マイクロソフト、Nuanceを197億ドルで買収へ

クラウド型ヘルスケアサービスの拡大に貢献

マイクロソフトは、37億ドルの負債引き受けを含め、197億ドルの現金取引でNuance(ニュアンス)を買収すると発表しました。

音声認識企業であるNuanceは、医師の診察時の音声を書き起こすサービスなど医療分野で特に成功を収めており、そして民間の医療機関との契約を結んでいます。また、カスタマーサービスやボイスメールの書き起こしにも注力しています。注目すべきは、NuanceはAppleのSiriの音声認識技術の一部も提供しているという点です。

マイクロソフトは声明の中で、今回の買収がMicrosoft Cloud for Healthcare事業の強化につながることを期待していると述べています。尚、Nuanceは既にMicrosoft Azure上でサービスを提供しています。

マイクロソフトが次に買うのは誰?

マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ氏は、次のように述べています。「Nuanceは、ヘルスケアのポイント・オブ・デリバリー(POD)でAIレイヤーを提供しており、エンタープライズAIを実際に適用した先駆者である」

「AIはテクノロジーにおける最も重要な優先事項であり、ヘルスケアはその最も緊急性の高いアプリケーションである。我々のパートナーエコシステムとともに、Microsoft Cloud for HealthcareとNuanceの成長を加速させることで、高度なAIソリューションを世界中のプロフェッショナルに手渡し、より良い意思決定を促し、そしてより意味のあるつながりを生み出すことができるようになるだろう」

今年後半に完了が予定されているこの買収は、マイクロソフトにとって、262億ドルでのLinkedIn買収に次ぐ規模となります。マイクロソフトは最近、ゲームパブリッシャーのZeniMaxを75億ドルで買収し、自動運転を手掛けるCruiseに20億ドルを投じ、メッセージングプラットフォームのDiscordと100億ドル規模の買収について協議していると見られているなど、買収案件が相次いでいます。また、昨年はTikTokを約300億ドルで買収しようとして失敗しています。

Nuanceの財務情報は、MicrosoftのIntelligent Cloud部門の一部として報告されます。マイクロソフトは、今回の買収により、ヘルスケアプロバイダー分野における同社の獲得可能な最大市場規模(Total Addressable Market:TAM)は約5,000億ドルに倍増すると主張しています。Nuanceは現在、米国の病院の77%と提携しています。

Nuanceのマーク・ベンジャミンCEOは、次のように述べています。「過去3年間、Nuanceは、高度な会話型AIやアンビエント・ソリューションへの需要が加速しつつあるヘルスケア分野と企業向けAI分野に注力するためにポートフォリオを整理してきた」

「このチャンスをつかむためには、フォーカスとグローバルスケールをお客様やパートナーにもたらし、 より個人的に、手頃な価格で、効果的に人やケアとのつながりを実現できる適切なプラットフォームを必要とする。マイクロソフトと進むべき道ははっきりしている。彼らは、インテリジェントなクラウドベースのサービスを大規模に展開し、テクノロジーで変化をもたらす方法に対する私たちの情熱を共有している。同時に、この統合は、私たちを後押しし、支えてくれた株主の皆様に、意味のある確かな価値をお届けする重要な機会でもある」


Nuanceは、2005年に競合であったScanSoftと合併し、純粋なAI音声認識企業としては最大手となりました。

ScanSoftはゼロックスのスピンオフ企業で、1999年にVisioneerに買収され、その子会社の名前を引き継ぎました。2001年、ScanSoftはベルギーの音声認識技術会社Lernout & Hauspieの資産を買収しましたが、経営陣の不正により倒産しました。倒産直前には、当時業界トップであったDragon Systemsを全株式で買収しました。

Dragonの創業者らは、ゴールドマン・サックスが買収前にLernout & Hauspieのデューデリジェンスを怠ったとして、彼らの財務アドバイザーであったゴールドマン・サックスを提訴しました。ただこの訴訟は失敗に終わり、裁判官は「ゴールドマンの行為は、たとえずさんで不親切であったとしても、不公正または欺瞞的なものではない」と判決を下しました。

今回の買収では、ゴールドマン・サックスはマイクロソフトの専属財務アドバイザーを務め、一方EvercoreがNuanceの専属財務アドバイザーを務めています。

Data Center Dynamics

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