月面インターネットの構築【特集】
通信障害を前提としたインターネット
衛星は、システムに接続可能な視界に入っても、数分で視界から消えたりするため、接続の確立と解除を迅速に行う必要があります。また、無線信号の干渉やその他の問題により、データ損失が発生する可能性もあります。
そこでLunaNetでは、DTN(Disruption Tolerant Networking)というバンドルプロトコルを採用しています。これは、データを確実に目的地まで届けるために、保存と転送、および自動再送を行う仕組みです。
DTNは、1998年にNASAが開始した「惑星間インターネット」の構想から生まれたもので、その後、何度も失敗したり、優先順位が変えられたりしながらも、DTNを核とした太陽系インターネットワーク(SSI)を構築する計画として再構築されました。
これこそが、LunaNetの真価が発揮される場面です。月面での活動には大きな科学的メリットがあります。最近、大量の水が発見されましたが、これは私たちの知識がいかに少ないかを示すものです。しかし、それだけではなく、LunaNetは他の場所で活動する中での重要な中継地点にもなります。
「月での作業は難しいが、火星に行くよりはアクセスしやすい」とイスラエル氏は言います。2030年代に人類が火星に到達するという目標を達成するためには、このような問題点を解決することが重要です。
「しかし、もし火星に到着した場合、ネットワーク接続はさらに興味深いものになるだろう」2億3000万kmの距離になると、光速の遅延が顕著に現れてきます。
「20年後、あるいは今から数年後に休暇で月に行ったとしても、電子メールのやり取りやウェブへの投稿については問題ないだろう」とイスラエル氏は言います。「電話をかけることも可能だが、数秒の遅延があるため、難しくイライラするものになるだろう」
しかし、火星では「分単位での計測」となり、「データのインターリーブ(データのバッファを蓄積し、予測可能な方法でデータをシャッフルすること)」によってさらに遅延が発生します。これは、システム内のある種のエラーに対処するための強力な方法ですが、バッファリング時間の犠牲を伴います。
イーロン・マスク氏が主張するように、人類が火星に文明を構築した場合、地球との接続は本質的に遅くなります。そうなると、よりローカルなストレージや通信が必要になります。そうです、火星にデータセンターが必要になるのです。
もちろん、そのような考えはずっと先の話です。火星や金星、さらには小惑星への接続を実現する前に、まずは最も身近な月に注力しなければなりません。これは並大抵のことではなく、それ自体が重要な科学的進歩をもたらす可能性があるのです。
月の裏側を繋げば、宇宙からの鮮明な信号を天文学者に届けることができ、太陽系を超えた宇宙開発に役立つようになるだろうとイスラエル氏は言います。「月の裏側にはまだ何もないが、月の裏側は最も静かな場所であり、電波天文学者にとっての夢だった。地球からの騒音はすべて月で遮られてしまうのだから」
LunaNetは、NASAのような機関の視野を広げることにもなるとイスラエル氏は期待しています。1990年代までは、ソフトウェアの開発者は、プロジェクトのためにコンピュータ間でデータを交換する方法を個別に考えなければならなかった、とイスラエル氏は指摘します。「インターネットが普及すると、賢い人たちは、データをどうやってここからあそこに運ぶかといったことに頭や時間を使う必要がなくなり、自分たちのアプリケーションを考えることにすべてを費やすことができるようになった」
「私がLunaNetで目指しているのは、地球のインターネットのようにLunaNetを実現すること。このネットワークベースの考え方がユーザー側、つまりミッションを計画している人たちに浸透すれば、そこから様々な新しいタイプのミッションやアプリケーションが生まれてくるだろう」
Data Center Dynamics
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