通信事業者によるデータセンター事業の売却【特集】

通信事業者は、コロケーションデータセンターサービスが得意だと考えられていたが、現在その多くは市場から撤退している

Telecom Italiaが23施設のデータセンターを分離し株式上場させようとしているというニュースは、通信事業者(※英語ではTelco=電話会社の意)がデータセンターのコロケーション事業から撤退している一連の動きの中の最新の事例にしか過ぎません。

過去10年の初期の段階はとても簡単な話に見えました。データセンター市場は急成長しており、それはインフラ設備やハードウェアをベースとしたサービス産業であったからです。通信事業者の多くは、拡張は必然であると考え、市場へと参入しました。しかし10年経った今、その多くは市場から撤退しています。

「多くの通信会社がデータセンター、クラウドインフラ市場に参入しているが、彼らは徐々に自身のコアビジネスに専念する方が良い事に気付き始め、他の誰かにデータセンターの運営を任せようとしている。」とTelecom Italiaの同胞であるArubaのマーケティングマネージャーMassimo Bandinelli氏は言います。

当時多くの通信事業者は、既存のデータセンター事業者を高額な費用を投じて買収していました。例えば、Verizonは2011年にTerremarkを14億ドルで買収しました。しかしその8年後、コロケーションサービスは同社のビジネスモデルに適合しないと判断し、データセンターをEquinixに35億ドルで売却しました。

また米国では、AT&Tがデータセンターのネットワークを入念に構築してきましたが、2017年に11億ドルでBrookfield Infrastructureとその他の機関投資パートナーに売却しました。Brookfieldは、それを新たにデータセンター事業者Evoqueとして立ち上げました。

また2017年、CenturyLinkは57のデータセンターを23億ドルでコンソーシアムに売却し、これも別のデータセンター事業者Cyxteraに変わっています。

それは突然の変化ではありませんでした。DCDは2015年時点でこの最初の動きに気づきました。2015年に一部の小規模な通信会社がデータセンター事業から撤退しました。例えば、米アーカンソー州の電話会社Windstreamが、保有していた14のデータセンター( 合計17,000㎡ )を5億7,500万ドルでTierPointに売却したのです。

2015年は、大手通信会社のAT&T、Verizon、CenturyLinkによる売却が間近に迫っていると噂されていましたが、それが実現するまでに数年かかりました。

この動きは、データセンターを構築した通信事業者を更に買収した通信事業者も出てきました。たとえば、Telecom Italiaは、通信業界のパートナーであるエリクソンが構築した施設の少なくとも一部を保有しています。

また、ヨーロッパでは、Telefónica SAは11棟のコロケーションデータセンターを売却しました。同社は5億5,000万ユーロ(6億ドル)で施設をAsterion Industrial Partnersに売却しています。英国では、BTが2015年にガトウィック近郊の Tier III施設を事業者の4D社に売却した取引のように、データセンターを徐々に売却しているような動きがあります。

この傾向は、通信事業者によるデータセンター市場への投資が新しい新興市場にも拡大しています。中南米では、メキシコの電話会社Axtelが約1億7,500万ドルで3箇所のデータセンターをEquinixに売却しました。

インドの電話会社であったTataは劇的な事業転換を図りました。2013年と2014年は、データセンター市場が急速に拡大し、インドおよびその他のアジア地域で44のデータセンターを構築あるいは買収しました。その後、独立子会社のTata Communications Data Centers(TCDC)を立ち上げました。しかし2016年に、Tataは資産よりも負債であると判断し、TCDCをシンガポールのST Telemediaに約6億5,000万ドルで売却しました。

このように通信事業者が誤ってデータセンター市場に偶然出会い、完全に理解できていない領域に踏み込み、結果的に彼らが競争に直面することになったと考えるのは簡単です。

この分析は概ね真実です。過去10年間の後半段階で、通信事業者はかなりの財政的なプレッシャーに直面したとアナリストは指摘しています、

2015年に、The Motley FoolのAdam Levy氏は、米国の電話会社が周波数割当 に多額の費用を投じていたものの、モバイル事業から大きな収益を得られていないため、資金が必要であったと指摘しています。「AT&TとVerizonの両社は、FCCのAWS-3スペクトルオークションに多額の費用をかけ、ワイヤレスビジネスを展開する上での貴重な電波ライセンスを取得した。」とLevy氏は記しています。

多くの電話会社は、負債を重く抱えており、近年では資金の調達方法を探している状況です。また、データセンターの分野は、急速な成長の段階で施設は非常に高く評価されており、潜在的に優れた資金源となっています。

CenturyLinkがデータセンターを売却段階に、同社の最高経営責任者Glenn Post氏はバークレイズキャピタルのAmir Rozwadowski氏に、動機の多くは単に買い手がデータセンター資産に対し多額な金銭を支払う用意ができている事だ、と語っていました。

そして、過去に市場の暴落を経験した通信事業者は、当然のことながら潜在的な将来の暴落に先立ち、その現金を手に入れることに熱心でした。

「まず第一に、なぜ今が好機なのかについて…評価は今のところ明らかに良い。状況は常に変化する可能性があるが、市場が現在良い状態である事を知っている。」とPost氏は2015年に語っていました。「キャッシュフローは、より高い収益や株主価値の向上をもたらす投資に活用できると考えている。それが、データセンター資産の売却を検討している理由だ。」

しかし、データセンターはかつてのように電話会社には適さなくなったという別の理由があります。過去数年にわたってデータセンター業界にも変化があり、データセンターは通信事業者にとって快適な領域からさらに遠ざかりました。

「必要とされる労働力は、通信事業者として必要とする労働力とは大きく異なる。」とBandinelli氏は警告し、データセンターはその進化と汎用化に伴い、従来よりも専門性がより高まっていると付け加えました。

また、最新の状態を維持し、業界全体の規制に適応し、基準を採用し、認証を取得し、 再生可能エネルギー に移行したりするためには、大規模な投資が必要とされます。

これに加えて、エッジのような新しいビジネスモデルが出現する一方で、ハイパースケールプロバイダーは、サービス企業にとっては費用対効果の低い巨大施設の市場を構築しつつあります。

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この一連の売却の動きが始まったとき、現在ではCBREの子会社となったデータセンター分析会社 RomonetのZahl Limbuwala氏は、通信事業者は投資要件の変化が彼らの保有するデータセンターの価値を下落させる可能性を見ていたかもしれない、と感じていました。「もしデータセンターが築10年に近づいても大きな再設備投資をしていない場合、厄介な問題に直面するだろう。」と彼は2015年時点でDCDに語っていました。

一部の企業は、非常に大きな収益をもたらす商業不動産の一種としてデータセンターへの投資を行なっています。Limbuwala氏は、新たな投資が必要になる前の10年の「再投資時間」は主要な商業不動産の約半分であり、高コストであるとも指摘しています。

このような悲観的な状況ではあるが、明らかにこの傾向の例外をいく通信事業者は存在します。例えばNTTはデータセンター子会社を複数保有しています。米国ではRagingWire、アジア地域ではNetMagic、ヨーロッパではe-shelter、Gyronを買収し、それらを現在一つのユニットに統合しようとしています。

しかし、NTTは一つの例外であり、同社の手が届く範囲でデータセンターを運用しています。RagingWire CEOのDoug Adams氏は、そのアプローチに関してVerizonやAT&Tなどの米国の電話会社のアプローチと比較しています。「米国の電話会社は非常に近視眼的で、四半期毎の収益にフォーカスしていた。」

「彼らは世界のEquinix、Digital Realty、RagingWireと戦い、そして手を引いた。NTTは、このビジネスを2倍にしたという点で非常に賢明であったと思う。」

独立のデータセンター企業であろうと、NTTデータセンターのように独立運営されている子会社であろうと、世界は市場の要件を満たし、そして有能な技術者を低コストで提供できる純粋なデータセンター事業者への方向に移行しつつあるとBandinelli氏は考えています。

Data Center Dynamics

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