データセンター立地ランキング、米国が圧倒的~バージニア北部がトップ

モラトリアムにもかかわらず、シンガポールがCushmanリストに

不動産専門会社 Cushman & Wakefield (クッシュマン&ウェイクフィールド)が毎年発表する「世界で最も魅力的なデータセンターの立地」にバージニア北部が再び選出されました。

グローバルデータセンター市場比較レポートでは上位8都市に米国が選ばれました。このレポートは、光ファイバーの接続性、税制優遇、土地や電力の価格などの基準に従ってインターネット中心地をランク付けしています。トップ10は米国に偏っており、Cushmanは、現在の容量が1.7GWのバージニア北部が、今後2年間で2GW以上に達する可能性が高いと予測しています。

データセンターの新規プロジェクトがモラトリアム状態であった シンガポールは、5位から2位タイに上昇し、モラトリアムがようやく緩和され始めたところです。また、このリストには4社が新規参入しています。

スペース争奪戦

バージニア北部に続き、シリコンバレーとシンガポールが同率2位、アトランタとシカゴが同率4位となっています。6位から9位には香港、フェニックス、シドニー、ダラスが並び、10位はポートランドとシアトルが同点で並んでいます。

Cushmanのデータセンターアドバイザリーグループのリサーチディレクター、ケビン・インボーデンは「バージニア北部が3年連続で再び総合ランキングのトップに立ったことは驚くことではありません」と述べています。「バージニア州は世界最大のデータセンター市場であり、強力な建設パイプラインを備えています。優れた接続性、魅力的なインセンティブ、低コストの電力を提供します。空室率は非常に低く、需要は高く、事業者もテナントも同様に拡張に関心を持っています。このような状況からこの地域は今後2年間で世界初の2ギガワット市場になる可能性が高くなります」。

バージニア北部、シリコンバレー、シンガポールは、土地と電力の不足がよく知られており、シンガポールの場合は実際に政府がデータセンター建設の認可にブレーキをかけたにもかかわらず高いランキングに入っています。しかし土地と電力は、Cushmanがランキングで考慮した13の要因の中で最も優先順位の低い3つの項目です。これは建設業者は常に、ハブの既存の容量に近いという最優先事項の点数が高い場所で、キャパシティを絞り込む方法を見つけることが期待されていることを示しています。

Cushmanの上位3要素は、ファイバー接続、市場規模、クラウドの利用可能性です。

その次に位置する要素は、基本的にオプションとして提供されるもので、持続可能性、政治的持続可能性、税金、インセンティブなどが含まれます。自然災害による環境リスクは、最もウエイトの低い要素です。

香港は再生可能エネルギーの利用率が非常に低く、データセンター事業者は温室効果ガスを大量に排出していることになりますが、この要素ではトップ10圏外から6位にランクインしています。

一方シアトルと新規参入のポートランドが同率10位に入ったことについて、 インボーデン 氏は「どちらも米国太平洋岸北西部にある持続可能性に重点を置いた都市」と環境問題への配慮を評価しています。

米国の優位性

米国優位の背景には米国のソーシャルメディアやクラウドのハイパースケーラがインターネットを支配しているという認識が継続されていることがあると思われます。しかし、これは中国が他の国々と同じように国際的な不動産市場に参加していないという事実を反映しているのかもしれません。北京と上海はこのリストに含まれていますが、上海は600MWで世界第4位のデータセンター・ハブであるにもかかわらず、上位をにぎわしていません。

トップ10には米国のハブが8つ含まれており、アトランタ、ポートランド、フェニックスが新たにランクインし、ニューヨーク(昨年の第9位)の陥落を補っています。ロンドン(前回7位)とアムステルダム(昨年10位)は、それぞれ800MWと400MWの規模であるにもかかわらず、トップ10から外れました。

米国以外では、シンガポール、香港、シドニーの3都市がランクインしています。なお、10位が同点であったためトップ10には11の都市が含まれています。

上位ランキング以外ではCushmanは包括的なリストを発表していませんが、インボーデン氏によれば「自然災害に関してリスクの低い場所」であり、「すべての主要なクラウドサービスが存在する」ことを理由に、34位から19位に急上昇したマドリードを特筆すべきとしています。

注目すべきは2019年に「注目すべき市場」とされた10カ所のうち、トップ10を突破した都市がなかったことです。リストには、ストックホルム、チェンナイ、ナイロビ、ケープタウン、モスクワ、アテネ、アブドダビ、サンティアゴ、クラルンプール、ウィーンが含まれていました。

一方で今年新たに加わった市場の中では、ストックホルムとサンチアゴが好調で、サンチアゴは南米広域へのハブとして高く評価されました。

Cushmanは昨年の42都市から今年は56都市を選定しました。2022年版のレポートによると、注目すべき市場は2021年版と同様ケープタウン、モスクワ、アテネ、アブダビ、ウィーン。イスタンブール、ハイデラバード、バンコク、オークランド、モンバサになります。



この記事は海外Data Centre Dynamics発の記事をData Center Cafeが日本向けに抄訳したものです。



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