電力効率は5Gの要求に適応する必要がある【特集】

5Gは実際に何を提供する?

5Gの設計では、モバイルコミュニケーション・エコシステム全体でエネルギー効率の革命を約束する、ほぼユートピア的なテクノロジーを規定していますが、実際にテクノロジーが導入された場合どのように機能するのか?を分析する際に、これらの約束は疑ってかかるべきです。

5Gの公共への展開スピードは、主に比較的高い初期投資が必要であるという理由もあり遅くなるでしょう。そのため、現在の4G同等レベルまでの5Gによる完全なカバレッジは視野にありますが、数年はかかるでしょう。完全なカバレッジはそれよりはるか先になります。

長い間、3Gや4Gなどの「レガシーな」モバイル通信では、基地局の総電力が消費の大部分を占めていました。シスコの年次インターネットレポート2018-2023の最新の数値ではこれらの約束は、この事をさらに強調しています。「2023年時点の5Gデバイス数および接続シェアの割合で予想される上位3ヵ国は、中国(20.7%)、日本(20.6%)、および英国( 19.5%)である。」

一部のアナリストは、5G全体のエネルギー効率の定義によっては、テクノロジー展開時に実際にはエネルギー節約は無いという可能性がある、と主張しています。

例えば、5G信号の処理に必要な計算能力は、4Gの約4倍です。同等のハードウェアでは、5Gのデータ処理コンポーネントのエネルギー消費は4倍になると想定されています。ただし、この理屈が当てはまるのは、機器の効率向上を考慮せず、現在4Gで稼働しているのと同じインフラ基盤で5Gを展開すると仮定した場合のみです。

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差し迫った従来ネットワークの飽和状態と産業・商用IoTの台頭により、モバイル事業者は5Gネットワ​​ークの重要な周波数帯域を割り与えられました。5Gの効率性は設計によるものですが、モバイル通信インフラ全体で使用されるエネルギー量はさらに増加し​​ます。これは、旧世代のネットワークが廃止されるまで続くでしょう。

これは、より広範なデジタルインフラにドミノ効果をもたらす可能性があります。5Gネットワ​​ークの成長は、エッジデータセンターの台頭や拡大に対応しているため、5Gの効率性を議論する際には、これらの施設のエネルギー使用量を含めるのが妥当と思われます。

重要リソースをネットワークエッジの近くに配置する事で、 レイテンシ (遅延)を削減できるため、5Gとエッジ施設の組み合わせは、個々のクライアント端末との対話をより効果的に提供できます。ただし、今後10年間でのデータストレージとこれらアプリケーションの需要の大幅な増加を考慮に入れると、5Gは実際には、今日よりもさらに電力を必要とするデジタルインフラ産業にしてくように見えます。

これは、あらゆる相互接続する業界間の密接なコラボレーションにより、潜在的には相殺される可能性があり、 再生可能エネルギー と適切なエネルギー貯蔵技術によってバックアップされた強力で信頼性の高いスマートグリッドを保証します。

標準を探る

通信やエネルギーエコシステムのさまざまな箇所でのコンセンサスが必要なため、標準の確立は遅れるでしょう。消費されたエネルギーのジュール(=単位)ごとに送信されるビット数は、現在、ネットワーク効率を分析するための主要な指標の1つになっています。

現在、セルサイトは約20kbit /ジュールのエネルギー効率を提供しています、そして世の中のいくつかの研究論文では、5Gがこれを2桁以上10Mbit /ジュールに引き上げる可能性があると予測しています。

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5Gを活用する新たな手法を導入したテクノロジーがすでに登場し始めているため、将来はさらにエキサイティングに思えます。

Radio Frequency Energy Harvesting(RFEH)では、電波で伝送されたエネルギーはキャプチャされ、クライアント端末または基盤となるインフラの一部で使用されます。

無線周波数信号には情報とエネルギーの両方が含まれているため、理論的にはエネルギーを収集し、その同じインプットから情報を受信することが可能です。

このシステムは SWIPT (Simultaneous Wireless Information and Power Transfer: データと電力の同時伝送) として知られています。これに必要なハードウェアはまだ開発段階であり、データ量と信号から得られるエネルギーの間にレートとエネルギーのトレードオフがあります。

そのため、SWIPTはスマートフォンをワイヤレス充電することはありませんが、クライアント端末でのデータ送信に必要な電力消費を相殺できる斬新なアプローチです。

5Gの本格展開は、モジュール化されコンテナ化された「エッジ」データセンター市場の台頭と密接に関連する可能性が高く、これは、時間にデリケートな機能をネットワークエッジに配置する事で、エネルギーとレイテンシの観点で可能な限り効率的に通信を行う必要性が生まれ、それにより推進されます。

エネルギー効率が、デジタルインフラ業界における将来のすべての開発の鍵となることは明らかです。

今後10年間で、5Gのエネルギー効率と、そしてそれが世界に与える影響を私たちは見ていくことでしょう。現在、テクノロジーはまだ未成熟であり、エネルギー消費が実際の生活にどのような影響を与えるかを知るのに十分なデータはありません。

業界内のあらゆる箇所の見識がより深まり、よりリスク回避できるようになると、5Gは、コラボレーションとスマートインフラストラクチャの構築・管理を通じて、世界への影響を最小限に抑えるためにあらゆる努力を払い、大量の新しい産業や市場とほぼ瞬時に通信する時代をもたらす事でしょう。

また、このエッジベース・テクノロジーの本格展開は、データセンターやその他インフラにも大きな変化をもたらすでしょう。

しかし、それらを実現するためには、(企業は競争を急いだりしますが)、効率を最優先させなければなりません。

Data Center Dynamics

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