新興国の気候変動適応への鍵となるグリーン産業政策
グリーン産業政策は 新興国の気候変動適応には が不可欠であると、国連貿易開発機関UNCTADが、COP26の直前に発表した報告書で述べています。
UNCTADはこれらの国々が現在および将来の気候変動の脅威に対処すると同時に、成長と雇用創出を促進することができるような変革的アプローチを求めています。
「エコ開発の罠」とは
UNCTADは多くの新興国が、経済ショックと気候ショックに対する脆弱性が互いに重なり合い、恒常的な混乱、経済の不確実性、生産性の伸び悩みなど、「エコ開発の罠」に陥っていると指摘しています。
UNCTADのレベッカ・グリンスパン事務局長は、「この報告書は気候変動の課題に適応するための十分な行動をとるためには、単に過去にさかのぼって行動するのではなく、積極的かつ戦略的なアプローチに変革する必要があることを示しています。しかし新興国政府は、将来の気候変動の脅威に立ち向かうための大規模な公共投資を動員するための十分な政策・財政上の余裕が必要であり、同時にこれらの投資が開発目標を確実に補完するものでなければなりません」と述べています。
この内容は9月に発表されたUNCTADの年次報告書「Trade and Development Report」の第2部にあたります。
適応コストの上昇
同機関によれば気候変動への適応は緩和策の「簡単な対応策」のようなものだと考えられていますが、これは新興国にとって近視眼的でありコストもかかります。気候変動によるショックで成長の見通しが損なわれ、政府は乏しい資源の再配分を余儀なくされているのが現状です。
新興国の気候変動適応コストは無策が原因で過去10年間で倍増し、気温の上昇とともにさらに上昇し、2030年には3,000億ドル、2050年には5,000億ドルに達すると言われています。
各国はデータ収集やリスク評価の技術を向上させることで、気候変動への対応力を強化するよう助言されていますが、報告書では「適応は、リスク管理というよりも、開発計画の問題」であり、国が重要な役割を果たすと主張しています。
持続可能で意味のある影響を与える
本報告書の主執筆者 UNCTADのグローバル化・開発戦略部門のディレクターであるリチャード・コズール‐ライトは、「気候変動への適応と開発は密接に関連しており、適応に取り組むための政策努力は、持続可能で意味のある影響を与えるために、この点を認識する必要がある」と付け加えました。
同氏は、そのため唯一の永続的な解決策は「構造転換のプロセスを通じて、より回復力のある経済を確立し、途上国が気候変動に敏感な少数の活動への依存度を下げること」を推奨しています。
報告書では地域の経済状況を考慮したグリーン産業政策を実施するために、開発を再構築することを提案しています。
例えば再生可能エネルギーの生産は低規模で行うことができるため、小規模な企業や農村部にビジネスチャンスをもたらします。
これにより経済生産全体の多様化、一次産品への依存度の低減、さらには課税ベースの拡大、国内での新たな開発資金の創出などが期待できます。
エコ開発の罠から逃れるためには新興国における気候変動適応策として、「デフォルトの政策枠組みとしての緊縮財政の放棄」、「再生可能エネルギーやグリーン技術への大規模な公共投資」、「小規模生産者と環境を守るグリーン農業政策の採用」などの重要な特徴を含むことが提言されています。
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