwatch、Dota 2、World of Warcraft など複数の Activision ゲームが、他のゲーム開発者向けの売り込みの一環として強調されています。

また、キャンディークラッシュなどのゲームを開発するKingは、2018年からGoogle Cloudの顧客となっています。

Google Cloudのゲーム部門責任者であるSunil Rayan氏は2020年に、「我々は過去数年間、モバイルタイトルにおいてActivision Blizzardと密接に協力しあい、その分析能力と全体的なプレイヤー体験を高めてきた」と述べていました。

「私たちは今、私たちの関係性を強化し、世界最大かつ最も有名なゲーム開発企業の1社を支援していくことに興奮している」

2023年度に予定されているマイクロソフトによる買収が完了後、この「複数年」契約が更新されることはないと思われます。

この買収は、Activision Blizzardに対する数カ月にわたるセクハラ被害の訴えの後に発表されました。同社は昨年7月、「恒常的なセクハラ」の文化を促進したとしてカリフォルニア州公正雇用住宅局から訴えられ、9月には米雇用機会均等委員会と1800万ドルの和解に至っています。

この記事は海外Data Centre Dynamics発の記事をData Center Cafeが日本向けに抄訳したものです。

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