日本に続々と進出する外資系ハイパースケールデータセンター【まとめ記事/特集】

当メディアでもしばしば取り上げていますが、ここ最近日本国内市場への外資系ハイパースケールデータセンターの進出が相次いでいます。

昨日もシンガポールのデータセンター企業であるプリンストン・デジタル・グループ(PDG)が、総投資額10億米ドルを投じ、東京で最大級のハイパースケール施設を建設する計画を発表したばかりです。

いろいろと数が増えてきて整理が大変になってきたこともあり、ここで一旦、最近の同様の動きを当記事でまとめてみました。

MCデジタル・リアルティ

まず、昨年から活発化してきた動きに先行した動きとして、Digital Realtyと三菱商事との合弁会社であるMCデジタル・リアルティを忘れてはいけません。

遡ること2017年10月に、Digital Realtyと三菱商事の両社は合弁会社の設立を発表し、既に印西(東京地域)や彩都(大阪地域)を中心に複数のデータセンターを展開しています。

Colt DCS

一方でColt Data Centre Services(コルトDCS)も、昨年11月に日本最大の施設となる印西3データセンターを開設しています。

27MW規模の印西3は、既存の印西キャンパス2施設の隣に設置され、発表時点で既にその約90%はリース契約済みであったようです。 印西3センターは、それぞれ1,000平方メートル(10,700平方フィート)のデータホールを誇り、1平方メートルあたり平均約3.375kWです。

エクイニクス+GIC

昨年2020年4月にエクイニクスとシンガポールの投資企業 であるGICが合弁会社を設立し、日本でのハイパースケール3施設(xScale)に対し10億ドルを投資するという発表が日本国内の ハイパースケールデータセンター の一つの皮切りの動きとしてありました。

そして 今年の3月1日に、アジア初のハイパースケーラー向けデータセンター(xScaleデータセンター)となるTY12xを開設しました。 TY12xは最終フェーズ完成時には約17,300平方メートル (186,140平方フィート)以上のコロケーションスペースを提供し、 54MWのIT電力を供給するとされています。 市場の旺盛なハイパースケーラーサービス需要を反映し、 第1フェーズの全キャパシティおよび第2フェーズの大部分のキャパシティは、 既にアンカーテナントが付いていたようです。

AirTrunk

オーストラリアのデータセンター企業AirTrunkは、千葉の印西に60MW規模のハイパースケールキャンパス(TOK1)の計画を昨年9月に発表し、2021年後半に竣工を目指し現在建設が進められています。

TOK1キャンパスは、56,000平方メートル(600,000平方フィート)のテクニカル・データホールスペース、9,600平方メートル(103,000平方フィート)のオフィスおよび倉庫スペース、42のデータホールを備える規模となるようです。そして最終的には300MW超への拡張も可能とされています。

尚、キャンパスの建設については新たにデータセンター業界へ参入してきた大和ハウス工業が担当しています。

デジタルエッジ

一方で、2020年8月、ニューヨークを拠点とするプライベートエクイティ企業であるStonepeak Infrastructure Partnersが、APAC市場における新興データセンタービルダーとして「Digital Edge(デジタルエッジ)」を設立しました。これには、エクイニクス、Facebook、Tata、Macquarieなどのデータセンター系企業出身の名だたるメンバーが経営陣として参加しています。

本社をシンガポールに構えるDigital Edge (Singapore) Holdings Pte. Ltd.の日本法人であるデジタルエッジ・ジャパン合同会社は2020年5月11日に、新たに東京都内で2拠点のデータセンターを取得することを発表しました

2020年の設立以来、日本で3件目となる今回のプロジェクトによって、デジタルエッジのデータセンターポートフォリオは6拠点に拡大しました。東京の3拠点、ソウルおよびプサンの各1拠点に加え、大阪では現在2022年第一四半期に開業予定の12MW規模の施設の開発が進められています。

ESR Cayman

今年2021年4月、香港の物流・不動産会社であるESR Cayman(ESRケイマン)は、大阪にあるデータセンターを購入し、それを3棟の施設からなるキャンパスへと拡張していくと発表しました

この敷地には現在、テナントが入居しているデータセンターがあり、土地も余っています。ESRは、この土地に新たに合計39MWの容量となるデータセンター2棟の建設を計画しており、同社は2021年後半に建設が開始される最初のデータセンターは2023年に開設予定とされています。また、既存のデータセンターは、テナントの契約期間が終了した後、39MWの施設へと再開発が行われ、最終的にはキャンパス全体で78MWの容量となる計画です。

同社も急速に成長する日本のデータセンター市場において、キャパシティを要求するハイパースケーラーやコロケーション事業者を狙っていくとしています。

その他の動き、Edge Centres、Amazon、AXA IM

少し異なる動きとして、オーストラリアのデータセンター企業Edge Centres(エッジセンターズ)が、今年の5月に日本国内2か所のオフグリッドデータセンター施設の建設計画を発表しました。

同社は、IT戦略企業のAlan Kei Associatesと提携し、年内に最初の施設(ECJ1)を関東地方の南東部に導入する予定としています。最初の施設は、政府機関や企業顧客向けのショーケースとして使用され、2番目の施設(ECJ2)は日本の最南端に位置する九州に計画されています。

こちらはハイパースケール施設ではありませんが、風力発電や太陽光発電などの電力を利用した「オフグリッド」データセンターとして、今後のカーボンニュートラルな未来へ向けてのひとつのチャレンジとして非常に興味深いです。

ちなみに、Amazon(AWS)も国内でのデータセンター拡張を加速していますが、その中で、同じく今年の5月に、秋田県近郊に日本国内初の 洋上風力発電所の建設に向けて、日本の電力会社や商社との交渉を進めているとの報道がありました。

AWSは現在、東京と大阪の2つのクラウド・ 東京都江東区にある220億円(2億1,100万ドル)規模のデータセンターの買収を完了したとの報道もありました。

プリンストン・デジタル・グループ(PDG)

そして最後に プリンストン・デジタル・グループ(PDG) です。昨日 2021年06月29日 にプリンストン・デジタル・グループ(PDG)は、総投資額10億米ドルを投じ、東京で最大級のハイパースケール施設をさいたま市に建設する計画を発表しました。同社の設立はわずか4年前ですが、急速な勢いで成長している新興ハイパースケールデータセンター事業者です。

同社のプレスリリースの中にもありましたが、 Structure Researchのリサーチ責任者を務めるジャベス・タン氏によると「首都圏では、 ハイパースケールデータセンター の導入需要が加速すると予測されている。これは、GDPで世界第3位の大国である日本の市場規模が大きいこと、国内にハイパースケールクラウドのプラットフォームがなく、米国や中国のハイパースケールクラウドプロバイダーとの間で理想的な競争環境を提供していること、米国西海岸からアジア太平洋地域に向けて敷設されている海底ケーブルの主要な接続拠点であることなど、いくつかの重要な要因が集約されていることによるものと考えられる」 とのことであります。

現在の状況はまだまだ序盤戦であり、今後もGAFAMの日本市場への侵食が進むのと同様、国内での更なるハイパースケールデータセンターの建設ラッシュが続くものと思われます。

圧倒的な資金力とスピード感で続々と国内データセンター市場に進出する外資系企業、これに国内系データセンター事業者はどのように立ち向かえば良いのでしょうか?今後の動向が注目されます。

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