SpaceX、新たな宇宙状況把握システムを公開へー競合他社にも無料でデータを提供を目指す

限定ベータ版でデータを共有し、軌道情報のオープン化へ第一歩

衛星運用企業SpaceXは、「Stargaze」と呼ばれる新しい宇宙状況把握(SSA)システムを開発しました。このシステムは、同社の9,600基の衛星コンステレーションに搭載された30,000個のStar Tracker*を使用し、周囲を周回する物体とその速度を観測します。

*Star Trackerとは、人工衛星や宇宙探査機の姿勢(向き)を正確に知るための装置

同社は、ウェブサイトで次のように述べています。「Stargazeはあらゆる衛星運用企業にとっても安全な飛行能力を大きく向上させるものですが、各社が自社衛星の軌道情報(ephemeris)を頻繁に共有することが不可欠です。」

「特に、機動(スラスターによる軌道変更)が可能な衛星を持つオペレーターについてはなおさらです。Stargazeは、現在稼働中の他のどのシステムよりも素早く機動を検知できますが、衛星軌道の最も確実な情報源は、オペレーター自身が提供するべきです。これにより、衛星同士の衝突回避に関する調整が可能になり、回避のための機動を最小限に抑えることができます。」

Stargazeプラットフォームは無償の限定ベータ版として開始され、「12社以上の衛星運用オペレーター」にデータを提供する予定ですが、SpaceXは、現時点でその参加者を明らかにしていません。

春以降は、自社の軌道情報(ephemeris)を提出するオペレーターに対して、他の参加者から共有されるすべての情報に加え、Stargazeのライブデータを受け取れるようになります。

この膨大なデータが、その複雑さを理解できるモデルによって相互検証できるのであれば、非常に価値のある取り組みになる一方、初期はかなり混乱しそうにも思われます。

衛星や宇宙デブリが地上の大規模なセンサー群を使って、1日に複数回トラッキングされているのには理由があります。衛星は、一般的にそのような観測に適した装置を備えておらず、備えていたとしても通常は一度に一方向にしか観測できません。Star Trackerは、星の位置に基づいて衛星自身の姿勢(向き)を特定するための装置であり、近傍の小さな動体、まして光を発しないデブリを検知するために設計されてはいません。

しかし、衛星による状況認識は極めて重要な技術です。SpaceXは、30,000個のStar Tracker によって「1日あたり約3,000万件のトランジット(通過観測)」を検知できると試算しており、これを活用してStarlinkコンステレーションを通じてLEO(低軌道)をマッピングし、衝突の予測に役立てられると考えています。

SpaceXが同業他社と異なるのは、ハードウェアというより圧倒的な規模です。オペレーターがStar Tracker で同じことを試す代わりに、専用の宇宙状況把握(SSA)システムを使用する正当な理由があります。

今回の動きは、Star Link が12月末にロシアが主催した国連安全保障理事会で国際的な圧力を受けた直後に行われたものです。この理事会は「低軌道衛星の制御されない利用から生じるリスクと課題」に対処することに焦点が当てられ、中国とベネズエラの報道官がロシアの主張を支持しました。

この会合は、12月9日に発生した、Jiuquan Satellite Launch Center(酒泉衛星発射センター)から中国のKinetica1号ロケットで打ち上げられた衛星の約200メートル以内をSpaceXの衛星が通過した事件を受けて行われました。この事件は、StarlinkのStargaze発表の中で曖昧な形で言及されており、その中で中国はより多くのデータを共有すべきだと示唆しているように見えます。

軌道のオープン化の始まりか?

冷戦時代から、各国の代表者は、軌道上の物体の軌道やそこに存在するデブリの範囲を追跡するため、国家間でよりオープンなアプローチを取るべきだと主張してきました。中には、海洋利用を規定する、国際法に似た仕組みの必要性を訴える声もあります。しかし、この分野の進展は遅く、各国や企業は「自分たちが先に手の内を明かしたくない」と不満を述べ続けています。

圧倒的な規模を誇る西側最大の衛星運用企業であるSpaceXが、その方向に向けて動き出したことで、協調の精神から他社にも同様の行動を促す可能性があります。実際、小規模な中国の民間衛星企業にとっても、このプログラムに参加することで得られるメリットは大きいと思われるが、それが現実化する可能性は低いように思えます。

どのような世界であっても、Stargazeのようなオープンプラットフォームが、その本来の使命を果たそうとするのであれば、BRICS諸国との協力は不可欠です。もしそれができなければ、このシステムは既存の西側の追跡データベースと大差ないものになってしまいます。このシステムが権力ブロック間の真の橋渡し役となるよう要請するのは、国連の専権事項となるかもしれません。

この記事は海外Data Centre Dynamics発の記事をData Center Cafeが日本向けに抄訳したものです。

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