エクイニクス、シンガポールでデータセンター向け水素燃料電池の実証実験を開始

エクイニクスとシンガポール国立大学(NUS)は、データセンターの電源として、水素燃料電池を試験的に導入する計画を立てています。

両者は、水素燃料電池と、水素で稼働し必要に応じてバイオガスなど他の再生可能燃料に移行できる「フレックス燃料」なリニア発電機の比較検討を行う予定です。また、熱帯地域環境下でのデータセンター電源としての利用についても評価する予定です。

この研究は、シンガポール国立大学デザイン・エンジニアリング学部のエネルギー研究・技術センター(CERT)とエクイニクスが実施します。

エクイニクスによると、PEM燃料電池は水素エネルギーの有力候補であり、一方フレックス燃料型リニア発電機は、さまざまなクリーン燃料を簡単に切り替えられるようにするものであるとの事です。それぞれの技術は、データセンターが成長を続けながらも二酸化炭素排出量の削減に役立つ可能性があります。

今回の共同研究では、この2つの技術が現地の熱帯条件下でどのように機能するかを確認するとともに、敷地の制約、電力需要、サプライチェーン、燃料貯蔵能力、現地の規制などの特性にどのように対処できるかを検証します。

CERTは、エクイニクスとの協力により特定した技術を包括的に分析し、それらがスケールアップしたときにどのように機能するかを調査します。

その後、エクイニクスは、将来のデータセンター設計に取り入れることを視野に入れ、自社のグローバル・データセンターネットワークでコンセプトをテストする概念実証(PoC)プロジェクトを進める方向です。

このパートナーシップは、特にシンガポールにおける再生可能エネルギーの導入を加速させる事を目的としています。シンガポールでは、データセンターの用地不足、再生可能電力源がほとんどないことによる炭素集約型の電力供給など、多くの困難に直面しています。シンガポール当局は、数年間のモラトリアム(一時停止措置)を経て、現在は限られた数のプロジェクトのみ進めることを許可していますが、いくつかの条件を満たす必要があると発表しています。

シンガポールのInfocomm Media Development Authority(IMDA)とEconomic Development Board(EDB)が策定したデータセンター(DC-CFA)のガイドラインには、再生可能エネルギーの使用や、施設の二酸化炭素排出量を相殺するための「innovative energy pathways(革新的なエネルギー経路)」の計画などが要求されています。

当局は、革新的なエネルギー経路の可能性として水素に特に言及しており、シンガポールでは既にデータセンターの燃料源として水素を利用した研究がいくつか行われています。地元企業のSTTとLindeは2022年6月にマレーシアのYTLと水素の概念実証を発表し、KBRとKeppelは後者の施設での水素利用を検討中です。更にKeppelと大阪ガスは、オーストラリアの電解設備から液体水素を出荷する計画について検討を進めています。

シンガポールのポストモラトリアム試験運用では、限られた容量がハイパースケーラーではなく、エクイニクスのようなリテールプロバイダーに行くことが観察されているため、エクイニクスはこのアイデアの強化を進めているようです。Structure Researchのリサーチ部門長であるJabez Tan氏は、次のように述べています。「特に大規模なハイパースケール環境に対応する通信事業者は、接続性を重視するため、差別化を図ることが難しくなると思われる」

また、JLLのデータセンター部門責任者であるChris Street氏によれば、現時点では、シンガポールは世界の他の地域と同様、データセンターをサポートするための水素インフラを備えていないとのことです。

「それは単に現在の市場状況の事実」と、彼は今年初めにDCDに対し話していました。「とはいえ、シンガポールの水素サプライチェーンにおける位置づけを考えると、この状況に着目し、これを前進させようとしている投資家、機関、業界関係者は相当数いる」

エクイニクス側としても、彼らは長い間燃料電池に注目しており、また最近DCDに対し、米国送電網で発生しつつある不安定な状況に対処するための天然ガス燃料電池の役割について言及していました。同社は何年も前から燃料電池の試験を行っており、古くは2013年にフランクフルトでの技術試験、また2017年以降Bloom Energy社の燃料電池を12か所のデータセンターに導入しています。

この記事は海外Data Centre Dynamics発の記事をData Center Cafeが日本向けに抄訳したものです。

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